みんなあたまがおかしいようです

尾持ち

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ふつうは

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「私のクラスに限らず、他の高校生だってみんなそういうもんなんじゃないですか?みんな何となく『普段一緒にいても嫌な思いをしそうにない子』とくっつきあってるだけで。本当に仲良くしたいと思える子が校内にいる人ってそうそういますかね。通話でもSNSでも、外に『友達』を作りに行ける手段はいっぱいあるんですから」
「えー、怖いなあ。現代っ子。ジェネレーションギャップだよ」
「一つしか違わないでしょう、先輩は」
「俺たちの年代で一年差は遠いよ」

 でも、と、口元にうっすらと笑みを浮かべたまま彼が続ける。

「俺が今までの学校生活で浮いてた意味、分かっちゃったかも」
「そりゃ、先輩は暴行事件まで起こしたんですから」
「いや、それ以前の問題として」
 
 それ以前の問題? 私は頭に疑問符を浮かべながら先輩を見た。

「俺はさ、中学時代からそうなんだけど、陰でひそひそ言われるとか、こいつ本当は俺のことが好きじゃないのに無理してまとわりついてるんだろうなって分かると、すぐに口に出してたんだよね。俺のこと変な風に触れ回ってるよねとか、無理してくっついてこなくていいよとか。俺からすると何であんな風に、楽しくもなさそうなのにモダモダくっつきあって興味もなさそうな俺のことについてお喋りしてるんだろうってずっと不思議だったんだけど、それもあいつらにとってはさ」
「ただの社交だったんですよ」

 言い切って欲しそうだったので、私が言葉尻を受け継いであげた。

「はあーーー」

 先輩が自身の腕の中に顔をうずめる。その仕草で、彼の茶髪のてっぺんにある、つむじが私の視界に入った。
 他人のつむじを見たのって、かなり久しぶりかもしれない。頭の片隅でそう思った。

「先輩は求めすぎだったんじゃないですか? 今の高校生で、『かけがえのない仲間』みたいなのを校内のおともだちに求めてる人なんていませんよ」
「うん……」
「みんなどうでもいいことをその場しのぎに口にして、何となく学校生活をやり過ごせたら満足なんです」
「それ分かってたら、停学にならなかったと思う?」
「いや、どうでしょうねそれは」

 日々のフラストレーションが、そのまま暴行や非行に走る先輩には無理なんじゃないだろうか。人としてのストッパーが外れてるんだから。
 ただ、彼に対して、というよりも彼と同じ種類の人間には少し同情してしまう。今の時代の学校生活の送り方が、性に合っていない人は彼以外にも大勢いるだろう。平成で高校生をやっていたらもう少し違った青春を送れていたのかもしれない。

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