殿下は君と恋がしたい!

寝頭ふみんしょー

文字の大きさ
16 / 45

16

しおりを挟む
馬車が三時間ほどを進んだ辺りでユツキが根を上げた。
「ユツキ様、大丈夫ですか」
「いま、うごくな…しゅ、しゅじんの、はじをさらす、き…か」
ユツキは吐き気に悶えていた。
「一旦休憩に致しましょう。外の空気でも」
馬車を運転していたジョナサンがそう言って近くの原っぱに馬車を停車させた。
普段王宮へ行くのに馬車を使っているユツキだが、長距離移動と荷馬車には不向きだったようだ。
しばらくしてレイザーに抱えられながら馬車から降りるとルイスが頼りなさそうに近づいてくる
「ユツキ、大丈夫か…?」
その声にユツキは反応しない
気持ち悪さから声が出せないのだ。
「殿下、申し訳ございません。主人に代わり、お詫び申し上げます。」
「そ、そうか…」
シュンとしてユツキを見下ろしている
ユツキを木陰に座らせ、レイザーはジョナサンが調合してくれた薬をユツキの口の中に押し込んだ。
「おぇぇ…」
ユツキは薬の不味さに嗚咽を漏らす
「ジョナサン、効いてないみたいだぞ」
ルイスがジョナサンを問い詰める
「良薬口に苦し、よく効いている証拠でございす。」
ジョナサンの顔には達成感が滲んでいた。
「なんだが、気分が悪いのが治ってきた気がします。」
「左様でございましょう。今後毎朝飲んでいただ来ましょう。長旅に馬車酔いは辛いですからな」
「ま、まいあさ…」
ユツキが薬が入っていたボールを見下ろし絶望的な顔をする
「ユツキ様、背に腹はかえられません」
「えぇ…」
レイザーにも言われ逃げ場がなくなってしまった。
こうしてユツキは毎朝激マズの良薬を飲むことになった。
ユツキの体調も戻ったところで再び馬車を走らせた。
「私ここまで来るの初めてです。」
「そうなんですか?ほら、あそこに湖がありますよね。あそこでよくイブキ様と遊んだんすよ」
ユツキが馬車から落ちないように抱え身を乗り出しながら湖の方をさす
「あ、兄様から聞いたことあります。水魔法が失敗してトルネードになったんですよね」
「よ、よくご存知で」
するとルイスも外を覗きこんでふっと笑った。
「あぁ、急な天候悪化かと思って家臣達が騒いでいたやつか」
「なんでそんなことばっかり覚えてんすか」
同年代の三人は和気あいあいと旅を楽しんでいる
「で?ネオその格好はなんだ?」
「え?」
ネオはユツキを自分の膝の間に挟み座っている
「小さい時はよくしてましたよね」
「兄様と遊ぶ時にたまに混ぜてもらっていました。」
ユツキはルイスとはまた違った仲の良さがある
「絵本とかよく読んでましたよね」
「はい、いつも兄様と一緒に実演までしてくださってとても面白かったです。」
ユツキとネオは思い出話に花を咲かせる
「俺もよくユツキを学校の練習場に連れて行って遊んだよな」
ルイスも対抗してユツキとの思い出を話す
「はい、よく見学させて頂きました。」
「それは遊んでたというのだろうか」
ネオが首を傾げた。

「仲睦まじくてよろしいですなぁ」
「旦那様がネオを寄越したのは正解だったかもしれませんね」
ジョナサンとレイザーが三人を見守っている
「ネオくすぐったい」
「殿下はこんなことユツキ様に出来ないですね」
ネオがユツキの髪の束を振ってちょっかいをかけている
「はぁあ?別に羨ましくないね!」
ネオとルイスがくだらない喧嘩を始めた。
「仲良くして頂きたいですねぇ」
「ネオを寄越したのは失敗だったかもしれません」
レイザーはネオの額をはたいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

大事な呼び名

夕月ねむ
BL
異世界に転移したらしいのだが俺には記憶がない。おまけに外見が変わった可能性があるという。身元は分からないし身内はいないし、本名すら判明していない状態。それでも俺はどうにか生活できていた。国の支援で学校に入学できたし、親切なクラスメイトもいる。ちょっと、強引なやつだけどな。 ※FANBOXからの転載です ※他サイトにも投稿しています

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

処理中です...