まあ、奇跡ということにしておこう

寝頭ふみんしょー

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時戻しの魔法

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「ミレイユっ!」
ベッドの上から飛び起き辺りを見回す
「戻ってきたようだな…」
冷や汗に濡れた体のまま身支度をさっさと済ませ、執務室に3人を集める
「で、どう動く」
どうやら3人とも着いてきたようだ。
アルヴィスは禁忌の魔法ににより過去に戻ってきた。
魔力量が馬鹿にならないことに加えて失敗すれば死しか訪れない
ミレイユを助けられなかったことで自暴自棄気味になっていたのだろう
こんな愚かな魔法など正気であれば使えなかった。
正気を失っていたせいで三人が着いてくるのを許してしまったのだ。
「大したことはしない。オブシディアンを幽閉するだけだ。」
「お前のことだから殺すと言い出すと思っていたが、何か作戦でも?」
「なんの前触れもなく殺せばミレイユは遠のくだろう」
「温めた恋は沸騰寸前だな」
アルヴィスは剣を腰に刺すとセレストリア城へと向かった。

「急な来訪で申し訳ない」
「いえいえ、我々は同盟国…無礼講と致しましょう」
セレストリア城へ着くとオブシディアンが慌てて出迎えに来た。
オブシディアンは目を細めて笑顔を作る
目の奥が全く笑っていないのはバレバレだ。
「近くを通り掛かったのでな。手合わせなどいかがだろうか?その後少し話がある」
「是非」
オブシディアンが面倒そうに準備を始め、剣を交える
その顔を見ているとふつふつ怒りが湧き思わず殺しそうになる
計画のため必死に殺意を抑える
「っ…!」
オブシディアンの剣が跳ね近くにあった木にぶつかる
「うわっうわぁあぁあ」
生垣から叫び声が聞こえ木の枝をつけた何かがフラフラと動きアルヴィスにぶつかり尻もちを着く
「ミレ?」
オブシディアンが声をかけると木の枝がピクリと反応し中からミレイユの愛らしい顔が覗く
枝を避けてやればこちらを見て固まっているミレイユ
「…」
「…」
お互い無言で見つめ合っていると不機嫌そうなオブシディアンの声が聞こえる
「ミレイユ、この方はバルディア皇国のアルヴィス皇帝陛下だ。ご挨拶しなさい」
「は、はい。」
ミレイユは急いで立ち上がりアルヴィスを見上げ直す
「お、お初にお目にかかります。セレストリア国第一王子・ミレイユ・クラウン・セレストリアでございます。」
「…あぁ」
アルヴィスは久しぶりにミレイユと会話できたことへの喜びで言葉を詰まらせる
青みがかったグレーの編まれた美しい髪
同色の長いまつ毛の中にアイスブルーの瞳が収まっている
肌は生前見た石のような色ではなく透明感のある白い肌
「陛下は剣がとてもお強いですね!私も剣をやってみたいです!」
ミレイユが羨ましそうにアルヴィスを見つめる
「師をつけてもらえばいい」
「稽古すれば陛下みたいに強くなれますか?」
「さぁな」
アルヴィスが汚れを拭うようにミレイユの頬を擦る
ミレイユは不思議そうにアルヴィスを見つめる
ミレイユの温かさと柔らかさにもっと触れたくなる衝動を抑え、ゆっくり手を離した。
前回は石のように冷たくなった体を触ったのが最初で最後だった。
「ミレイユ、部屋に戻るぞ」
「え…」
オブシディアンがミレイユの肩を強く引いて引き剥がされる
その手で触れるな
その汚らわしい体でミレイユを包み込むな
「ミレイユ」
「は、はい」
ミレイユはオブシディアンに肩を抱かれ屋敷内へ連れていかれてしまった。
「王子がこんなところまで来るのは初めてだな」
「お妃様が亡くなられて陛下も過保護になっておられるのだろう」
「もう16歳だと言うのに剣の稽古もさせないほどだ。全く今後が心配でならんよ」
家臣や騎士達が小声でそんなことを言っている
アルヴィスはミレイユの現状を図り知ることが出来た。

そんなことはもう過去のこと
今、ミレイユは城から抜け出そうとしたところをアルヴィスに捕まり部屋に連れ戻されている最中だ。
「ア、アルヴィスさまぁ…」
「ミレイユ、言ったはずだ。君は今、各国からの注目の的だと…そして君のことを狙っているものも多くいるのだということを」
「王様はやだぁ!」
アルヴィスは暴れるミレイユを容易く抱えながら諦めるまでずっとそばに居た。
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