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35 星の降る町
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翌朝フィンが八時に迎えにきた。
「ステラさん、おはようございます」
フィンは朝から爽やかな顔で挨拶をする。
いつも通りすぎて、悩むのがバカらしくなる。
「フィン、おはよ」
私も普段のように挨拶を返す。
隣の仕事場に入り予定を確認すると、今日はお昼過ぎに一組ご案内することになっていた。
グタンに行けそうだ。
「ステラ、僕は開店したらシーリナ・ベイに新婚旅行のお客様をご案内するけど、ゲートを開きに着いてくるか?」
ライナスに声をかけられて目を見開く。
ライナスが自分から私に着いてくるか聞くなんて珍しい。いつも私から行きたい、と連れて行ってもらっていた。
もしかしてセレスティアさんと上手くいって、幸せで私にも優しくなった?
シーリナ・ベイはリゾート地だから、観光としても人気がある。行けるようになるのは私もありがたい。午後まで事務仕事だけだから、時間もたっぷりあるし、経費で美味しいものを食べられる。
「行きたい!」
「僕は午前中にもう一組ご案内するから」
ライナスは先に帰るってことか。
一人で美味しいものを堪能しよう。
九時になって開店すると、新婚旅行のお客様をシーリナ・ベイにお連れする。
迎えの日時を確認して「行ってらっしゃいませ」とライナスと声を揃えてお辞儀した。
お客様が見えなくなると、魔法陣を描いてゲートを繋げる。
ライナスに教わった魔法陣を描くコツは、私には難しくて、描くスピードがいつもより遅くなってしまう。慣れたら速くなるのかな?
「描き終わったか? じゃあ帰るぞ」
腕を組んで傍で黙って立っていたライナスに、キョトンとした目を向ける。
「帰ればいいじゃん。私は美味しいものを食べてから帰るから」
「それならステラを連れてきた意味がないだろう。僕はあと二組ご案内するんだ。ここでステラと帰ると一回多く転移魔法を使える」
「仕事はないんでしょ? ……もしかして、仕事後にデート?」
ライナスはバツが悪そうに視線を外した。
私に優しくなったわけじゃなくて、自分のためだったのか、と腑に落ちた。
「どこに行くの?」
ライナスはこちらに視線をよこして、肩を落とす。話す気になったようだ。
「今日はコメットロップで一年で一番星が降る日なんだ。セレスティアさんと見たいと思って」
一年で一番か。
ライナスのためというより、セレスティアさんのために美味しいものを我慢する。
「そういえばセレスティアさんは知らないの? ライナスの転移できる上限がわかっているなら、私に行けるところは任せるはずだし」
「まだ言ってない。だからステラも言うなよ」
サプライズをしたいということだろうか。
「それはいいけど、セレスティアさんの予定は確認したら?」
セレスティアさんに予定があっては計画は水の泡。
「もともと夕食を一緒に食べに行こうと話はしていたから問題ない」
「お土産買ってきてよ」
「店が開いていたらな」
魔法陣を展開させると、ライナスがその上に乗る。
「王都のミスティック・ツアーズへ」
白い光に包まれ、瞼を下ろす。気持ちのいい潮風が消えた。
目を開くと見慣れた店の中で、セレスティアさんとフィンの座るカウンターの前にレオンがいた。
「げっ、ステラ」
レオンは私を捉えると頬を引き攣らせる。
「なにその反応! それになんで一人なの? 仲間がいないなら、危ないところには絶対に連れて行かないから」
ルトアリン遺跡で、ゴーレムに襲われていたことを思い出す。絶対に転移魔法なんて使ってあげないんだから!
