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3話

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お腹が大きくなってきた。生活しているだけでも苦しく感じる時がある。

あの会話から5ヶ月が経つ今でも旦那はパトリシアの元へ通っている。

苦しい思いを吐き出すところもなくてお腹も張って痛くて精神的に随分と弱っていた。

ーー遂に出産の日を迎える。

体面を気にしてなのか知らないけれどその日は夜も家にいてくれた。

子供の泣き声が聞こえてくる。ああ、良かった‥‥無事に産めたのね。

可愛い‥‥なんで可愛いのかしら。愛おしい。私があなたのお母様よ。必ず守るわ。何があっても私だけは味方だからね。

子どもが産まれ、旦那はその子どもを抱き上げることもなく私たちを一瞥するとおめでとうとだけ言って部屋を出て行った‥‥。

ちっとも嬉しそうではない笑顔で‥‥。

もう彼の愛はいらない。強くなるわ。この子を守る母として。

子を持った母は強い。

出会った頃の淡い恋心なんてもう消えていた。義務的な夫婦関係でも構わない。私はこの子を幸せに育ててみせる。

そう思っていた‥‥なのにーー。

子どもが6歳を迎える誕生日の日。

この世界では6歳の誕生日はとても重要な日だ。

6歳という誕生日はこの世界では節目で七五三みたいな意味を持つ。どの家でも盛大に祝う日なのだ。

もちろんその日は旦那も参加だ。家族揃って祝うのが習慣だから。

なのにいつまで経っても彼が家に帰ってくることはなかった‥‥。

次の日の朝、帰ってきた旦那は寝ずに待っていた私を見て驚いていた。

「何をしている?」

「聞きたいのは私の方です。昨日は何をしていたのですか?6歳の誕生日でしたのに‥‥。」

「はぁ~、パトリシアが癌にかかったみたいだって連絡が来たんだよ。一緒に医者に説明を聞きにいっていた。」

「何を‥‥。彼女には血の繋がった姉があるでしょう!!あなたが行く必要なんてないじゃない!!昨日は息子カイルの6歳の誕生日だったのよ!」

「ほんと、心が狭くて冷たいやつだな。パトリシアは病気にかかって不安だったんだ。姉は仕事の都合がつかなくて俺が行くしかなかったんだよ!!」

「関係ないでしょ!おかしいわよ!家族の大事な日よりも幼馴染を優先するなんて!」

「おかしいのはお前だろ!!」

言い合いは続き、決着はつかないままになった。
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