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34 煮込みハンバーグ
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社員旅行後の仕事は、六日間じっくり観察していたけれどいつもと全く変わらない。
ライナスとセレスティアさんは仕事中は今まで通りだけれど、仕事が終われば旅行の時のように二人だけの優しい空気を纏っていた。
ギルドの仕事に私とライナスが向かい、二人だけになったタイミングで聞いてみる。
「ねえ、ライナスはセレスティアさんとチューした?」
ライナスは盛大に咽せた。
「なんでステラにそんなことを言わなきゃいけないんだ」
顔を赤く染めて早口に捲し立てられる。
……したんだ。
ライナスはわかりやすすぎる。
片方の口角を上げてニヤリと笑うと、ライナスに低い声で釘を刺された。
「セレスティアさんには、さっきみたいな配慮にかけたことを聞くなよ」
「じゃあライナスのどこが好き? って聞く」
「……それ、後で僕に教えてくれるか?」
真剣な表情で聞かれて、吹き出してしまった。
「そんなの自分で聞けばいいじゃん」
「僕のどこが好きですか、って? 聞けるわけないだろう」
ギルド本部に着いて話は中断した。
転移魔法でギルド員を目的地まで連れて行く。
終わると店に戻りながら、ラブラブっぷりをライナスに聞いたけれど答えてくれなかった。
仕事が終わって、フィンの家に入る。
「今から作りますので、ちょっと待っていてください」
フィンは緊張した面持ちで、テーブルに水を置いた。
私はイスに座って、水を少し含む。
フィンの緊張が移ったのか、心音が速くなって手のひらに汗が滲む。
フィンの包丁さばきは遅いけれど、一ヶ月前に教えた通りの手つきだった。
「怪我は減った?」
「はい。ステラさんに教わってから、あまり切らなくなりました」
「毎日料理の練習してるんだね。上手くなってる」
「ありがとうございます。ステラさんに早く美味しい料理を食べていただきたかったので、毎日作っていました」
フィンは照れくさそうにはにかんで、ゆっくりと玉ねぎを刻んだ。
ハンバーグのタネをこね、食べやすい大きさに分けていく。パンパンと音を響かせながら、手でキャッチボールをして空気を抜いた。
私は必死に料理をするフィンを、頬杖をつきながら眺めた。
待っているとデミグラスソースの芳醇な香りが充満して、思いっきり吸い込む。香りがすごく良くて、美味しい料理を期待してお腹が鳴った。
「できました」
フィンの作った煮込みハンバーグは形は歪で真ん中が割れていた。凹ませるのを忘れたのだろう。
フィンが正面に座って、強張った顔で私が食べるのを待っている。張り詰めた空気を纏っていて、私まで緊張して、ゴクリと音を鳴らして乾いた喉を唾液で潤す。
「いただきます」
一口サイズに切って食べた。
デミグラスソースは野菜の甘味とトマトの酸味がマッチしており、ブドウ酒の香りが重なって溶け合っている。
ハンバーグを噛むと、ソースが肉の旨みに深みを与えてくれていた。
もう一口食べる。止まらなくてもう一口。
「あ、あの……どうですか?」
フィンが不安気に聞く。
食べるのに夢中で、感想を言うのを忘れていた。
「美味しいよ。びっくりした」
またすぐにハンバーグを食べる。
「よかったです。おかわりもありますよ」
「食べる!」
お皿を差し出すと、もう一つ追加された。
フィンも安心したからか、食べ始めた。
「今までで、一番美味しくできました。もしかしたらステラさんと一緒に食べるから、そう感じるのかもしれません」
甘ったるい表情とストレートすぎる言葉に、私の方が恥ずかしくなってしまう。
「……美味しいよ」
そう呟き、大きく切ったハンバーグを口いっぱいに頬張った。
私の声が届いたようで、フィンはいっそう笑みを深める。
「お母さんの料理に似ていますか?」
「ううん、全く別」
ママの煮込みハンバーグは甘味が強くて子供向け。
フィンのは苦味も感じられて、大人が好む煮込みハンバーグだ。
「なにか変わったものを入れているの? 香りがすごくいいから」
「グタンのブドウ酒ですね。姉に送ってもらいました」
