捧魂契約のリセットスイッチ

白城海

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第一章 運命炸動のファーストリープ

11・悪魔の囁き

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 深夜。心配する家族を無視し、僕は一人で自室に籠っていた。
 真っ暗な部屋。点けっ放しのパソコン。誰かと喋るのも面倒だったし、一人で考え込みたくもあった。

 事態の大きさと僕が高校生と言う事もあり、警察からの聴取は明日に行われる。
 今日はゆっくり休めと言われたが、勿論出来るわけがない。

 林田章吾は死んだ。

 急発進させた車のコントロールができず、建設中のビルに激突。
 そのまま病院に運ばれたが間もなく死亡。その他二人は軽傷ではあったが、その後どうなったかは教えて貰えなかった。

  体感的には約三日。僕の頭は、もはやパンク寸前だった。

 妹がレイプされ、僕が自殺した。
 しかし僕は時間を逆行して生き返った。
 僕は過去を変革し、妹のレイプをなかったことにした。
 しかし、まるで妹の身代わりになるかのように見知らぬ少女が被害者となり、何故か林田も死んだ。

 僕はさらにもう一度過去に戻り、少女を救った。
 なのに、どうして林田だけが死んだのだろうか。
 正直な話、あんな奴どうなっても構いはしない。腑に落ちないだけだ。知っている人間が死んで全く気にかけない人間などいるはずはない。

――そうだよ。あんな奴、死んで当然だったんだ。

《奴ら》に僕は色々な物を奪われた。
 数十万円にも及ぶ現金。普通の高校生活。そして、人間としての誇り。
 奴ら三人のせいで僕の学校生活は家畜にも劣る最悪のものになっていたのだから。

 頭を振り、携帯電話を確認する。例のメールは、やはり午後六時半に着信した。

《件名:試用期間終了のお知らせ》
《本文:リセット条件→本契約後に表示されます 残り人数→0》
 予想通りと言えば予想通りの内容。ただ、気になる事があった。

「試用期間、本契約。どう言うこと……」
『教えてやるよ』
「え?」
 声が聞こえたわけではない。僕は、《目で見た》のだ。
 視界に広がるのは、新たな異常。パソコンのモニターが、僕の疑問に答えるかのように文章を表示していた。

 直後、けたたましい電子音が部屋中に鳴り響いた。

 騒音の発生源は机の上に置かれた携帯電話。
 液晶を確認する。発信主の名前は、分からない。
 と言うより、読めなかった。日本語でも、英語でも無いよく分からない文字。
 どうしていいのか分からずに固まっていると、再びモニターに文字が表示された。

『電話に出たら、お前の疑問に答えてやる』

 無視しろ、と頭のどこかから声が聞こえた。
 もし電話に出れば、もう後戻りができなくなる。今ならば、まだ今までの日常で生きていける予感がした。

 だが、文字は僕の心を読むかのようにさらに文章を綴っていく。

『出ろ。出なければ一生後悔するぞ』

 後悔。
 高校を選択し損ねた後悔。
 もっと受験勉強しておけばよかったと言う後悔。
《奴ら》に目を付けられない立ち回りをしておけばよかったと言う後悔。

 既に、僕はこの短い人生において他人とは比べ物にならないほどの大きな後悔をしつくしている。
 他の同世代の人間とは比べ物にならないほどの絶望を味わいつくしている。

 だからこそ、もう二度と後悔はしたくなかった。

 息を、大きく吸う。

 歯を、思い切り食いしばる。

 そして、全ての迷いを振り払うように、全霊の力を込めて震える指で《通話》のアイコンを押しこんだ。

『ああ、やっと出た。遅すぎるぜ』
  潰れたような、低い男の声の声だった。

「誰だ。お前は、誰なんだ」
 当然のことながら聞き覚えは無い。ただ、この声こそがメールを送った人物だという確信はあった。

『オレ? オレかい?』
 緊張感の全く無い声で男が笑う。彼の余裕とは裏腹に、僕の心の中には焦りと不安が増大していく。

「お前以外に誰がいるって言うんだ! お前だろ、僕にメールを送った人間はっ」
 通話口に向かって叫びかける。
 だが、男の答えは喉から洩れるような笑い声だけだった。

「何がおかしい。何で笑ってる」
『ちょっと勘違いをしているからさ。確かに、オレはお前の携帯にメールを送った。だがね』
「勘違いって、何――」
 何を、と続けようとした瞬間、男の声が割り込んだ。

 余りに現実離れした答えを運んで。

『オレは人間なんかじゃあない。《悪魔》だ』
 言葉を失った。今、この男は何と言った。
『前の奴はオレの事をグリードって呼んでいた。名前なんてどうでもいいんだが、まあよろしくな』

 電話の向こうで楽しそうに喉を鳴らす《自称悪魔》に、僕は絶句するしかなかった。
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