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本編
8。ーお風呂
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飛んで行きそうな意識を必死で食い止めた。
先生はシャワーと言ったけれど、すぐには起き上がれないわたしを見て、湯船にお湯を溜めに行ってくれた。隣りのバスルームから、滝のような水の音がする。
「立てそうか?」
「は、はい……」
腕の力を使って上半身を起こした。ただ思うように身体が起き上がらない。
「まったく……無理なら無理と言うんだ。講義でもそうだが、きみは頑張り過ぎだ」
先生はそう言うと、いきなりわたしを抱き上げた。
はっとする。先生はわたしがわたあめくらいの重さしかないかのように、軽々しく持ち上げたから。
バスルームまで運んでもらって、溜まったお湯に入れてもらう。
先生は立ち去ろうとした。
「先生は……?」
「……入ってもいいが」
そう言って、先生は一度戻って服を脱いだ。
一緒にお風呂って、果敢なことを言っちゃったかな……
わたしは後ろを向いて、ブクブクと湯に身を沈めた。だけどそれよりもすごいことしちゃったしな。
それより、一体これはどういう関係なのだろう。
教師と生徒? ううん、そういう二人は、一緒にお風呂に入ったりはしない。
じゃあ、恋人同士? これも違う。愛の言葉も、交際しようといった意思表示もないから。
部屋に入ってからの言動を総合しても、先生は愛情たっぷりに接してはくれない。だけど妙なところで優しさを感じる。先生に嫌われてはいなさそうだけど、好かれているのかはわからない。それに、自分が先生をどう思っているかも、確かではなかった。
もちろんずっと尊敬はしているけれど、先生本人を、よくは知らないのだ。
水の音がして振り向くと、先生が湯船に腰を沈めていた。先生は一度肩まで浸かって、濡れた手を出して髪をかきあげた。
「先生はなにを考えて……いるんですか?」
おかしな口調になってしまった。前半まで、友だちに話しかけるときみたいな言い方だったから。宙を見ていた先生の視線が、わたしに定まった。
「二人でいるときは敬語でなくて構わない」
先生が再びお湯に腕を沈めたとき、小さな水しぶきがした。
「それで、何を考えている、とは?」
築島先生は、少し壁を作ったような言い方をした。質問の意図を理解しながらも、それを汲み取って答えてはくれなさそうな。
踏み込んではいけない感じがした。少なくともまだ……
だからわたしはかぶりを振った。
「近づいてもいい?」
「ああ、いいよ」
水中を移動して近づき、先生の胸に頭を預けた。
聞きたいことがたくさんあるのに、言葉が出てこない。
不思議で、分からないことがたくさんあるのに……
築島先生は腕を回して、わたしの頭を撫でてくれた。
でもいいんだ、いまが心地いいから。
考えるのは、もう少し後にしよう。
* * *
先生はシャワーと言ったけれど、すぐには起き上がれないわたしを見て、湯船にお湯を溜めに行ってくれた。隣りのバスルームから、滝のような水の音がする。
「立てそうか?」
「は、はい……」
腕の力を使って上半身を起こした。ただ思うように身体が起き上がらない。
「まったく……無理なら無理と言うんだ。講義でもそうだが、きみは頑張り過ぎだ」
先生はそう言うと、いきなりわたしを抱き上げた。
はっとする。先生はわたしがわたあめくらいの重さしかないかのように、軽々しく持ち上げたから。
バスルームまで運んでもらって、溜まったお湯に入れてもらう。
先生は立ち去ろうとした。
「先生は……?」
「……入ってもいいが」
そう言って、先生は一度戻って服を脱いだ。
一緒にお風呂って、果敢なことを言っちゃったかな……
わたしは後ろを向いて、ブクブクと湯に身を沈めた。だけどそれよりもすごいことしちゃったしな。
それより、一体これはどういう関係なのだろう。
教師と生徒? ううん、そういう二人は、一緒にお風呂に入ったりはしない。
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部屋に入ってからの言動を総合しても、先生は愛情たっぷりに接してはくれない。だけど妙なところで優しさを感じる。先生に嫌われてはいなさそうだけど、好かれているのかはわからない。それに、自分が先生をどう思っているかも、確かではなかった。
もちろんずっと尊敬はしているけれど、先生本人を、よくは知らないのだ。
水の音がして振り向くと、先生が湯船に腰を沈めていた。先生は一度肩まで浸かって、濡れた手を出して髪をかきあげた。
「先生はなにを考えて……いるんですか?」
おかしな口調になってしまった。前半まで、友だちに話しかけるときみたいな言い方だったから。宙を見ていた先生の視線が、わたしに定まった。
「二人でいるときは敬語でなくて構わない」
先生が再びお湯に腕を沈めたとき、小さな水しぶきがした。
「それで、何を考えている、とは?」
築島先生は、少し壁を作ったような言い方をした。質問の意図を理解しながらも、それを汲み取って答えてはくれなさそうな。
踏み込んではいけない感じがした。少なくともまだ……
だからわたしはかぶりを振った。
「近づいてもいい?」
「ああ、いいよ」
水中を移動して近づき、先生の胸に頭を預けた。
聞きたいことがたくさんあるのに、言葉が出てこない。
不思議で、分からないことがたくさんあるのに……
築島先生は腕を回して、わたしの頭を撫でてくれた。
でもいいんだ、いまが心地いいから。
考えるのは、もう少し後にしよう。
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