「あー、ハンスさんの作ったブドウ酒はすごく美味しかったから納得」
「飲みますか?」
ブドウ酒と煮込みハンバーグは、相性バッチリだろうから飲みたい。
でも少し迷って断った。
この後はフィンが真剣に思いを伝えてくれるだろうから、酔って返事をするのは失礼だろう。
話しながら食べ、お腹いっぱい。
「ごちそうさま」
「また作るので食べてください」
「ありがとう」
食器を片付けると、フィンがコーヒーを淹れてくれた。
今から告白されるのか。
少し緊張しながら身構えていると、フィンがコーヒーを含む。
「ステラさんは他に食べたいものはありますか?」
「クロワッサン」
「……パンって家で作れるんですか?」
フィンは驚きに目を見張っている。
「パンはパン屋さんで買うからいい。好き嫌いはないから、次はフィンの好きな料理を作ってよ」
「俺はカルボナーラが好きです。練習します」
会話が途切れ、コーヒーを飲む。
静かすぎて飲み込むゴクリという音がやけに大きく聞こえた。
「明日はグタンですね。よろしくお願いします」
「あっ、うん。お土産で遊んでくれるといいね」
赤ちゃんでも好みはあるし、フィンがリリアちゃんのために選んだぬいぐるみを気に入ってくれるといいな。
その後も仕事や美味しいお店の話しばかり。
二人ともコーヒーを飲み終えると、フィンが立ち上がった。
今言われるの? 世間話ばかりで油断していた。
「もういい時間ですね。送ります」
「あ、そう……」
隣の部屋だから、送るといっても外に出るだけ。
「ステラさん、おやすみなさい」
「おやすみ」
フィンが小さく会釈をする。私は家に入ると、ベッドにダイブした。
美味しい料理ができたら告白をされて返事をするって約束じゃなかったっけ?
なにも言われず帰ってきた。
ちょっとドキドキソワソワして、私が期待しているみたいじゃん。
「なんかムカつく」
なにも言われないってことは、今まで通りでいいってことでしょ?
「今のままが一番楽でいいじゃん」
自分に言い聞かせているみたいで、大きく息を吐いた。
フィンに気持ちが傾いているのを自覚する。
美味しいものを食べるのはハッピーなだけだけど、恋愛って楽しいだけじゃなくて悩んだりして大変。
熱いシャワーを浴びて、ベッドで横になる。
緊張したり頭を悩ませたりと、今日は疲れた。
瞼が自然と下りる。スッと眠りについた。
ライナスとセレスティアさんは仕事中は今まで通りだけれど、仕事が終われば旅行の時のように二人だけの優しい空気を纏っていた。
ギルドの仕事に私とライナスが向かい、二人だけになったタイミングで聞いてみる。
「ねえ、ライナスはセレスティアさんとチューした?」
ライナスは盛大に咽せた。
「なんでステラにそんなことを言わなきゃいけないんだ」
顔を赤く染めて早口に捲し立てられる。
……したんだ。
ライナスはわかりやすすぎる。
片方の口角を上げてニヤリと笑うと、ライナスに低い声で釘を刺された。
「セレスティアさんには、さっきみたいな配慮にかけたことを聞くなよ」
「じゃあライナスのどこが好き? って聞く」
「……それ、後で僕に教えてくれるか?」
真剣な表情で聞かれて、吹き出してしまった。
「そんなの自分で聞けばいいじゃん」
「僕のどこが好きですか、って? 聞けるわけないだろう」
ギルド本部に着いて話は中断した。
転移魔法でギルド員を目的地まで連れて行く。
終わると店に戻りながら、ラブラブっぷりをライナスに聞いたけれど答えてくれなかった。
仕事が終わって、フィンの家に入る。
「今から作りますので、ちょっと待っていてください」
フィンは緊張した面持ちで、テーブルに水を置いた。
私はイスに座って、水を少し含む。
フィンの緊張が移ったのか、心音が速くなって手のひらに汗が滲む。
フィンの包丁さばきは遅いけれど、一ヶ月前に教えた通りの手つきだった。
「怪我は減った?」
「はい。ステラさんに教わってから、あまり切らなくなりました」
「毎日料理の練習してるんだね。上手くなってる」
「ありがとうございます。ステラさんに早く美味しい料理を食べていただきたかったので、毎日作っていました」
フィンは照れくさそうにはにかんで、ゆっくりと玉ねぎを刻んだ。
ハンバーグのタネをこね、食べやすい大きさに分けていく。パンパンと音を響かせながら、手でキャッチボールをして空気を抜いた。
