元王女で転生者な竜の愛娘

葉桜

文字の大きさ
69 / 87

第68話

しおりを挟む
 リュシアン王子がどうしてそこにいるのか、なんてことはわからないといえばわからないのだけれど、ただよーく思い出して欲しい。

 そもそも私とカノンとリフが此処に居るのは、シルヴェール王妃殿下からのお誘いがあったからで、テオが此処にいるのもまた、シルヴェール王妃殿下のお言葉あってのものといえる。
 そしてアナスタシア王女は、どうしてここにやってきたのかはさておきとしても、留まることを許したのは王妃殿下であり、訪れたリュシアン王子のことも誰ひとりとして引きとめようとした形跡なくここにいて。

「……カノン?」
「んー? うーん。まあ十中八九、そうなんだろうなあ」

 ひそりとカノンを呼べば、カノンはおかしそうな笑みを零す。
 まあ、そうとしか考えられないよねー、と私は小さく困ったように笑んだのだった。

 つまるところ、この状況はシルヴェール王妃殿下が作り出したという事だ。

 とはいえアナスタシア王女の件に関しては神なる竜こそが成すべきとアルマン陛下が仰っていたけれど、と首を傾げていると、カノンがその疑問を読んだかのように、今度は声量を極めて抑えることはなくぽつりと呟く様に言った。

「王妃殿下の目的は王子だろうさ」

 王子――この場合はリュシアン王子殿下か。
 カノンがさらりと告げた後に、ちら、と見遣った先のシルヴェール王妃はカノンを盗み見て、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。あ、当たりってことですね、わかります。隣のテオは困ったように眉を下げて微笑んでますけど、気にしていらっしゃいませんね!

 ただ、目的はリュシアン王子の方にあるとはいえ、姉さんが何を考えているかという事への理解はこの場で更に深まるだろうから、私個人としては少し助かるといえば助かるのよね。
 結局彼女も私と同様に前世の記憶がある可能性が高い、と言ってはいるけどその確証なんてものはないわけだし。その証拠を得たところで何か変わるわけでもないけど、それでもいずれは私もアクアリアという自分自身と向き合ってアナスタシア姉さんに向き合わなきゃならないのだから、その時にのらりくらりと躱されるだなんて事がないように出来るのは良いことではあるだろう。

「では、アナスタシア王女。お話をうかがえるかしら? 出来れば手短にお願いしたいわ。ご覧の通り、私はかわいい息子と、我が国のお客様とお話をしていたから」

 どうしてだろう、暗に責めるような雰囲気を宿す物言いをしている気がする。いや、それが総意なんだろうなあ、とも思うけど。
 むしろ、リュシアン王子はどうしてアナスタシア王女の言葉に心を奪われたんだろう。巧みな話術で人心を掴めるというのなら、こんな歪な状態にはなってないと思うんだけどなあ。

 そう思いながら眺めていると、アナスタシア王女がシルヴェール王妃をまっすぐに睨むように見て口を開いた。

「それです。何を考えてるんですか?」
「それ、とは?」
「とぼけないでください。あたし、知ってますから」

 こてり。首を傾げる王妃殿下を、アナスタシア王女が、姉さんが睨み見据える。
 それは堂々とした様子だった。疑いようもなく真実なのだと、揺るぎない自信が彼女の双眸には宿っていた。
 でも。だけど。

「王妃様がテオ様のことを、心では嫌って疎んでいるって」

 テオからあれだけ拒絶された事柄を、否定された筈の事柄を、そんな事実などあるはずもないと思わせてくれるような、母と息子の姿を見せてくれたシルヴェール王妃とテオに投げつけられるのだろうか。

 私にはわからないし、わかりたくもない。
 ただ、再度繰り返された、今度はシルヴェール王妃にさえも投げ掛けられたその言葉は、きっとリュシアン王子だけじゃなくて、アルノーさんの心も揺さぶるような言葉だったんだろうと、そうであって欲しいと思ってしまうのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

慈愛と復讐の間

レクフル
ファンタジー
 とある国に二人の赤子が生まれた。  一人は慈愛の女神の生まれ変わりとされ、一人は復讐の女神の生まれ変わりとされた。  慈愛の女神の生まれ変わりがこの世に生を得た時、必ず復讐の女神の生まれ変わりは生を得る。この二人は対となっているが、決して相容れるものではない。  これは古より語り継がれている伝承であり、慈愛の女神の加護を得た者は絶大なる力を手にするのだと言う。  だが慈愛の女神の生まれ変わりとして生を亨けた娘が、別の赤子と取り換えられてしまった。 大切に育てられる筈の慈愛の女神の生まれ変わりの娘は、母親から虐げられながらも懸命に生きようとしていた。  そんな中、森で出会った迷い人の王子と娘は、互いにそれと知らずに想い合い、数奇な運命を歩んで行くこととなる。  そして、変わりに育てられた赤子は大切に育てられていたが、その暴虐ぶりは日をまして酷くなっていく。  慈愛に満ちた娘と復讐に駆られた娘に翻弄されながら、王子はあの日出会った想い人を探し続ける。  想い合う二人の運命は絡み合うことができるのか。その存在に気づくことができるのか……

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...