人魚姫は鬼畜な王子様を短剣で刺さない

楓子(かえでこ)

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番外編

5。涙目の晩

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 帰宅して早速、築島は蛍を寝室に連れて行った。
 もう夕食も終えたし、あとは愉しむのみだ。

「せ、先生? その……あした、テストだし、」
「まだ十九時だ。二十二時には終わらせる。それに学会の資料が出来た以上、いつかはつけるんだ。諦めろ」
 
 彼女をベッドに寝かせ、丁寧に服を脱がせる。露わになった彼女の身体は、いつもより縮こまっていた。
「そう身構えなくても、いきなりつけたりはしない。三十分くらいは愛撫してやるよ」
 そういって、耳たぶから甘噛み始めた。
「ぁん……」
 首を通って、ゆっくりと下まで降りていく。まだつけられないと聞いて落ち着いたのか、蛍からは徐々に喘ぎ声が漏れた。
「いい声で鳴くじゃないか」
 相変わらず感度がいい。
 蛍の手を握りながら舐めていくと、彼女の身体は和らいだ。そのままへそまで降りていく。
「脚。自分で押さえてろ」
「は、はい……」
 握っていた彼女の両手を降ろし、自分で両膝の裏を持たせる。僕は下から彼女の腰を引っ張って、天井に向けさせた。
 そして彼女が好きなところを、皮の上から撫でた。
「やん……」
「先に、指で逝かせてやろうか。この後痛い思いをするんだから」
「んんっ」
 蛍はきゅっと目をつぶる。
 そしてしばらくすると、彼女は頭を起こした。
 不安そうに見ている。
「あんまり、こねこねしちゃ、だめ……」
 蛍は、なぜか駄目だと言った。これが好きなくせに……
「逝きたくないのか?」
「だ、だって……」
 そうか。逝くと、愛撫の時間が終わってしまうから。この子の先延ばしにしたがる癖は、なんとかしないとな。
 僕は手始めの仕置きとして、強くこね回した。
「ん……あ、そんなのぉ……、されたらっ、もう、」
 指で皮を剥いで、そこに唇を寄せる。
「ひゃあ……っ、ああっ、」
 吸うと、彼女はわかりやすく歓んだ。抱えた足をバタつかせる。
 指も入れてやるか。
 僕が中指の腹を上に向けて差し込むと、挿入も嬉しいらしく、離すまいと締め付けてきた。
 その後、僕が唇で突起を吸い取りながら、なかから腹部側を重点的に撫でると、蛍は腰を揺らしながら果てて行った——

 ちょうど三十分。
 時計を見て時間を確認し、そのまま時計が置いてあるサイドボードに歩んだ。そして引き出しの中からクリップを取り出す。
 それをひとつ、自分の人差し指につけて強度を確認した。指ではさほど痛くないが、これがもっと柔らかくて敏感な箇所なら果たして……

「はぁ、はぁ……せんせい……もう、ふつうにするっていうのは? なかに、ほしいよ……」
「悪くない誘い方だが、そんな程度では延期できないな」
 僕がベッドの傍に置いたものを見ると、蛍はこわばった。腫れ上がった乳首も見たいが、この怯える表情も捨てがたい。
「枕の下に手を入れろ」
 再度、蛍の上に跨る。
「両腕でひし形をつくるように……そうだ、そのままの姿勢でいろ」
 左胸からつけるか。
 僕は脂肪を寄せるように彼女の左胸を揉み、飛び出た乳首にクリップを近づけた。彼女もじっと自分の胸を見ている。怖いもの見たさか。
「いたっ」
 挟むと、早速小さな悲鳴が上がった。声もビジュアルも非常に良い。僕はそのままそれを引っ張ってやった。
「やぁ……ちくびっ、とれちゃうっ、」
「安心しろ、取れないから」
「ひゃう、あっ、やぁ、だめ、」
 蛍は顔を歪ませながら拒んだ。
 ああ、興奮する。
 たまらなくなって、一度彼女を抱きしめた。蛍の頭を抱えて、額に口付ける。
 下では、自分が脈打ってるのがわかる。彼女も言葉とは裏腹によく濡れていた。溢れてくる。
「あんっ、ああっ」
 彼女の乳首を引っ張りながら、彼女の恥丘にこすりつけて自分をなだめた。
 時間が経つごとに昂ぶっていく……

 そうだ。我を忘れる前に、右胸にもつけなくては。
 今度は右胸の突起に狙いを定めた。そこに唇を寄せ、くすぐり、吸い出して、完全に勃起させる。
 蛍がもがいている間に、不意打ちでこちらにもつけると、彼女はまた跳ね上がった。
「やぁぁあ!」
 僕は起き上がって、上から彼女を見下ろした。
 拒みながらも言われたように枕を握り続け、両胸にクリップをつけられ、開脚して僕に擦り付けられている彼女は、世界で最も可愛い生き物だと思う。
「かわいい……」
「ああっ、や、せんせ、うごかしちゃ、」
 また前のめりになって抱きしめた際に、僕がそこに触れてしまったらしい。
 どうやら付けっ放しだとまだ平気でも、動かすと痛いようだ。有益な情報を得た。

