33 / 74
推薦図書
しおりを挟む
僕以外誰もいない五畳のアパート、真夜中、パソコンモニタの明かりだけが僕の顔を照らしている。睡眠薬を飲んだけれど眠たくない。毎日、朝方に寝て昼に起きて読書をして小説を書いて、金が無いから一日一食ご飯を食べて、そんな生活を繰り返していたら、何がおかしくて何がおかしくないのかわからなくなってきた。
だから僕はものは試しだと、呟いてみた。
「僕は頭がイカれてるのかな?」
そうすると神様が答えた。
「貴方は頭がイカれていますよ」
しかしもう一人の神様が答えた。
「貴方は頭がイカれていませんよ」
わけがわからなかった。だから僕は聞いてみた。
「どっちなんだよ?」
しかし二人の神様は答えてくれなかった。だから僕は眠れない深夜二時に自問自答した。僕の頭はイカれてるのか、イカれてないのか。いや、もっと違う考え方をしなければ駄目だ。僕は頭がおかしいのか、おかしくないのか、おかしいふりをしているのか、おかしくないふりをしているのか。当然、そんなことを考えても答えなんて出るはずがない。馬鹿らしい、と煙草に火をつけ、煙を吸って吐いた。このアパートに住んで三年、それぐらいだろうか、白い壁はヤニを吸収して黄色く変色している。床は鼠色のカーペット敷きだが、この間酔っぱらってワインをこぼしたから、一部紫色の染みが出来ている。ただ酔っぱらっただけじゃなく、アルコールと睡眠薬でラリってたから、記憶がない。
「うーん、やっぱり僕は頭がおかしいのかな」
と呟いたが、誰も答えてくれないので、仕方なくキーボードを叩いた。僕は頭がおかしいのか、と検索したのだ。八十二万三千件ヒットした。世の中にはこんなにも自分の頭がおかしいのかと疑っている人がいるんだ。僕は少し安心した。僕だけじゃなかったんだ!
しかし待てよ……。自分の頭がおかしいのかと疑っている人はたくさんいるけれど、僕の頭がおかしいのか、おかしくないのか、おかしいふりをしているのか、おかしくないふりをしているのか、そうやって混乱している人は一体どれほどいるのだろうか? ……五十九万二千件ヒットした。そうか、世の中にはこんなにも混乱している人が多いのか。僕は少し安心した。僕だけじゃなかったんだ!
そうするとまた神様の声が聞こえてきた。
「真理に近づきましたね」
僕は訊ねた。
「真理に近づくとどうなるの?」
神様は言った。
「九十九パーセントの確率で脳みそが破壊され死に至ります」
「ワオ!」
「一パーセントの確率で神様になれます」
「ワオ!」
僕は真理に一歩近づいた。しかしそれは、死に一歩近づいたともいえる。僕はまた神様に訊ねた。
「神様になったら何でもしていいの?」
すると隣の部屋から女性の絶叫が聞こえた。そしてドアが音を立てて開き、バタバタと階段を降りて行く足音が聞こえた。
僕はいつの間にか眠っていた。
そして次の日の昼、何となくテレビでニュースを見ると、僕の住んでいるアパートで殺人事件があったと報道されていた。犯人はすぐに逮捕された。山崎信一郎信定という名前の男で、髪の毛と髭がぼさぼさに伸びており、一見不潔そうに見えるその人物こそ、真理に近づいて神様になった男だと僕は悟った。そして殺された人の写真が映し出された。深夜に聞こえた女性だろうと思っていたら、なんと僕だった。僕は神様に殺されたのだ。という事は、ここは一体どこなんだ……?
だから僕はものは試しだと、呟いてみた。
「僕は頭がイカれてるのかな?」
そうすると神様が答えた。
「貴方は頭がイカれていますよ」
しかしもう一人の神様が答えた。
「貴方は頭がイカれていませんよ」
わけがわからなかった。だから僕は聞いてみた。
「どっちなんだよ?」
しかし二人の神様は答えてくれなかった。だから僕は眠れない深夜二時に自問自答した。僕の頭はイカれてるのか、イカれてないのか。いや、もっと違う考え方をしなければ駄目だ。僕は頭がおかしいのか、おかしくないのか、おかしいふりをしているのか、おかしくないふりをしているのか。当然、そんなことを考えても答えなんて出るはずがない。馬鹿らしい、と煙草に火をつけ、煙を吸って吐いた。このアパートに住んで三年、それぐらいだろうか、白い壁はヤニを吸収して黄色く変色している。床は鼠色のカーペット敷きだが、この間酔っぱらってワインをこぼしたから、一部紫色の染みが出来ている。ただ酔っぱらっただけじゃなく、アルコールと睡眠薬でラリってたから、記憶がない。
「うーん、やっぱり僕は頭がおかしいのかな」
と呟いたが、誰も答えてくれないので、仕方なくキーボードを叩いた。僕は頭がおかしいのか、と検索したのだ。八十二万三千件ヒットした。世の中にはこんなにも自分の頭がおかしいのかと疑っている人がいるんだ。僕は少し安心した。僕だけじゃなかったんだ!
しかし待てよ……。自分の頭がおかしいのかと疑っている人はたくさんいるけれど、僕の頭がおかしいのか、おかしくないのか、おかしいふりをしているのか、おかしくないふりをしているのか、そうやって混乱している人は一体どれほどいるのだろうか? ……五十九万二千件ヒットした。そうか、世の中にはこんなにも混乱している人が多いのか。僕は少し安心した。僕だけじゃなかったんだ!
そうするとまた神様の声が聞こえてきた。
「真理に近づきましたね」
僕は訊ねた。
「真理に近づくとどうなるの?」
神様は言った。
「九十九パーセントの確率で脳みそが破壊され死に至ります」
「ワオ!」
「一パーセントの確率で神様になれます」
「ワオ!」
僕は真理に一歩近づいた。しかしそれは、死に一歩近づいたともいえる。僕はまた神様に訊ねた。
「神様になったら何でもしていいの?」
すると隣の部屋から女性の絶叫が聞こえた。そしてドアが音を立てて開き、バタバタと階段を降りて行く足音が聞こえた。
僕はいつの間にか眠っていた。
そして次の日の昼、何となくテレビでニュースを見ると、僕の住んでいるアパートで殺人事件があったと報道されていた。犯人はすぐに逮捕された。山崎信一郎信定という名前の男で、髪の毛と髭がぼさぼさに伸びており、一見不潔そうに見えるその人物こそ、真理に近づいて神様になった男だと僕は悟った。そして殺された人の写真が映し出された。深夜に聞こえた女性だろうと思っていたら、なんと僕だった。僕は神様に殺されたのだ。という事は、ここは一体どこなんだ……?
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
虚無・神様のメール・その他の短編
れつだん先生
現代文学
20年間で書き溜めた短編やショートショートをまとめました。
公募一次通過作などもあります。
今見返すと文章も内容も難ありですが、それを楽しんでいただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる