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10話 クヌーの毛刈り②
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こんなに大変な作業だなんて思わなかった‥‥。昔旅行先で羊の毛刈りを体験したことがあったが実際に仕事としてやると大変だ。
うがあっっ!!
誰かの悲鳴が聞こえる。大方最初の注意をちゃんと聞いてなくて真後ろに立って蹴られたんだろう。痛そう‥‥。まあいかにも冒険者で鍛えてそうな人だから大丈夫だろう。すぐに立ち上がってピンピンしながらぐちぐち言ってるし。
まずクヌーを抑えるのが大変だ。毛を刈るためにはクヌーを押さえつけなきゃいけない。足や股を使って、クヌーが動かないように固定必要があるのだが、クヌー自体には辛い体制で固定されるため、固定の仕方が甘く失敗すると、クヌーは忽ち嫌がって暴れたり、立ち上がってしまうことがある。その結果、せっかく刈った毛が支離滅裂になってしまうこともある。それに中腰状態で作業するため腰に負担がかかる。
昨日受けたナーゴの収穫以来で腰が痛いのにさらに腰に負担をかけてしまった。ぎっくり腰になるぞ、このままじゃ。さすがに24歳でぎっくり腰はヤダ‥‥。頑張って鍛えよう。ギルドのうわさで聞いたが新人は必ず受ける依頼の城壁工事はほかのどの以来よりも過酷らしい。次の日は起き上がれなくなるんだとか‥‥。でもこの依頼がこなせて一人前ともいわれている。犯罪者の罰として無賃での労働刑としてもつかわれるくらいには過酷な仕事だ。
チョキチョキ‥‥チョキチョキチョキチョキーーーーー。
終わらない!!!!
手首が痛い。腱鞘炎になるよ、このままじゃ。なんでこの世界バリカンないの?あれがあればはさみで地道に頑張るよりずっと早く終わるのに‥‥。
ふとケリーさんの方を見るとものすごいスピードで毛を刈っていた。刈られているクヌーも寝そべってリラックス状態。すごい‥‥これが熟年の技。
俺が悪戦苦闘しながら1時間半かけて一頭の毛刈りを終えるまでにケリーさん三頭も終わらせてる‥‥まじか。ケリーさんが毛を刈っているのは真っ白な美しいクヌーだ。真っ白なクヌーは貴重で価値が高い。俺たち依頼を受けた組が刈っているクヌーは一般的な少し黄色味のかかったクヌーだ。
白いクヌーの毛皮は主に貴族や裕福な商人向けで値段も跳ね上がる。それにしても丁寧できれいな早業だ。心なしかクヌーたちもうれしそうだ。
「そうっすよね!ケリーさんほんとうにすごいっす!!」
「?!声に出てたか?」
「いや声には出てないんすけど表情が。」
「そうか。君は?」
「自己紹介が遅れたっす!俺、ケリーさんに雇ってもらってる新人のダンっていうっす!よろしくっす!!」
「ああ、よろしく。俺はユウだ。てっきり依頼を受けた冒険者なのかと思ったよ。」
「俺、冒険者だったんす。でも新人のころ先輩方の忠告もろくに聞かずに自分たちに見合わない依頼を受けて‥‥案の定ボロボロに負けて命からがら逃げかえったんす。5人いた仲間は3人死んで2人だけ生き残って‥‥。俺、腕に大きなけがをしてもう剣が握れなくなって冒険者続けられなくなって‥‥。生き残ったもう一人は故郷に帰っておとなしく両親の食堂を継ぐことにしたみたいなんすけど俺、孤児だから‥‥。帰る家もなくって絶望してた時にケリーさんに拾ってもらったんす。何回かこの依頼受けたことがあって覚えていてくれて。ケリーさんは俺の命の恩人で尊敬する人っす。ーーなんかすいません、重い話聞かせてしまって。お兄さんも冒険者なんすよね?余計なお世話かもしれないっすけどどうか気を付けて。」
「ああ、肝に銘じておくよ。あんた、いいやつだな。だからケリーさんも‥‥。」
「おい!ダン、さぼってないでこっちこい!!教えてやる!!」
「はいっす!!じゃあまた!」
深い悲しみと後悔を抱える少年の過去を聞いて改めてここが安全な日本とは違い、危険に満ちた異世界なのだと意識する。厳しい言葉をかけながらも不器用な優しさをもって接するケリーさんと前に進もうとあがく真っ直ぐで純粋な少年。二人はいい関係を築けているんだろう。
ーーダンと友達になっていろいろコツを教えてもらった。少しだけど早く作業ができるようになって夕方になる前に全ての作業を終わらせることができた。
きれいに刈れたようでなかなかいい報酬になった。夜ご飯はちょっと豪華にしてお酒まで飲んだ。労働の後のエール(ビール)はうまい!!
