まあ、奇跡ということにしておこう

寝頭ふみんしょー

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まあ、奇跡ということにしておこう

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「アルヴィス様…変なことを言ってもいいですか」
怪我が完治しガゼボでお茶を飲んでいた時、ミレイユが神妙な面持ちでアルヴィスに話を切り出した。
「何かあったか」
想い人の真剣な表情に紅茶から手を離す
「今からする話。凄く突拍子もなくてバカバカしくて世迷言のような狂った話なのです。」
無理やりハードルを下げてアルヴィスの様子を伺う
「それは一体どんな話だ。前置きはいいから話してくれ。君の事を疑ったりなどしない」
アルヴィスがはっきりとそう言ったのでミレイユは一呼吸して話し始める
「じ、実は私この人生は二回目なのです…!」
ミレイユが顔を真っ赤にして一息で言う
その言葉にアルヴィスは耳を疑う
人生二回目
それは自分も同じであったのだから
「ゆ、夢かもしれないのですが、あまりにも鮮明で状況も一致しているので、恐らく私は…二回目の、人生で…」
ミレイユの言葉が尻すぼみになっていく
自分の発言があまりにも滑稽だと感じざるを得ない
夢物語に想いを馳せる思春期か?非常に恥ずかしい
それはアルヴィスが黙りこくっているのも原因だろう
「すみません…忘れてください。小説かなにかの一遍を今と重ねているだけです…」
ミレイユが紅茶と共に言葉を飲み込んだ。
「そこでは、君はあの部屋に監禁されたまま幕を閉じたのだろう」
「え…?」
「監禁され、脚も喉も使い物にならず結果的に餓死したんだったか…」
「なんで、それを…」
前回を的確に言い当てられミレイユは言葉を詰まらせる
「私が時を戻した。禁忌の魔法を使った。」
辺りの静けさが深くなる
使用人達が働く音もカップとソーサーがぶつかる音もどこか遠くの物のように聞こえる
「どうしてですか」
満を持して放たれた言葉は嫌に単純だったが、妙に澄んで聞こえる。
「…君と話がしたかったからだ。」
「私と?」
「君が皇国に来た時、庭で私の使用人達と笑いあっているのを見て、なんて呆けたやつなんだと思った。」
「え?」
褒め言葉でも聞けるかと思っていたミレイユは素っ頓狂な声を上げた。
「私が王になったのは13。使用人は使うもので会話を交わすものではなかった。」
「まあ、それは人それぞれの考えというか」
「誰かと楽しそうに話す君が羨ましくて妬ましくて」
「え、恨み言ですか。」
「だから、一度君に話しかけたんだ。」
アルヴィスがイタズラっぽく笑った。
普段鉄仮面で無表情の彼が珍しく笑うものだからミレイユはドキリと肩を揺らし頬を染めた。
「王の格好をしていては、君と対等に話ができないと思った私は簡単に変装をして君の隣に立った。」
「そんなことが…」
全く心当たりがない
ミレイユにとって人との談笑など日常で、どんな身分の人と話すのも関係ない
使用人であろうが貴族であろうが談笑は談笑だ。
「何をそんなに笑っているのか聞いたら君は、『みんなと話すのが楽しいから』とあっさりと言った。そんな簡単な事で笑えるなんて能天気なやつだと思った。」
「さっきから…私の事嫌いなんですか」
「そんなわけないだろう。その日から君の笑顔が脳裏に染み付いて離れなくなった。一度話しただけなのに」
皇子として皇王として
縛られ完璧を求められていたアルヴィスにとってミレイユは憧れだった。
それがやがて恋心へと変わり、ついには禁忌にまで手を伸ばした。
「君が羨ましくて特別だっただけだ。」
「やっと褒め言葉ですね」
ミレイユがにこりと笑った。
その笑顔は以前と変わらず曇りひとつなかった。


「そういえば、なぜ私の記憶もあったのでしょうか?一緒に死んでませんよね」
「さあ、一説によれば命と魂は別物という考えがあるそうだ。」
「はぁ…?」
「君は命は落としたが魂はその場に留まり続けていた…という考えもある」
「核心を着いた答えは無いのですね…」

「まあ、奇跡ということにしておこう」



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