ピロトークを聴きながら

相沢蒼依

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ピロトーク:after Jealousy

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 涼一が無事に対談を終え、三木編集長と3人で和やかに夕飯を食い、気疲れを抱えたクタクタな身体で何とか帰宅した。

「先にシャワー浴びるね」

 対談前とは別人の爽やかな涼一に、行ってらっしゃいとソファの上からやっと返事をする。

 弄られキャラじゃないハズなのに、三木編集長や葩御稜に散々いじられまくり、不機嫌丸出しだった格好悪い俺とは対照的だった、大人の対応をしていた克巳さん。

 涼一の質問にえらく親しげに答えていたけど、見えない一線を引いていたのが見ていて分かった。

 そういう態度をきちんとしているからこそ、恋人に信用されるのか……なぁんて考えたり。しかもあの、葩御稜を易々と手玉にとっていたのが、更にすげぇって思った。

「あの余裕のある態度は、どこからきているんだ?」

 俺とは違ってあのふたりは相手のすることに対して、余裕を持って接している――どうして笑みを浮かべながら、それを見守ることができるんだろうか。

 それこそ――

「悔しいけど葩御稜の指摘通り、俺の器が小さいから?」

 涼一を信用していないワケではない。いつも俺だけを見ているのが、ちゃんと分かるし、伝わってくるから。だけど俺が――

「イマイチ自信がないんだよな。ちょっとしたことで簡単に一喜一憂して、時にはガキみたいな態度とったり、そのくせカッコつけてみたり……」

 こんな俺を見限って涼一が誰かに惹かれて、そのまま去ってしまうんじゃないかという、いらない不安に苛まれてしまい、いつも考えてしまうのだ。

 アイツを惹きつけておきたい――

 下唇を噛みしめながら拳をぎゅっと握ったとき、石鹸の香りがふわりと鼻先を掠める。ソファの後ろか、お風呂上りの涼一が、俺をそっと抱きしめてきた。

「そんな難しい顔してどうしたの? 仕事の悩み?」

「あ、いや、別に……」

 格好悪い俺の悩みなんて、恥ずかしすぎて言えるハズないだろ。

「……んもぅ、またそうやって濁してさ。どうせ僕には相談できないことなんだろっ」

 抱きしめていた身体を突き放すようにして離れると、向かい側のソファにどかっと座る涼一。目を合わせずに、タオルで濡れた頭を力任せに拭っている姿があった。

「……郁也さんにとって僕ってさ、どんな存在?」

 唐突に質問されて一瞬プチパニックになったが、ここはキッチリと答えなければなるまい。それこそ、これ以上地雷を踏んだら大変なことになるのが目に浮かぶ――

「そりゃあ……お前は、俺にとって大切な存在に決まってる、だろ」

「三木編集長さんがね、僕のことを花に例えたんだ。一輪挿しにさして、郁也さんだけが大事に愛でることのできる花だろうって。克巳さんが稜さんを、華に例えたことから始まったんだけどね」

「へぇ……」

 さすがは編集長――俺の考え付かない表現で涼一に対する想いを、上手いこと表している。一輪挿しにさして大事に愛でるなんて、そのまんまだもんな。

 ……って俺は編集者として表現力が、著しく乏しいってことじゃないのか!?

「僕もね、郁也さんと同じだよ。大切でかけがえのない存在だって思ってる。だからこそ――」

「うん?」

「僕の前で強がらなくていいんだ。そのままの郁也さんが、全部好きなんだからさ」

「っ……」

 少し困ったような顔してかなぁりすごいことを言った涼一を、何だか見ていられなくなり俯くしかない自分。

 すべて、見透かされていたなんて思ってもいなかった。こんな弱い俺が好きって、お前――

「そりゃ僕はこんなだしさ、郁也さんは郁也さんで思ってることの半分も言ってくれないし。そのせいでいい感じですれ違ってるトコがあるけど、それでも頼ってほしいっていつも思ってるんだよ」

 ――ヤバイ、涙が出そう……

「まずは、そうだなぁ……。郁也さんが少しでも思ったことを言えるように、僕が言って欲しいことリストを作ってみようっと。ほらほら、さっさとシャワー浴びてきなよ。打ち上げするって、自分から言ったクセに」

「分かった、行ってくる」

 赤い顔をひた隠して俯いたままソファから立ち上がる郁也さんを、微笑みながら見送った。

「行ってらっしゃい!」

 さて、と。待ってる間に、言ってほしいリストをさくさくっと作ってみようかな。

 克巳さんと稜さんに負けないくらいの、熱々カップルになってやる!

 そんな期待感を抱きながら、テーブルに置いてあったネタ帳を手にとって、何がいいかなぁとぼんやり考えはじめた涼一であった。
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