221 / 329
抗うことのできない恋だから、どうか一緒に堕ちてほしい
46
しおりを挟む
「何回もヤってるのに、抵抗するなって」
『弘泰、代わってやる。落ちろ』
同時に、外と中から声が聞こえた。いつもならその声に耳を傾けて、伊月にはされるがままの状態でマモルと交代していたが。
「嫌だっ! 僕は負けないっ!」
なんとか力任せに暴れて、伊月の手を振り解きながら布団から頭を出しつつ、ベッドから下りようとした。その瞬間に、胸ぐらを掴まれて引き留められる。一瞬躊躇したが、掴まれてることを無視して、ベッドから逃げ出した。
ビリビリッ!
ワイシャツのボタンが派手に弾け飛び、床に転がった。その転がる様子が、自由を手に入れた自分のように見えてしまった。縛りつけられていたところから見事に抜け出し、好きな場所に飛んでいけることを喜ばずにはいられない。
「弘泰っ!」
伊月の掴んだ手によって破かれた明堂のワイシャツを見たからか、見る間に力が抜け落ち、震えるてのひらが、恐るおそる引いていった。その後、信じられないものを見る目で弟を凝視する。
「もうこれ以上、僕に触らないでください」
「今更なんだよ、それは」
「今更なんかじゃない。僕はずっと我慢してきた。兄さんにされるのも、学校でいじめられるのも、もうたくさんっ!」
爆発した感情が声になって出た。すると、下から声かけがなされる。
「どうしたの? ふたりとも、なにかあった?」
この機を逃してなるかと、明堂は踵を返して部屋を飛び出し、一気に階段を駆け下りた。リビングから顔を覗かせて、二階の様子を窺っていた母親はその姿に驚き、慌てて傍にやって来た。
「弘泰、どうしてそんな恰好……。伊月と喧嘩でもした?」
自分の連れ子である伊月が、手をあげたと思ったんだろう。心配そうな面持ちで、明堂をぎゅっと抱きしめた。
「兄さんが僕を襲いました。それが嫌で抵抗したら、こんな格好に……」
「襲ったって、それは――」
「ずっと、性的な暴行を受けていたんです」
「弘泰っ!」
階段の最上段で、母親と明堂のやり取りを見ていた伊月が、愕然としながら叫ぶ。
「伊月、貴方なんてことをしてくれたの……」
「弘泰の自作自演だよ。俺はそんなことしてないって」
首を横に振りながら階段を下りた伊月は、縋るような眼差しでふたりに近づいた。
(母さんとしては、実の息子が旦那の連れ子に手を出していたなんて事実、認めたくないだろうな)
母親に抱かれながら俯き、いろいろ考えていて、それが目に入った。
ベニーが自分につけた、胸元のキスマーク。
『弘泰が寂しくならないように、私も痕を残しておきます』
楕円の形をしたベニーからのキスマークを見ているうちに、明堂の頭の中が閃く。
「兄さんは嘘をついてます。これがその証拠です。こんなもの、自作自演でつけることはできません!」
嘘をつかれるのなら、自分も嘘をついて真実にしてやろうと、堂々と嘘八百を並べたてた。
破れたワイシャツを自ら脱ぎ捨てて、ベニーにつけられた痕を母親に見せつける。
「俺はそんなもの、つけた記憶はない!」
「母さん、僕を信じて。僕は兄さんにイヤらしいことをされて、ずっと苦しんでいたんです」
怒りに躰を震わせる伊月と、半裸になって涙ながらに訴えた明堂。母親のジャッジは、伊月に平手打ちしたことで、あっけなく決着がついてしまった。
『弘泰、代わってやる。落ちろ』
同時に、外と中から声が聞こえた。いつもならその声に耳を傾けて、伊月にはされるがままの状態でマモルと交代していたが。
「嫌だっ! 僕は負けないっ!」
なんとか力任せに暴れて、伊月の手を振り解きながら布団から頭を出しつつ、ベッドから下りようとした。その瞬間に、胸ぐらを掴まれて引き留められる。一瞬躊躇したが、掴まれてることを無視して、ベッドから逃げ出した。
ビリビリッ!
ワイシャツのボタンが派手に弾け飛び、床に転がった。その転がる様子が、自由を手に入れた自分のように見えてしまった。縛りつけられていたところから見事に抜け出し、好きな場所に飛んでいけることを喜ばずにはいられない。
「弘泰っ!」
伊月の掴んだ手によって破かれた明堂のワイシャツを見たからか、見る間に力が抜け落ち、震えるてのひらが、恐るおそる引いていった。その後、信じられないものを見る目で弟を凝視する。
「もうこれ以上、僕に触らないでください」
「今更なんだよ、それは」
「今更なんかじゃない。僕はずっと我慢してきた。兄さんにされるのも、学校でいじめられるのも、もうたくさんっ!」
爆発した感情が声になって出た。すると、下から声かけがなされる。
「どうしたの? ふたりとも、なにかあった?」
この機を逃してなるかと、明堂は踵を返して部屋を飛び出し、一気に階段を駆け下りた。リビングから顔を覗かせて、二階の様子を窺っていた母親はその姿に驚き、慌てて傍にやって来た。
「弘泰、どうしてそんな恰好……。伊月と喧嘩でもした?」
自分の連れ子である伊月が、手をあげたと思ったんだろう。心配そうな面持ちで、明堂をぎゅっと抱きしめた。
「兄さんが僕を襲いました。それが嫌で抵抗したら、こんな格好に……」
「襲ったって、それは――」
「ずっと、性的な暴行を受けていたんです」
「弘泰っ!」
階段の最上段で、母親と明堂のやり取りを見ていた伊月が、愕然としながら叫ぶ。
「伊月、貴方なんてことをしてくれたの……」
「弘泰の自作自演だよ。俺はそんなことしてないって」
首を横に振りながら階段を下りた伊月は、縋るような眼差しでふたりに近づいた。
(母さんとしては、実の息子が旦那の連れ子に手を出していたなんて事実、認めたくないだろうな)
母親に抱かれながら俯き、いろいろ考えていて、それが目に入った。
ベニーが自分につけた、胸元のキスマーク。
『弘泰が寂しくならないように、私も痕を残しておきます』
楕円の形をしたベニーからのキスマークを見ているうちに、明堂の頭の中が閃く。
「兄さんは嘘をついてます。これがその証拠です。こんなもの、自作自演でつけることはできません!」
嘘をつかれるのなら、自分も嘘をついて真実にしてやろうと、堂々と嘘八百を並べたてた。
破れたワイシャツを自ら脱ぎ捨てて、ベニーにつけられた痕を母親に見せつける。
「俺はそんなもの、つけた記憶はない!」
「母さん、僕を信じて。僕は兄さんにイヤらしいことをされて、ずっと苦しんでいたんです」
怒りに躰を震わせる伊月と、半裸になって涙ながらに訴えた明堂。母親のジャッジは、伊月に平手打ちしたことで、あっけなく決着がついてしまった。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる