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魔の巣窟を愛の巣窟にするために
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「須藤課長のプラス要素とマイナス要素もひっくるめて、精査したいと思ったんです」
「前の俺は、マイナス要素のほうが圧倒的に多いと思いますけど。とはいえ今の俺も、同じようなものですが……」
「充明くん、約束してください」
私の告げるセリフを強く意識させるために、あえて名前呼びにした。
「約束?」
「自分をそうやって卑下しないでください。充明くんは自分が思う以上に、本当に格好いいんです。自信を持てば性格だって、今よりも明るくなっていきますよ」
須藤課長は私のお願いに、何度か目を瞬かせながらきょとんとする。
「充明くんが仕事してる姿が格好いい! すっごく素敵、イケメン! それからそれから――」
「やめてください! 恥ずかしすぎて、どうしていいかわからなくなります!」
須藤課長は真っ赤になってる顔を両手で覆い隠し、小刻みに体を震わせた。まるで小動物がプルプル震えているように見えるそれに、笑いだしそうになる。
「雛川さん、俺をからかっているんですか?」
「充明くんが約束を守ってくれるなら、こうして傍で応援しようかなぁと思いまして」
「へっ?」
顔を覆っていた手が、力なくおろされる。吊り上がり気味の瞳が、信じられないものを見るように私の顔を凝視した。
「ついでに充明くんのはじめても、ぜーんぶいただいちゃおうかなぁと」
「ええっ!? それってあの――」
須藤課長は焦った表情で言いながら、なぜか後ずさりして逃げようとする。
「ちなみに、ファーストキスはいただいてます」
「雛川さんと俺がっ! もぅそんなことをしてっ! うわぁ……」
恥ずかしそうに口元を押さえる姿は、どこか女のコに見えなくもない。
「約束を守る契約、今すぐここでしてほしいって言ったら、してくれますか?」
純情上司が実行するかわからなかったけれど、自分の唇に指を差したら、すでに誰もいないというのに、首を動かして辺りを見渡す。しっかり者の彼らしい行動に、思いっきり吹き出してしまった。
「須藤課長そんなことしていたら、午後の仕事がはじまっちゃいますよ~」
「すっ、すみませんっ!」
信号待ちの車の中でしたときは、堂々とキスしたのに、今の須藤課長は震える両手で私の肩を抱き寄せて、ゆっくり顔を近づけてから優しく唇を重ねる。
ぎこちないキスは、数秒で終わったのだけれど――。
「俺は雛川さんが好きです。君への気持ちをもう二度と忘れないように、大事に想っていきます」
抱きしめながら告げられた須藤課長の言葉を、嬉しさをかみ締めつつ、きちんと受け止めたのだった。
「前の俺は、マイナス要素のほうが圧倒的に多いと思いますけど。とはいえ今の俺も、同じようなものですが……」
「充明くん、約束してください」
私の告げるセリフを強く意識させるために、あえて名前呼びにした。
「約束?」
「自分をそうやって卑下しないでください。充明くんは自分が思う以上に、本当に格好いいんです。自信を持てば性格だって、今よりも明るくなっていきますよ」
須藤課長は私のお願いに、何度か目を瞬かせながらきょとんとする。
「充明くんが仕事してる姿が格好いい! すっごく素敵、イケメン! それからそれから――」
「やめてください! 恥ずかしすぎて、どうしていいかわからなくなります!」
須藤課長は真っ赤になってる顔を両手で覆い隠し、小刻みに体を震わせた。まるで小動物がプルプル震えているように見えるそれに、笑いだしそうになる。
「雛川さん、俺をからかっているんですか?」
「充明くんが約束を守ってくれるなら、こうして傍で応援しようかなぁと思いまして」
「へっ?」
顔を覆っていた手が、力なくおろされる。吊り上がり気味の瞳が、信じられないものを見るように私の顔を凝視した。
「ついでに充明くんのはじめても、ぜーんぶいただいちゃおうかなぁと」
「ええっ!? それってあの――」
須藤課長は焦った表情で言いながら、なぜか後ずさりして逃げようとする。
「ちなみに、ファーストキスはいただいてます」
「雛川さんと俺がっ! もぅそんなことをしてっ! うわぁ……」
恥ずかしそうに口元を押さえる姿は、どこか女のコに見えなくもない。
「約束を守る契約、今すぐここでしてほしいって言ったら、してくれますか?」
純情上司が実行するかわからなかったけれど、自分の唇に指を差したら、すでに誰もいないというのに、首を動かして辺りを見渡す。しっかり者の彼らしい行動に、思いっきり吹き出してしまった。
「須藤課長そんなことしていたら、午後の仕事がはじまっちゃいますよ~」
「すっ、すみませんっ!」
信号待ちの車の中でしたときは、堂々とキスしたのに、今の須藤課長は震える両手で私の肩を抱き寄せて、ゆっくり顔を近づけてから優しく唇を重ねる。
ぎこちないキスは、数秒で終わったのだけれど――。
「俺は雛川さんが好きです。君への気持ちをもう二度と忘れないように、大事に想っていきます」
抱きしめながら告げられた須藤課長の言葉を、嬉しさをかみ締めつつ、きちんと受け止めたのだった。
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