みんなあたまがおかしいようです

尾持ち

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わかりやすいよ

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「あいつが勝手にやったことなのに」
「野分さやかが、勝手に告白して勝手に傷ついて、勝手に飛び降りただけだ」

 薄情と思うかもしれないけど、それがクラスの総意だったはずだ。その思いからみんな教師に教えなかったに違いない。もうこれ以上、場を引っ掻きまわされたくなかった。このまま、片思いの相手にふられたことが原因ということにしておけば、あの飛び降りは思春期特有の不安定なメンタルが引き起こしたものということになる。つまり全て、本人のせいになるというわけだ。

 私たちが自殺の片棒を担いだことにはならない。これ以上変な詮索をされることもない。頭のおかしな生徒が一人混じっていただけの、気の毒なクラスとしていずれは認識されるだろう。そうすれば、好奇の目も収まる。
 
 そう思っていた。そう思いながら、こんなに冷徹なことを考えているのは私だけなんだろうとも考えていた。

「だから、君にとっては割と意外だったんじゃない?」
「何がですか?」
「君以外の子たちも、先生に告げ口というか、証言しなかったことについてさ」
「そう思ってるように見えますか」
「自分は言うつもりはないけど、どうせ他の子が警察に話してしまったんだろうな、って当時は思ってたんでしょ」

 先輩の指摘通りだった。
 私たちは、生徒同士お互いに把握できないようにか、バラバラな時間にそれぞれ一人ずつ聞き取りが行われていた。登校してすぐとか、昼休み中とか、部活中に先生に呼び出されて、という風だ。だから私は、クラス全員に聞き取りしたのか、一人何回されたのか、ということさえも知らない。

「だから、大多数は口をつぐんだとしても、罪悪感に負けた数人が、打ち明けちゃうだろうなと思ってた。でも、先生は未だに言及してこないし、捜査は落ち着き始めている。予想に反して、誰もあのことを話さなかったんだ。口裏を合わせていたわけでもないのに」

 先輩が心を読んだように言う。

「分かりやすいよ、君」

 私の目を見つめて、彼が言う。その視線を受けて、私は無意識のうちに自分の顔を触っていた。

「無口だけど、顔に出るね」
「はじめて言われました」
「菜乃ちゃん」
「はい」
「ほら、嫌そうな顔!」

 先輩は笑った。どうやら私は、この人に名前を呼ばれるだけで嫌そうな顔になっていたらしい。

「菜乃ちゃん菜乃ちゃん菜乃ちゃん」
「……」
「あはははは」
 
 楽しそうにしているのは気に食わなかったが、好きにさせることにした。機嫌良さそうにしていてくれる方が、私としてもありがたかった。私はこの場についてから、「早くこの場から解放されたい」という思いからやり過ごしていた。けれどそこに、「貌鳥先輩を怒らせたくない」という気持ちが無意識のうちに加わっている。
 早くここからいなくなりたい。そしてできれば、この男を刺激せずに事を終わらせたい。私の頭にはそればかりあった。
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