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ほんとう
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「あっけないね」
貌鳥先輩が言った。
本当に、その通りだと思う。あんな突発的な犯行で、どうして成功してしまったのか。それに、自殺だと処理されかけている。
でも、仕方ないのかもしれない。
憧れの先輩にふられた、という決定的な出来事が直前にあったし。クラスメイトにしても、あの黒板の落書きもあったからと、水面下で自殺に納得しているような空気があった。
「バレるかもって、ヒヤヒヤした?」
「いいえ」
「自信満々だね」
「というより、現実味が無さ過ぎて、自分のことのように思えなかったのかもしれません」
そこで、先輩も同じようなことを考えていたのか、ふと思いついたような顔でこう口にした。
「そういえば、あの黒板……」
「私がやったんですよ」
「うそお」
これも予想しているものかと思っていたら、本当に驚いた顔をしてまじまじと私を見返している。「どうやってやったのさ」と半信半疑な風に聞いてきた。
「前日の夕方に書いておいたんですよ」
「嘘。難しくない?」
「当日の朝に書くよりはずっと楽だと思いますよ」
だって、下校時刻直前にまでなると、校舎の中に残っている生徒なんてほとんどいなくなる。一部の運動部が、校庭や部室棟に残って活動しているくらいだろう。私はほとんど人目を気にせずのびのびと黒板にお絵描きができた。
「そうはいっても、書いた日の夜から朝になるまでの間、巡回の警備員とかに見つかるよね?」
「見つかりはしたけど、微笑ましいドッキリだと思って放置したんじゃないですか?」
誰も登校していないくらい早朝に、相手を呼びだして告白する友達を想って、こっそり応援の言葉を残しておいた。
悪意のあるメッセージだという先入観が無ければ、そう思って残しておくのかもしれない。そのお友達の告白が終わったら、すぐに消すつもりのものだろうと。
まさかクラスの大多数が登校してきても、消されずに見世物のように晒されてたなんてその人は思ってもいなかっただろう。
「それに、私としては巡回の人や先生に見つかって、消されても仕方がないくらいの気持ちで書いてました。絶対に成功させよう、みたいに張り切ってませんでしたもん。そもそもとして、あんなクラス中に知られるような、大規模な悪戯にするつもりはありませんでした」
「嘘くさいなあ。じゃあ君としてはどんな風になるのが理想だったの?クラスメイトに見られるのは想定にあったんでしょ?」
「見られるにしても、最初に登校してきた二~三人に見てもらえたら良い方だなと考えていました」
その数人に見られた後に、そのうちの誰かがさやかのためを思って(もしくはクラスにいじめまがいのことがあると露見させたくなくて)消すだろうと想定していたのだ。
「一番初めに登校してきた一人が、消してしまっても全然良かったんです。私は一人か二人にでも、見てもらえたらいいと思ってました」
「そりゃ、なんで?」
「このクラスに最低一人は、あの子に悪感情を持ってる人がいると他のクラスメイトに教えたかったんです」
こんな大がかりな嫌がらせを仕掛けるくらい、あの子を嫌ってる生徒がこのクラスにいると、そう数人に匂わせるだけでよかったのだ。水面下でその気持を吐露できさえできればもう満足だった。
ここまでで分かるように、ほとんど私個人の憂さ晴らしのつもりだったのだ。そこからいじめに発展するとか、そもそも本人に知られるまでいくなんて思ってもみなかった。それなのに。
「思ったより大騒ぎになっちゃったんだ?」
「ええ、まあ」
「まさか登校ラッシュを過ぎても、消されずに残されてるなんて想定に無かった?」
「はい」
「それは君の想定違いのせいっていうよりも、思っていたよりもあの子がみんなに嫌われてた、の方が原因としては正しいのかなあ」
本当に、それに関しては私の想定外だった。
正直に打ち明けると、彼女を殺した後より、黒板事件の後の方が、私はビクビクしていたと思う。指紋を拭きとってもいないし、目撃例だって聞き取りをすればあるかもしれない。だから、クラス中が内密に処理しようと考えていたことに、心底ほっとしたのだ。
