ピロトークを聴きながら

相沢蒼依

文字の大きさ
上 下
9 / 87

ピロトーク:運命の出逢い⑨はじめての共同作業

しおりを挟む
 気だるい――でもイヤな気だるさじゃない。満たされて、ふわふわした感じ。

「……大丈夫か?」

 掠れた声で、郁也さんが聞いてきた。

「うん、大丈夫だよ。ありがと」

 僕も掠れた声で、返事をする。久しぶりだったせいもあって、思っていた以上に乱れてしまった。何だかハズカシイ……

「大丈夫か、そうか。ならもう一回」

「へっ!?」

「お前、自分の言ったこと、忘れたワケじゃないだろうな。好きなだけ食べていいって、言ったろ」

 確かに――

「もっと感じさせてやる、覚悟しろよ?」

 艶っぽく笑った郁也さんの顔が、グイッと近づいた。その顔を、両手で押さえつける僕。

「しっ、締め切りっ!」

「はあぁ?」

「今ここで全体力を使っちゃうと、締め切りに間に合わなくなっちゃうかも」

「…………」

 編集者である郁也さんを止めるには、この言葉が一番だろうと考え言ってみた。

 かくてその後、コンテストに応募するまで一切の情事を封印し、締め切りに間に合わせることに成功!

 しかも郁也さんとの恋愛のお陰で、応募した作品が大賞を受賞し、作家としてデビューすることになった。

 僕のデビューをきっかけに、一緒に暮らすことになったのだけれど――

「もうこれで、ウダウダ言わせないからな。きちんと俺が管理して、締め切りに間に合わせつつ、しっかりとその身体も、堪能させていただくことにしよう」

 なぁんて恐ろしいことを、口にしたのだ。

「えっと、ほどほどにしないと、書けなくなっちゃうかもよ?」

「大丈夫。ほどほどの力加減で、抱いてやるからな。フフフ」

 今までお預けしてしまった分、しょうがないと諦め、さっさとこの身を提供した。だけど、執筆した作品に糖度が加えられたのは、いうまでもない。
しおりを挟む

処理中です...