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 僕はショックがあまりに大きすぎて、浩司兄ちゃんの葬儀はおろか、自宅から出ることができなくなった。

 しんと静まり返った部屋の中にひとりきり、ベッドの上で膝を抱えて、一日中ぼーっと過ごす毎日。思考が停止したまま、ただただ呼吸だけを繰り返す。

(僕があのとき、物音にいち早く反応して、浩司兄ちゃんと一緒に逃げることができていたなら――)

 無駄だとわかっているのに、そんな考えばかりが頭を支配して、堂々巡りばかりしていた。

 コンコンッ! 静まり返った室内に、ノックの音が響き渡った。

「龍、生きてるか?」

 部活を終えた時間帯に、いつも現れる玲司。飽きもせずに、毎日僕の顔を拝みに来る。

「来たって、なにも変わってないよ」

「龍と仲のいいクラスメートが、心配してるんだぞ」

「仲のいいクラスメートなんていたっけ?」

 力なく返答した僕の隣に、玲司が座り込む。

「いつまでもそんなふうにしてたら、兄貴だってあの世で心配して、天国に行けないと思う」

「浩司兄ちゃんがいなくなって、なにかが変わると思ったのに、時間だけは無常に流れていく」

「そうだな……」

「生き残った僕は、なにもしてないのにお腹は空くし、生きるために呼吸を繰り返してさ。なんのために生きてるんだろって、虚しくなってるんだ」

「龍が生きるための理由があれば、いい感じか?」

 隣に座っていた玲司は腰を上げ、持っていた鞄に手を伸ばして、なにかを取り出す。

「ちょっ、それって――」

「兄貴の部屋にあった。いつもコレ使って、エッチしてたんだろ?」

 玲司が鞄から取り出したものは、ローションとゴムだった。

「そんなものわざわざ持ってきて、どうするんだよ?」

 眉根を寄せながら問いかけた僕を、玲司は真顔のまま静かに告げる。

「これから龍を襲う」

「は?」

「龍をめちゃくちゃにして、俺のモノにする」

 逃げる間もなかった。バスケをやってる長い腕が僕の躰をベッドに勢いよく押し倒し、大柄な玲司が易々と跨る。

「やめろよ、こんな冗談……」

「兄貴に操たててる龍を、俺の手でとことんまで感じさせてやる」

 冗談にしたかった僕のセリフをスルーした玲司は、迷うことなく顔を寄せて唇を押しつけた。

「ンンっ!」

 自分よりも体格のいい玲司の躰を両腕で押し返したけれど、ビクともしない。強引に舌が挿入し、言葉どおりに僕を感じさせようと蠢く。

「やっ…ぁあっ、くぅっ!」

「腕、邪魔だな」

 玲司は素早く自分のネクタイを解き、僕の両腕を後ろ手に縛りあげた。
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