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抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
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「マモルには前世の記憶があります。きっと一秒でも長く、愛する人の傍にいたかったのでしょう。たとえそれが、報われない恋だとしても」
ベニーはマモルの気持ちを慮ったのか、噛みしめるように告げる。
「マモルはまだ、その人のことが好きなのでしょうか?」
「心の内までは……。わかっているのは、私が嫌われていることです」
自分が知らないベニーとマモルとのやり取りに、明堂は寂しさを覚える。好きな人のことならなんでも知りたいと思うのに、自身の中にいるマモルからは、相変わらずなにも伝わってこなかった。
「弘泰は、これからどうしますか?」
「これから?」
「私はこれからマモルといい関係を築くために、話し合いを重ねようと考えています」
目の前のことにいっぱいいっぱいの明堂にとって、先について考える余裕がなかった。しっかりした考えを持つベニーは大人なのに対し、自分はとても頼りない子どものように思えてならない。
「ベニー先生とマモルが話し合いするの、僕はあまりいい気持ちがしません」
しかも負の感情を晒すたびに、自らを貶めるように感じ、嫌われてしまうのではないかと不安に苛まれる。
「弘泰の意識のないところで、深い関係になったりはしません。安心してください」
「それでも僕は嫌なんです……」
「マモルにヤキモチをやくくらい、私のことが好きなんですね」
「好きです。マモルだけじゃない、ベニー先生を誰にも渡したくないです!」
即答した明堂は顔を寄せて、キスしようとした。その動きを察知したベニーは、少しだけ上半身を捻って逃げる。受け止めてくれると思っていただけに、求めたことを拒否されて、目の前が真っ暗になった。
「どうして……」
「今しようとしたことは、マモルにとって嫌なことの部類に入ります。君が感じることは、彼に筒抜けなのでしょう?」
「たぶん、そうですけど」
寄せた顔を引きながら、両手を膝の上でぎゅっと握りしめる。好きな人に拒否されたショックで、頭の中がパニックになっていく。
「どこで転生したのかわからなかった弘泰をここまで追いかけて、やっと相思相愛になったんです。本当は君を抱きたい。私だって我慢しているのですよ」
「…………」
「私も弘泰が好きです。マモルごと愛しているのです」
そう言って明堂の右手を手に取り、甲にくちづけを落とした。
「んっ」
ベニーの柔らかい唇を肌の上に感じて、変な声が出てしまった。
「これ以上マモルに嫌われないように、今後は派手なスキンシップはしません。理解してください」
明堂を納得させるように、じっと見つめるせいで、渋々ながらも了承せざるおえない。
「わかりました」
「少しでも早く、和解できるように頑張ります。焦れた弘泰が、他の人のところに行かないようにしなければ」
どこか困り顔したベニーは、掴んでいる明堂の右手に指を絡めて、名残惜しそうに頬擦りした。
「他の人のところになんて行きません。僕は、ベニー先生が傍にいてくれたらいいんです」
言うなり、腰元に抱きつく。ベニーが指を絡めている右手を解放したら、明堂は愛おしそうに両腕で強く躰を抱きしめた。
「弘泰も協力してください」
「協力?」
「嫌なことがあっても、自分の力で対処するのです。逃げずに立ち向かうこと」
頭を撫でながら告げたベニーの言葉に、気だるげに上半身を上げて、目の前にある顔を眺める。
「マモルと交代せずに、僕が立ち向かう……」
「ええ、彼の仕事を奪うのです。勇気をだして、抗ってはみませんか?」
突如なされた提案に、明堂は素直に賛同することができなかった。嫌なことから逃げるのが常だったせいで、なかなか勇気をだせなかったのである。
ベニーはマモルの気持ちを慮ったのか、噛みしめるように告げる。
「マモルはまだ、その人のことが好きなのでしょうか?」
「心の内までは……。わかっているのは、私が嫌われていることです」
自分が知らないベニーとマモルとのやり取りに、明堂は寂しさを覚える。好きな人のことならなんでも知りたいと思うのに、自身の中にいるマモルからは、相変わらずなにも伝わってこなかった。
「弘泰は、これからどうしますか?」
「これから?」
「私はこれからマモルといい関係を築くために、話し合いを重ねようと考えています」
目の前のことにいっぱいいっぱいの明堂にとって、先について考える余裕がなかった。しっかりした考えを持つベニーは大人なのに対し、自分はとても頼りない子どものように思えてならない。
「ベニー先生とマモルが話し合いするの、僕はあまりいい気持ちがしません」
しかも負の感情を晒すたびに、自らを貶めるように感じ、嫌われてしまうのではないかと不安に苛まれる。
「弘泰の意識のないところで、深い関係になったりはしません。安心してください」
「それでも僕は嫌なんです……」
「マモルにヤキモチをやくくらい、私のことが好きなんですね」
「好きです。マモルだけじゃない、ベニー先生を誰にも渡したくないです!」
即答した明堂は顔を寄せて、キスしようとした。その動きを察知したベニーは、少しだけ上半身を捻って逃げる。受け止めてくれると思っていただけに、求めたことを拒否されて、目の前が真っ暗になった。
「どうして……」
「今しようとしたことは、マモルにとって嫌なことの部類に入ります。君が感じることは、彼に筒抜けなのでしょう?」
「たぶん、そうですけど」
寄せた顔を引きながら、両手を膝の上でぎゅっと握りしめる。好きな人に拒否されたショックで、頭の中がパニックになっていく。
「どこで転生したのかわからなかった弘泰をここまで追いかけて、やっと相思相愛になったんです。本当は君を抱きたい。私だって我慢しているのですよ」
「…………」
「私も弘泰が好きです。マモルごと愛しているのです」
そう言って明堂の右手を手に取り、甲にくちづけを落とした。
「んっ」
ベニーの柔らかい唇を肌の上に感じて、変な声が出てしまった。
「これ以上マモルに嫌われないように、今後は派手なスキンシップはしません。理解してください」
明堂を納得させるように、じっと見つめるせいで、渋々ながらも了承せざるおえない。
「わかりました」
「少しでも早く、和解できるように頑張ります。焦れた弘泰が、他の人のところに行かないようにしなければ」
どこか困り顔したベニーは、掴んでいる明堂の右手に指を絡めて、名残惜しそうに頬擦りした。
「他の人のところになんて行きません。僕は、ベニー先生が傍にいてくれたらいいんです」
言うなり、腰元に抱きつく。ベニーが指を絡めている右手を解放したら、明堂は愛おしそうに両腕で強く躰を抱きしめた。
「弘泰も協力してください」
「協力?」
「嫌なことがあっても、自分の力で対処するのです。逃げずに立ち向かうこと」
頭を撫でながら告げたベニーの言葉に、気だるげに上半身を上げて、目の前にある顔を眺める。
「マモルと交代せずに、僕が立ち向かう……」
「ええ、彼の仕事を奪うのです。勇気をだして、抗ってはみませんか?」
突如なされた提案に、明堂は素直に賛同することができなかった。嫌なことから逃げるのが常だったせいで、なかなか勇気をだせなかったのである。
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