元王女で転生者な竜の愛娘

葉桜

文字の大きさ
67 / 87

第66話

しおりを挟む
 テオが腰掛けたのはシルヴェール王妃の隣だ。
 シルヴェール王妃殿下が手招きして示したのがそこだったからだけど、テオは少しだけ居心地悪そうにしている。
 その理由は嫌だからだとか王妃殿下が義母だからとかじゃなくて、真面目さと真摯さ故にこの国に暮らす者としても王家の人間としても国母である王妃殿下の隣に腰掛けるなんて恐れ多い、だとか考えているんだろう。まあ、私の推測でしかないけどね。

 嬉しそうな顔のシルヴェール王妃の横に、躊躇いながらも腰掛けたテオを見届けると、ティートさんとアルノーさん、それにラスカはテオに近い場所に控えるように佇んだ。
 公式な場ではなくともお仕事中だもんなあ、と盗み見るように眺めていると、

「それで、何を話していたんだ?」

 テオが何てことない風に尋ねて来た。
 でもその表情はどこか落ち着きがない。なんだろう、前世で言うところの授業参観っていうイベントというか、そういう時の感じっていうか? そんな感じの親の存在を気にしないようにさいているけど気になっちゃうような、そんな感じの様子だ。
 私は思わずこぼれそうになる笑みを堪えながら口を開く。

「少々世間話をしていただけですよ、王子殿下」
「世間話……?」
「テオドール王子のお話が世間話といえるなら、ですけどね」

 あ、こら、しれっとそれを言わないの、カノン!
 咎めるように見るとカノンはけろっとした表情を浮かべていて、対してテオはといえば驚いたように目を瞬かせていたけど、すぐに責めるような視線を横に送り、

「……俺の、何の話をしていたんですか、母上?」
「世間話よ?」
「俺の話が世間話と言えるわけがないでしょう」
「あら、どうして? 可愛い我が子の自慢は母にとっては素敵な世間話よ?」
「母上?」

 のらりくらりと躱すシルヴェール王妃殿下と、不満げに眉をつり上げるテオを見ているとジェラルド王子と話しているかのような空気感を感じるけれど、シルヴェール王妃殿下の話のペースの持って行き方はテオにも似ている気もする。
 ジェラルド殿下もそうだし、それにリディアーヌ王女殿下のずずい、とくる感じもそうだけど兄妹なんだなあ、って改めて思っちゃうよね。

 目を細める先でシルヴェール王妃殿下は鼻歌でも歌っているかのような軽さで言葉を続ける。

「そんなに怒らないでちょうだいな。まだ昔のあなたの可愛いお話はしていないのよ?」
「そのような話はしなくていいです」
「昔のテオドール殿下のお話、ですか?」
「それは俺も気になりますね」

 少しそわそわするなあ、とオウム返しに言葉を繰り返すと、隣でカノンがからかうようなニュアンスを乗せて言った。
 気になってるのも事実なんだろうけど、絶対からかえるような話題が欲しい、っていうのが何よりの本音よね?

 ちら、と視線を遣るとカノンはうきうきとした様子でリフを撫でていて、撫でられているリフも何処かテオについての話を期待しているかのように私の目には映った。
 リフにからかおうとかいう考えはないと思うけどね。

「……勘弁してくれ」

 ややあってから困り果てたようなテオの声が聞こえてくる。
 なんか、こう、ごめんね? カノンもリフも私には永遠に抑え込むとかは無理なのよ。
 せめて、と気遣うような視線は送ってみるけれど、にこにこと楽しそうなシルヴェール王妃殿下の様子を見ているとお話は不可避なんだろうな、と察したのだった。ごめん、テオ。

 と、和やかな時間を過ごし始めた矢先の事だ。
 不意に離れた場所でざわざわと騒がしくなり始めたことに気付いのは、みんな同時だった。
 より正確に言うなら、真っ先に気付いたであろうカノンとリフ、それにラスカ以外が同時だったのだと思う。

「お待ちください! そちらはいま……!」

 慌てたように引き止める声が耳に届いた時にはカノンは表情を消し、リフは不機嫌そうに尻尾を揺らす。ラスカは何も変わりなかったけど、そう装っているのは言うまでもなく。
 何事か、と帯剣に手を伸ばした騎士たちも含めた全員が向けた先にはこちらに近付いてくる人影。

 ああ、なんというか、嫌なことって本当に一度起きると一日中起きやすいものよね。感情がジェットコースターよ。ジェットコースターなんてものこの世界には多分ないけどね。


「――アナスタシア王女殿下!」


 引きとめようとしていた声がこれでもかと張り上げられてそう呼んだ時にはもう、彼女ははっきりとその姿がわかる場所まで近づいて来ていて。
 息を切らせて駆け寄ってくるその人は、アナスタシア王女は私達を見て信じられないと言わんばかりに目を見開いていたのだ。

 ご苦労な事だよねえ。
 何がそこまで姉さんの事を突き動かしているのかは知らないけれど。それでももう、要らぬ心配で頭を悩ます必要はないのだと開き直った私には、彼女に対してなんて、そんな感情しかはっきりとは残ってないのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...