みんなあたまがおかしいようです

尾持ち

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じょうぜつ

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「はあ。ドライだねえ。そこらへんもっとロマンチックに語ってくれたら、感動的になりそうなのに」

 そうはいっても、私がこんな風に主張するのを先輩も薄々分かっていたんじゃないだろうか。学園モノのドラマみたいに、私はあの子を信じてるんです!と鬼気迫る顔で言うタイプでもない。自分のことながら、そう思う。

「まあ、菜乃ちゃんらしいといえばそうだけど」
「そうですか」
「これはぶっちゃけただの雑談なんだけどさ」

 と、前置きしたうえで先輩が言う。

「だからあの日の放課後に、女の子の飛び降り死体……いや、死体未満が見つかったって聞いた時は、君のことだと思ったんだよね」
「さやかにああ言われたからですか?」
「そう!」
「有言実行で、脅迫通りに私を殺したと」
「そうそう」

 相槌を打つ彼の様子はなぜか楽しげだ。ようやくノってきたじゃん、とでも言いそうなくらいである。

「それなのに、警察が言うには俺に告白してきた方が死んで……じゃなくて、意識不明の重体だって言うんだから驚きだよね」
「そうでしょうね」
「俺はね、まさかの入れ替わりとか、あの子が君に罪をなすりつけるために別人の死体を偽装した、みたいなことまで想像したんだけど、真相が分かってみると拍子抜けしちゃったな」
「探偵小説みたいな発想ですね」
「それくらいは疑わない?そりゃ、犯人の君からすると何もかも分かってたようなもんだろうけどさ」
「そうでもありませんよ」

 私は否定した。実際、私は何も分かっていなかった。あの子が私を殺すと言い出していたことも、先輩のことも。
 今になって思うが、第三者からは一番疑われていただろう先輩のことを、真犯人の私がその内情をほとんど知らないままでいたのが奇妙にさえ思える。彼について分かっていたのは、その噂と停学処分を受けたという事実だけで、その人柄も、どんな風に話すのかも今日に至るまで私は一切知らなかった。

 巻き込まれただけの彼が加害者だと疑われていたことについて、申し訳ないな、と当時の(つまりしらばっくれている時の)私は思っていたが、その一方で、彼ならうまくやり過ごすだろう、という確信も何故だかあったのを覚えている。なにせ、停学一年の男だ。

「分からないからこそ、先輩に聞いてみたいことがあるんですけど」
「えー、なに?何でも聞いてよ」

 先輩が、乗馬の真似事みたいに座ったまま椅子の脚を浮かせる。ゆりかごみたいに、不規則な動きで前に後ろにと彼の体が傾いていた。上機嫌だな、と思った。別に、どうでもいいんだけれど。

「その音声を、早いうちから警察に提出していれば、長々と疑われずに済みましたよね?」
「おっと」

 一瞬、彼がバランスを崩して後ろに倒れこみそうになる。それを寸でのところで押さえ込んだ。

「そうしていれば先輩は、むしろ被害者扱いされていたと思うんですけど」
「急に饒舌になったね」
「知りたいことがあればちゃんと声に出して聞きます」
「じゃあ知りたいことも無ければ俺とは雑談もしたくないのかな」
「……」
「だから、黙んないでよ。ああ、ここで会ってすぐの時にも同じようなこと言ったっけ?そういう風に黙られると俺がいじめてるみたいに見えるとか何とか」
「さあ」

 でも、いじめてるのはそう間違いでもないだろう。なにせ彼は、私と推理ごっこをしている間、あの録音音声についてずっと存在を明かさずにいたのだから。あれを早々に匂わせていたら、もっと早いうちから私に自白させることができたんじゃないだろうか?
 いや、彼からすると、確実に私から聞き出せるまで、泳がせたかったのか?なんにせよ、犯人じゃないふりをして大人しく彼の話を聞いていた私は、ずいぶん滑稽に見えたはずだ。
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