貌鳥先輩が言った。
本当に、その通りだと思う。あんな突発的な犯行で、どうして成功してしまったのか。それに、自殺だと処理されかけている。
でも、仕方ないのかもしれない。
憧れの先輩にふられた、という決定的な出来事が直前にあったし。クラスメイトにしても、あの黒板の落書きもあったからと、水面下で自殺に納得しているような空気があった。
「バレるかもって、ヒヤヒヤした?」
「いいえ」
「自信満々だね」
「というより、現実味が無さ過ぎて、自分のことのように思えなかったのかもしれません」
そこで、先輩も同じようなことを考えていたのか、ふと思いついたような顔でこう口にした。
「そういえば、あの黒板……」
「私がやったんですよ」
「うそお」
これも予想しているものかと思っていたら、本当に驚いた顔をしてまじまじと私を見返している。「どうやってやったのさ」と半信半疑な風に聞いてきた。
「前日の夕方に書いておいたんですよ」
「嘘。難しくない?」
「当日の朝に書くよりはずっと楽だと思いますよ」
だって、下校時刻直前にまでなると、校舎の中に残っている生徒なんてほとんどいなくなる。一部の運動部が、校庭や部室棟に残って活動しているくらいだろう。私はほとんど人目を気にせずのびのびと黒板にお絵描きができた。
「そうはいっても、書いた日の夜から朝になるまでの間、巡回の警備員とかに見つかるよね?」
「見つかりはしたけど、微笑ましいドッキリだと思って放置したんじゃないですか?」
誰も登校していないくらい早朝に、相手を呼びだして告白する友達を想って、こっそり応援の言葉を残しておいた。
悪意のあるメッセージだという先入観が無ければ、そう思って残しておくのかもしれない。そのお友達の告白が終わったら、すぐに消すつもりのものだろうと。
まさかクラスの大多数が登校してきても、消されずに見世物のように晒されてたなんてその人は思ってもいなかっただろう。
「それに、私としては巡回の人や先生に見つかって、消されても仕方がないくらいの気持ちで書いてました。絶対に成功させよう、みたいに張り切ってませんでしたもん。そもそもとして、あんなクラス中に知られるような、大規模な悪戯にするつもりはありませんでした」
「嘘くさいなあ。じゃあ君としてはどんな風になるのが理想だったの?クラスメイトに見られるのは想定にあったんでしょ?」
「見られるにしても、最初に登校してきた二~三人に見てもらえたら良い方だなと考えていました」
その数人に見られた後に、そのうちの誰かがさやかのためを思って(もしくはクラスにいじめまがいのことがあると露見させたくなくて)消すだろうと想定していたのだ。
「一番初めに登校してきた一人が、消してしまっても全然良かったんです。私は一人か二人にでも、見てもらえたらいいと思ってました」
「そりゃ、なんで?」
「このクラスに最低一人は、あの子に悪感情を持ってる人がいると他のクラスメイトに教えたかったんです」
こんな大がかりな嫌がらせを仕掛けるくらい、あの子を嫌ってる生徒がこのクラスにいると、そう数人に匂わせるだけでよかったのだ。水面下でその気持を吐露できさえできればもう満足だった。
ここまでで分かるように、ほとんど私個人の憂さ晴らしのつもりだったのだ。そこからいじめに発展するとか、そもそも本人に知られるまでいくなんて思ってもみなかった。それなのに。
「思ったより大騒ぎになっちゃったんだ?」
「ええ、まあ」
「まさか登校ラッシュを過ぎても、消されずに残されてるなんて想定に無かった?」
「はい」
「それは君の想定違いのせいっていうよりも、思っていたよりもあの子がみんなに嫌われてた、の方が原因としては正しいのかなあ」
本当に、それに関しては私の想定外だった。
正直に打ち明けると、彼女を殺した後より、黒板事件の後の方が、私はビクビクしていたと思う。指紋を拭きとってもいないし、目撃例だって聞き取りをすればあるかもしれない。だから、クラス中が内密に処理しようと考えていたことに、心底ほっとしたのだ。
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