「はぁ、はぁ、はぁ……ゃん」
 僕は彼女の全身を弄り、さりげなく突起の付近を触って振動させては、彼女の反応を愉しんだ。
「ぁっ、いや……だめ、むい、やぁ、」
 僕が近くで刺激を加えれば加えるほど、彼女は激しく拒む。
「初めてここに来たときのことを覚えているか? あのときも、きみは今みたいに嫌々言っていた……その後何回も思い返して、射精したよ」
 彼女は、僕の話はもう聞こえていないようだった。首を左右に振りながら身悶えている。
 僕は本格的に彼女の上で動いた。潤滑油は留まることを知らずに溢れてくるから、いつまででも擦っていられる。
 気持ちいい……
 どうせ一回じゃ収まらない。このまま腹に出してしまおうか。
 いや、それとも……
「こっちにもつけてみようか」
「…………へっ?」
 意識が半分飛んでいた蛍が、次第に何のことか理解すると、途端に焦り出した。
「いやっ! 嫌っ。だめっ、それはほんとだめっ」
「そんなに嫌がられたら……つけるしかないな」
 またひとつクリップを取ると、容赦なく、彼女の最も敏感な突起に挟んだ。
「あひっ?!」
 蛍は、逝った……
 仰け反って、ダラダラに溢れさせながら。訳も分からずに逝ったのだ。
 ああ、もう駄目だ——
 こちらは我慢の限界で、これからやりたかったことすべて投げ捨てて、一息で彼女に入った。
「んふぅぅぅ」
 めちゃくちゃに動いた。
 貪った。
 彼女のだらしなくなった表情も、乱れ狂った喘ぎ声も、腫れ上がった突起も。どれも僕をどうしようもなく駆り立てる。
「舌を出せ」
 自分のと絡めて、ぐしゃぐしゃに吸い取る。
 もっと奥まで入れたい。入り込めるだけ入りたい。
 僕はギリギリまで腰を引いて、打ち付けた。その長いストロークを早いテンポで繰り返す。突く度に愛液が掻き混ざり、泡立った。

「あんっ、あっ、やぁっ……あんんんっ」
 唇を離すと、鳴き声はさらに響き渡った。
「気持ちいいのか?」
「ふぇっ、はぁ……きもち、いいっ……ぁんっ」
「蛍は乳首が気持ち良くて、逝っちゃうんだもんな」
「ちがうぅぅ、ちがうのっ。で……でもっ、」
「でも?」
「……ぃ、いっちゃいますっ」
「じゃあ乳首を触ってあげないとな」
「やぁっ、ちくびらめっ、らめなのぉ」

 もっと虐めたい。調教したい。汚したい。
 興奮が最高潮に達した。

「蛍……今日は凄いっ……すごく上がってくる」
 無我夢中で動いた。止まらなかった。
 蛍が叫びながら締め付けたのを境に、僕もすべてが飛んだように果てていった。


 * * *


「痛かったぁ、先生のばかばかばか」
「ごめん、ごめん」

 あの並外れた性感が迫ってきた後は、さすがに倒れこんだ。
 二十分は余韻に浸り、蛍よりは早く回復した僕は、簡単に後始末を終えてベッドに戻った。

「赤くなっちゃったもん」
 彼女は自分でそこを覗くと、まるで熱いものを冷ますようにふーふーと息を吹きかけた。
「悪かった、悪かった」
「もお」
「代わりに、薬。塗ってやろうか」
「うん……あ。やっぱり自分で塗る」
 蛍はいつもよりえらく早く僕の企みに気が付いた。
「残念」
 彼女はベッドの上にペタンと座って、渡してやった薬を懸命にそこに塗った。
「すごく興奮した……もう訳が分からないほど」
 横になりながらそういうと、蛍は耳まで赤くなった。
 実はいまのその様を見ると——また興奮するのだが。約束の時間になってしまったため、大人しくしている。
 塗り終えた彼女は僕の視線に気づくと、恥ずかし気に反対を向いて横になった。だから僕は彼女を強制的に仰向けにした。
「な、なぁに」
 なるべく負担がかからないように覆い被さる。彼女の肩の下に腕を差し込んで、包み込んだ。
 正面で向き合う。
 先ほどまで半泣きだった大きな目は、いつもの輝きを取り戻していて。野蛮なほど吸ったはずの唇も、もういつものように艶やかだった。
 彼女の顔にかかった前髪をそっと傍に寄せる。
「好きだよ」
 僕がそういうと、彼女は目を見開き、そして逸らした。
「ず、するいもん」
 照れてる、照れてる……
 彼女の下唇を、優しく舐めた。頭の下に手を入れてさらに近づくと、彼女は腕を首に絡めてきた。
「でも……もう一回言って」
「好きだよ。蛍のことが、何よりも好きだ」
 蛍は今度の方が、わかりやすく喜んだ。

「今晩はずっと抱きしめていてね」
「わかった、ずっと抱きしめている」

 彼女の胸元を見ると、あと何回かしたくなるのは事実だ。
 だけどせっかくいまが幸せだから。このまま幸福感を抱えて眠りにつこう……


 * * *
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