私は必死に料理をするフィンを、頬杖をつきながら眺めた。
待っているとデミグラスソースの芳醇な香りが充満して、思いっきり吸い込む。香りがすごく良くて、美味しい料理を期待してお腹が鳴った。
「できました」
フィンの作った煮込みハンバーグは形は歪で真ん中が割れていた。凹ませるのを忘れたのだろう。
フィンが正面に座って、強張った顔で私が食べるのを待っている。張り詰めた空気を纏っていて、私まで緊張して、ゴクリと音を鳴らして乾いた喉を唾液で潤す。
「いただきます」
一口サイズに切って食べた。
デミグラスソースは野菜の甘味とトマトの酸味がマッチしており、ブドウ酒の香りが重なって溶け合っている。
ハンバーグを噛むと、ソースが肉の旨みに深みを与えてくれていた。
もう一口食べる。止まらなくてもう一口。
「あ、あの……どうですか?」
フィンが不安気に聞く。
食べるのに夢中で、感想を言うのを忘れていた。
「美味しいよ。びっくりした」
またすぐにハンバーグを食べる。
「よかったです。おかわりもありますよ」
「食べる!」
お皿を差し出すと、もう一つ追加された。
フィンも安心したからか、食べ始めた。
「今までで、一番美味しくできました。もしかしたらステラさんと一緒に食べるから、そう感じるのかもしれません」
甘ったるい表情とストレートすぎる言葉に、私の方が恥ずかしくなってしまう。
「……美味しいよ」
そう呟き、大きく切ったハンバーグを口いっぱいに頬張った。
私の声が届いたようで、フィンはいっそう笑みを深める。
「お母さんの料理に似ていますか?」
「ううん、全く別」
ママの煮込みハンバーグは甘味が強くて子供向け。
フィンのは苦味も感じられて、大人が好む煮込みハンバーグだ。
「なにか変わったものを入れているの? 香りがすごくいいから」
「グタンのブドウ酒ですね。姉に送ってもらいました」
「あー、ハンスさんの作ったブドウ酒はすごく美味しかったから納得」
「飲みますか?」
ブドウ酒と煮込みハンバーグは、相性バッチリだろうから飲みたい。
でも少し迷って断った。
この後はフィンが真剣に思いを伝えてくれるだろうから、酔って返事をするのは失礼だろう。
話しながら食べ、お腹いっぱい。
「ごちそうさま」
「また作るので食べてください」
「ありがとう」
食器を片付けると、フィンがコーヒーを淹れてくれた。
今から告白されるのか。
少し緊張しながら身構えていると、フィンがコーヒーを含む。
「ステラさんは他に食べたいものはありますか?」
「クロワッサン」
「……パンって家で作れるんですか?」
フィンは驚きに目を見張っている。
「パンはパン屋さんで買うからいい。好き嫌いはないから、次はフィンの好きな料理を作ってよ」
「俺はカルボナーラが好きです。練習します」
会話が途切れ、コーヒーを飲む。
静かすぎて飲み込むゴクリという音がやけに大きく聞こえた。
「明日はグタンですね。よろしくお願いします」
「あっ、うん。お土産で遊んでくれるといいね」
赤ちゃんでも好みはあるし、フィンがリリアちゃんのために選んだぬいぐるみを気に入ってくれるといいな。
その後も仕事や美味しいお店の話しばかり。
二人ともコーヒーを飲み終えると、フィンが立ち上がった。
今言われるの? 世間話ばかりで油断していた。
「もういい時間ですね。送ります」
「あ、そう……」
隣の部屋だから、送るといっても外に出るだけ。
「ステラさん、おやすみなさい」
「おやすみ」
フィンが小さく会釈をする。私は家に入ると、ベッドにダイブした。
美味しい料理ができたら告白をされて返事をするって約束じゃなかったっけ?
なにも言われず帰ってきた。
ちょっとドキドキソワソワして、私が期待しているみたいじゃん。
「なんかムカつく」
なにも言われないってことは、今まで通りでいいってことでしょ?
「今のままが一番楽でいいじゃん」
自分に言い聞かせているみたいで、大きく息を吐いた。
フィンに気持ちが傾いているのを自覚する。
美味しいものを食べるのはハッピーなだけだけど、恋愛って楽しいだけじゃなくて悩んだりして大変。
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