殿下は君と恋がしたい!

寝頭ふみんしょー

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「それでは行ってまいります。」
ユツキは表門で両親と兄に挨拶をしていた。
「ユツキが旅だなんて、本当に成長したわね」
オリエがしみじみと言う
「本当に大丈夫か?今からでも中止に…」
「父上、落ち着いてください」
ユツキの旅に最後まで駄々を捏ねていたアレクサンダーがイブキに窘められる
「ユツキは私との約束を守って物理防御魔法を15分以上維持できるようになりました。それにここ一週間体調にも問題がありません。明らかに成長しています。」
「そ、それはそうなんだがな?もし旅先で何かあったらと思うと父は耐えられんのだよ」
情けない父の様子に苦笑しながら最後の挨拶をする
「必ず体を治して帰ってきます。そして土産話を沢山持って帰ってきますね」
ユツキは頭を下げて挨拶を終え、荷馬車に荷物を持っていった。
荷物はルイスに取られ荷馬車の中にいるジョナサンに渡される
そのまま姫抱きをされ荷馬車の中に運ばれた。
「殿下…!」
両親と兄の面前での大胆な行為にユツキは顔を赤くする
荷馬車の中にユツキを下ろすとルイスは馬車から降りてローラント家へ挨拶をする
「この度は許しを頂きまして感謝します。」
ルイスが満面の笑みで言うとアレクサンダーとイブキが渋い顔をしている
反対にオリエは恋バナをする前の女子のようなほくほくとした表情を見せている
「あらあら~」
「子息は命を懸けても必ず守ると誓います。」
真面目な表情になったルイスにアレクサンダーも居住まいを正しお辞儀をする
「この度は誠にありがとうございます。どうか、よろしくお願い致します。
大変差し出がましい話ではありますが、一人連れて行って頂きたい者がおります。」
そして三人の後ろから出てきたのは跳ねた金髪に赤みがかかった茶色い目の男だった。
レイザーと同じ燕尾服に黒い革製の手袋を填めている
彼はネオ・フォスター、最近ユツキのお付になった執事だ。
その前はイブキの幼馴染だったこともあってイブキ専属の執事兼護衛だったが、急に異動願いを出してユツキのお付になったのだ。
身体能力も高く生まれつきの能力も相まって学校で実技の成績も非常に高かった。
「ネオ?お前も来るのか?」
ルイスがキョトンとした顔で見る
「はい、やりがいのある仕事があると聞いて」
猫のように目を細め八重歯を見せて笑うネオの後ろでイブキが酷く不機嫌な様子で下を向いていた。
「旅の道中何かと人手がいるでしょう。本人の希望もありますし、是非連れていってください。」
「ネオなら気心も知れている、むしろ感謝したいくらいだ。」
ネオは頭を下げると荷馬車に荷物と共に乗り込んだ。
「ネオも一緒ですか?」
ユツキの不思議そうな声が中から聞こえてきた。
「それでは行ってまいります」
ルイスが再度頭を下げ荷馬車に乗り込んだ。
馬車が発車すると中からユツキが軽く手を振っていた。
手を振り返し荷馬車を見送り見えなくなったところでアレクサンダーがため息を着く。
「いざ嫁に行ってしまうと思うと、寂しいなぁ」
「あなた、まだ婚約もしていないじゃないですか」
「それはそうなんだがな?」
アレクサンダーとオリエが仲睦まじく会話している中イブキはさっさと部屋に戻ってしまった。
「どうしたんだ?」
「拗ねてるだけよ。時期に直るわ」
オリエがにこにこと笑ってイブキの背中を見送っていた。

「どうして、この旅に?」
ユツキが隣に座ったネオに話しかける
「だって、ユツキ様の方が危ない目に遭うじゃないですか。イブキ様は自分でなんでも出来るし俺は居なくてもいいかなーって思っちゃったんですよ。」
「それ、兄様には言ったんですか?」
「言ってないです。」
サラッと言い放つユツキは頭を抱える
「だから兄様あんなに私に貴方のこと聞いてきたんですね…合点がいきました。」
ユツキが呆れたように言った。
「帰ったら兄様と必ず話し合ってくださいね?なにかすれ違いがあるように見えます。」
「珍しく鋭いですね」
「ネオ?」
「はい、すみません。分かりました。」
ネオはその場でひれ伏した。
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