明日はいよいよ戦闘講習だ。頑張ろう!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
参考文献
http://farmhist.com/category3/entry13.html
羊の毛刈りって大変な作業なんですね‥‥。
うがあっっ!!
誰かの悲鳴が聞こえる。大方最初の注意をちゃんと聞いてなくて真後ろに立って蹴られたんだろう。痛そう‥‥。まあいかにも冒険者で鍛えてそうな人だから大丈夫だろう。すぐに立ち上がってピンピンしながらぐちぐち言ってるし。
まずクヌーを抑えるのが大変だ。毛を刈るためにはクヌーを押さえつけなきゃいけない。足や股を使って、クヌーが動かないように固定必要があるのだが、クヌー自体には辛い体制で固定されるため、固定の仕方が甘く失敗すると、クヌーは忽ち嫌がって暴れたり、立ち上がってしまうことがある。その結果、せっかく刈った毛が支離滅裂になってしまうこともある。それに中腰状態で作業するため腰に負担がかかる。
昨日受けたナーゴの収穫以来で腰が痛いのにさらに腰に負担をかけてしまった。ぎっくり腰になるぞ、このままじゃ。さすがに24歳でぎっくり腰はヤダ‥‥。頑張って鍛えよう。ギルドのうわさで聞いたが新人は必ず受ける依頼の城壁工事はほかのどの以来よりも過酷らしい。次の日は起き上がれなくなるんだとか‥‥。でもこの依頼がこなせて一人前ともいわれている。犯罪者の罰として無賃での労働刑としてもつかわれるくらいには過酷な仕事だ。
チョキチョキ‥‥チョキチョキチョキチョキーーーーー。
終わらない!!!!
手首が痛い。腱鞘炎になるよ、このままじゃ。なんでこの世界バリカンないの?あれがあればはさみで地道に頑張るよりずっと早く終わるのに‥‥。
ふとケリーさんの方を見るとものすごいスピードで毛を刈っていた。刈られているクヌーも寝そべってリラックス状態。すごい‥‥これが熟年の技。
俺が悪戦苦闘しながら1時間半かけて一頭の毛刈りを終えるまでにケリーさん三頭も終わらせてる‥‥まじか。ケリーさんが毛を刈っているのは真っ白な美しいクヌーだ。真っ白なクヌーは貴重で価値が高い。俺たち依頼を受けた組が刈っているクヌーは一般的な少し黄色味のかかったクヌーだ。
白いクヌーの毛皮は主に貴族や裕福な商人向けで値段も跳ね上がる。それにしても丁寧できれいな早業だ。心なしかクヌーたちもうれしそうだ。
「そうっすよね!ケリーさんほんとうにすごいっす!!」
「?!声に出てたか?」
「いや声には出てないんすけど表情が。」
「そうか。君は?」
「自己紹介が遅れたっす!俺、ケリーさんに雇ってもらってる新人のダンっていうっす!よろしくっす!!」
「ああ、よろしく。俺はユウだ。てっきり依頼を受けた冒険者なのかと思ったよ。」
「俺、冒険者だったんす。でも新人のころ先輩方の忠告もろくに聞かずに自分たちに見合わない依頼を受けて‥‥案の定ボロボロに負けて命からがら逃げかえったんす。5人いた仲間は3人死んで2人だけ生き残って‥‥。俺、腕に大きなけがをしてもう剣が握れなくなって冒険者続けられなくなって‥‥。生き残ったもう一人は故郷に帰っておとなしく両親の食堂を継ぐことにしたみたいなんすけど俺、孤児だから‥‥。帰る家もなくって絶望してた時にケリーさんに拾ってもらったんす。何回かこの依頼受けたことがあって覚えていてくれて。ケリーさんは俺の命の恩人で尊敬する人っす。ーーなんかすいません、重い話聞かせてしまって。お兄さんも冒険者なんすよね?余計なお世話かもしれないっすけどどうか気を付けて。」
「ああ、肝に銘じておくよ。あんた、いいやつだな。だからケリーさんも‥‥。」
「おい!ダン、さぼってないでこっちこい!!教えてやる!!」
「はいっす!!じゃあまた!」
深い悲しみと後悔を抱える少年の過去を聞いて改めてここが安全な日本とは違い、危険に満ちた異世界なのだと意識する。厳しい言葉をかけながらも不器用な優しさをもって接するケリーさんと前に進もうとあがく真っ直ぐで純粋な少年。二人はいい関係を築けているんだろう。
ーーダンと友達になっていろいろコツを教えてもらった。少しだけど早く作業ができるようになって夕方になる前に全ての作業を終わらせることができた。
きれいに刈れたようでなかなかいい報酬になった。夜ご飯はちょっと豪華にしてお酒まで飲んだ。労働の後のエール(ビール)はうまい!!
明日はいよいよ戦闘講習だ。頑張ろう!!!
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参考文献
http://farmhist.com/category3/entry13.html
羊の毛刈りって大変な作業なんですね‥‥。
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