殿下は君と恋がしたい!

寝頭ふみんしょー

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「殿下、こちら資料になります。」
ジョナサンが大量の紙の束を持ってやってきた。
「な、こんなにあるのか…?アデレイド先生の課題より多いぞ…」
「そうおっしゃると思いまして…こちら、この資料を分かりやすくまとめたものにございます。」
ジョナサンは一枚の紙を取り出しルイスに渡した。
「わざわざ回りくどいことをする…」
ルイスは肩をすぼめた。
ルイスの手の中には箇条書きの書かれた紙
内容はというと
『・塔の中のことは外に出ると忘れる
・最上階の魔物を倒せば願いが叶う
・当事者の願いしか叶えられない』
わずか三行にこの大量の資料の内容が詰まっているのかと思うと身震いする
「この、『当事者の願いしか叶えられない』というのはどういうことだ?」
ルイスがジョナサンに振り返って尋ねる
「分かりやすく言えばその場にいるものの願いということですね。大金持ちになりたいと言えば大量の金貨は降ってくるが、外に豪邸なんてものはない」
「ん?つまり願いはそこでしか叶わないということか?外に出れば忘れてしまうのに?」
ルイスが意味がわからないという表情をする
「いえいえ、金貨は手に抱えて持ち帰ることが出来るでしょう。美しい容姿を望むなら覚えてはいなくとも体つきが変わるでしょう」
ルイスの表情が険しくなる
「…ユツキを連れて行かなければいけない。ということか…」
つまり、ルイスだけが塔の最上階に到着したとしてもユツキの病は治らない
ユツキもその場にいなくては意味が無いのだ。
「ユツキを危ない場所に連れていくなんてできない」
ルイスがキッパリと言った。
「左様でございますか…それでは、この資料は片付けましょう。残念ながら、私も願いが叶う場所というのはここしか知らないのです。」
「そうか…」
ルイスは椅子から立ち上がり窓の外の城下を見つめる
目を凝らせばユツキの家の灯りが見える
「ユツキ…」
ルイスは窓に手を置いて思考を巡らせる。

「レイザー…はぁ…ぐる、じぃ…うぅ…」
「ユツキ様、落ち着いてください。ゆっくり息を吸えば大丈夫です。」
ベッドの上で苦しそう悶えているユツキをレイザーが介抱している
心臓が張り裂けそうなほど痛む
いつも痛む心臓を忌々しく思いながらレイザーにしがみつき痛みを誤魔化す
レイザーがユツキの口の中に薬を入れ込み嚥下させる
しばらく悶えていたがすると症状も落ち着いてきた。
ユツキが飲んでいるのは魔力鎮静剤だ。
魔力が暴走している者や体に見合わない魔力を持っている者が服用する
魔力を抑える効果があるため血液に溶け込むとユツキにも効果があった。
酷い場合は血管に直接注入する
そうすればすぐに効果が出るのだ。
びっしょりと汗をかいたユツキは深く息を吸った。
レイザーはユツキの肌に流れる汗を拭う
「ユツキ様が薬を飲み忘れるなんて…」
「ごめ、なさ…」
今日ユツキは食後の薬を飲まずこうして苦しんでいたのだ。
「大丈夫かと…思って…」
ユツキが息も絶え絶えに呟く
「焦らずに」
レイザーがベッドの前に跪きユツキの背中を優しく撫でる
レイザーの肩越しにユツキは窓を見る
大きな城が少し小さく見える
「…殿下」
ユツキはそう呟くと意識を手放した。
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