自分の席にドカリと音を立てて座って、そっぽを向く。
「ステラ心配いらないわ。ギルドの仕事ではないから」
セレスティアさんが優しく目を細める。
「レオン、旅行するの? お土産買ってきて」
ライナスがわざとらしく息を吐き出す。
さっきライナスにもお土産をねだったから、呆れられたのかもしれない。
でも美味しいものはいくらでも食べたいから仕方がない。
「いや、旅行でもねーんだって」
レオンは気まずそうに目線を逸らす。
「じゃあなんなの?」
はっきりしない物言いが不満で口を尖らす。
レオンは額を押さえて眉間に皺を刻んだ。大きく息を吐くと体から力が抜けたようだ。
「彼女にプロポーズをしようと思ってんの。いい場所はないか聞いてたところ」
レオンは気恥ずかしそうに頭を掻く。
一緒に育った私に知られるのが恥ずかしかったのか。だから私が店に戻った時、あんな反応だったのだと納得した。
「思い出の場所とかはないの?」
私がレオンに聞いているのに、なぜかフィンが瞳を輝かせていた。
「彼女も同じギルドに所属しているから、ギルド以外だと遺跡やダンジョンになる」
レオンが項垂れて嘆く。
思い出の場所が危険な場所ばかりだから、プロポーズに適した場所を聞きにきたのか。
今日はコメットロップで一年で一番星が降る日だとライナスが言っていた。たくさんの流れ星が走る空の下でプロポーズをするなんて、ロマンチックなんじゃないだろうか。
ライナスに目を向けると、小さく頷いてセレスティアさんの後ろに立った。
「コメットロップはいかがでしょうか? 今日は一年で一番多く星が降ります」
「たくさんの星が降るなんて素敵ね」
セレスティアさんが口元で両手を揃えて笑う。
「一緒に行きましょう」
ライナスが誘うけれど、サプライズをしたいから黙っていて欲しいと頼まれたのはなんだったんだろう。
誘われてセレスティアさんも嬉しそうだし、……まあいいか。
「たくさんの流れ星の下でプロポーズか……。それでお願いします」
レオンが顔をパッと明るくする。
「それでは必要事項を記入してください」
フィンが同意書をレオンの前に置いた。
「お連れ様には転移前にご署名頂きます」
「わかりました」
閉店前に彼女と一緒に来ると言って、レオンは店を出て行った。
フィンが同意書を隅々まで確認して、ファイルにしまう。
「ステラさん、おはようございます」
フィンは朝から爽やかな顔で挨拶をする。
いつも通りすぎて、悩むのがバカらしくなる。
「フィン、おはよ」
私も普段のように挨拶を返す。
隣の仕事場に入り予定を確認すると、今日はお昼過ぎに一組ご案内することになっていた。
グタンに行けそうだ。
「ステラ、僕は開店したらシーリナ・ベイに新婚旅行のお客様をご案内するけど、ゲートを開きに着いてくるか?」
ライナスに声をかけられて目を見開く。
ライナスが自分から私に着いてくるか聞くなんて珍しい。いつも私から行きたい、と連れて行ってもらっていた。
もしかしてセレスティアさんと上手くいって、幸せで私にも優しくなった?
シーリナ・ベイはリゾート地だから、観光としても人気がある。行けるようになるのは私もありがたい。午後まで事務仕事だけだから、時間もたっぷりあるし、経費で美味しいものを食べられる。
「行きたい!」
「僕は午前中にもう一組ご案内するから」
ライナスは先に帰るってことか。
一人で美味しいものを堪能しよう。
九時になって開店すると、新婚旅行のお客様をシーリナ・ベイにお連れする。
迎えの日時を確認して「行ってらっしゃいませ」とライナスと声を揃えてお辞儀した。
お客様が見えなくなると、魔法陣を描いてゲートを繋げる。
ライナスに教わった魔法陣を描くコツは、私には難しくて、描くスピードがいつもより遅くなってしまう。慣れたら速くなるのかな?
「描き終わったか? じゃあ帰るぞ」
腕を組んで傍で黙って立っていたライナスに、キョトンとした目を向ける。
「帰ればいいじゃん。私は美味しいものを食べてから帰るから」
「それならステラを連れてきた意味がないだろう。僕はあと二組ご案内するんだ。ここでステラと帰ると一回多く転移魔法を使える」
「仕事はないんでしょ? ……もしかして、仕事後にデート?」
ライナスはバツが悪そうに視線を外した。
私に優しくなったわけじゃなくて、自分のためだったのか、と腑に落ちた。
「どこに行くの?」
ライナスはこちらに視線をよこして、肩を落とす。話す気になったようだ。
「今日はコメットロップで一年で一番星が降る日なんだ。セレスティアさんと見たいと思って」
一年で一番か。
ライナスのためというより、セレスティアさんのために美味しいものを我慢する。
「そういえばセレスティアさんは知らないの? ライナスの転移できる上限がわかっているなら、私に行けるところは任せるはずだし」
「まだ言ってない。だからステラも言うなよ」
サプライズをしたいということだろうか。
「それはいいけど、セレスティアさんの予定は確認したら?」
セレスティアさんに予定があっては計画は水の泡。
「もともと夕食を一緒に食べに行こうと話はしていたから問題ない」
「お土産買ってきてよ」
「店が開いていたらな」
魔法陣を展開させると、ライナスがその上に乗る。
「王都のミスティック・ツアーズへ」
白い光に包まれ、瞼を下ろす。気持ちのいい潮風が消えた。
目を開くと見慣れた店の中で、セレスティアさんとフィンの座るカウンターの前にレオンがいた。
「げっ、ステラ」
レオンは私を捉えると頬を引き攣らせる。
「なにその反応! それになんで一人なの? 仲間がいないなら、危ないところには絶対に連れて行かないから」
ルトアリン遺跡で、ゴーレムに襲われていたことを思い出す。絶対に転移魔法なんて使ってあげないんだから!
自分の席にドカリと音を立てて座って、そっぽを向く。
「ステラ心配いらないわ。ギルドの仕事ではないから」
セレスティアさんが優しく目を細める。
「レオン、旅行するの? お土産買ってきて」
ライナスがわざとらしく息を吐き出す。
さっきライナスにもお土産をねだったから、呆れられたのかもしれない。
でも美味しいものはいくらでも食べたいから仕方がない。
「いや、旅行でもねーんだって」
レオンは気まずそうに目線を逸らす。
「じゃあなんなの?」
はっきりしない物言いが不満で口を尖らす。
レオンは額を押さえて眉間に皺を刻んだ。大きく息を吐くと体から力が抜けたようだ。
「彼女にプロポーズをしようと思ってんの。いい場所はないか聞いてたところ」
レオンは気恥ずかしそうに頭を掻く。
一緒に育った私に知られるのが恥ずかしかったのか。だから私が店に戻った時、あんな反応だったのだと納得した。
「思い出の場所とかはないの?」
私がレオンに聞いているのに、なぜかフィンが瞳を輝かせていた。
「彼女も同じギルドに所属しているから、ギルド以外だと遺跡やダンジョンになる」
レオンが項垂れて嘆く。
思い出の場所が危険な場所ばかりだから、プロポーズに適した場所を聞きにきたのか。
今日はコメットロップで一年で一番星が降る日だとライナスが言っていた。たくさんの流れ星が走る空の下でプロポーズをするなんて、ロマンチックなんじゃないだろうか。
ライナスに目を向けると、小さく頷いてセレスティアさんの後ろに立った。
「コメットロップはいかがでしょうか? 今日は一年で一番多く星が降ります」
「たくさんの星が降るなんて素敵ね」
セレスティアさんが口元で両手を揃えて笑う。
「一緒に行きましょう」
ライナスが誘うけれど、サプライズをしたいから黙っていて欲しいと頼まれたのはなんだったんだろう。
誘われてセレスティアさんも嬉しそうだし、……まあいいか。
「たくさんの流れ星の下でプロポーズか……。それでお願いします」
レオンが顔をパッと明るくする。
「それでは必要事項を記入してください」
フィンが同意書をレオンの前に置いた。
「お連れ様には転移前にご署名頂きます」
「わかりました」
閉店前に彼女と一緒に来ると言って、レオンは店を出て行った。
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