人魚姫は鬼畜な王子様を短剣で刺さない

楓子(かえでこ)

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本編

12。お泊まり

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 ”肌触りのいいインナーを持ってきてほしい”

 築島先生に、お泊りするに当たってなにか持っていくものがあるか尋ねたら、そう言われた。
 とりあえずはこれでいいかなと、家にあるモコモコしている部屋着をカバンに入れた。リクエストがセクシーなインナーでなかったことはありがたい。

「特に意味があったわけじゃない。うちに女性がくつろげる服はないし、どうぜ持参するなら肌触りが良いものがいいと思っただけだ」

 土曜日の昼。
 先生のお家に着いて、持ってきました、といって渡したら、ただわたしが着ればいいと思っただけだと言われた。
 わたしは早速着替えてくつろいだ。

「今日中に仕上げなくてはならない論文が一本あるんだ。きみは好きにしていて構わないが、理由がないときはなるべく近くにいてくれ」

 なるべく……
 発音に抑揚がなかったから、この単語がどちらにかかっているのか考えた。つまり、”理由がないときはなるべく”なのか、”なるべく近くにいる”なのか。

 わからなかったから、とりあえず先生の隣りに座った。
 そうしたら、築島先生はわたしを持ち上げて自分のあぐらのなかに置いた。どうやら、正解は”なるべく近くにいる”だったみたい。

 わたしを後ろから抱きしめて、先生はわたしの右肩に頭を乗せた。
 ドキッとした。
 先生は目をつぶって、息を吐いている。それがなんだか落ち着いているみたいで、わたしは心がほくほくした。


 * * *
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