281 / 329
抗えない想いを胸に秘めたまま、おまえの傍にずっといたい
15
しおりを挟む
先ほどよりも表情を和らげたベニーに、女性は苦笑いを浮かべて静かに頷く。さっきから湿気た話ばかりを聞いていたせいか、あくびが出てしまった。
「先輩、貴方って人はまったく。マイペースを貫くその神経を見習いたいです」
ベニーは呆れて俺の鼻を突っついた。離れていくその指を狙って、パンチを繰り出してやったのに、俺の動きを悟ったのか、あっけなくかわされてしまった。
「ロレザス先生は、このままでいるおつもりなんですか? 彼になにも明かさずに過ごしていくつもりなのでしょうか」
「私の見守り人が自分の想いを隠したあのときのように、私も前のことを胸に秘めながら、彼の余生を見届けます。来世がどうか幸せになりますようにと」
「そんな……」
「彼がどんな姿になっても、今の彼の人生を後悔なく過ごしてほしい。つらい想いなんて知ってほしくはないのです」
「にゃぁあっ!」
話をぶった切る勢いで大きな声で鳴くと、ベニーの手によっていきなり首の付け根を摘ままれて、肩から強引に降ろされた。女性に見せつけるように首吊り状態で晒されたのを脱却すべく、手足をじたばた動かしたが、腕の長いベニーの手をなんとかすることはできなかった。
「ロレザス先生の立場になったら、私はきっと前世のことを告げてしまうと思います」
「告げたところで、彼にはどうすることもできないのです。それどころか、知ったことで苦しむかもしれない。私を恨む可能性だってあるのです……」
俺は今のこの現状を恨んでるけどな!
「恨むなんてことはしないはずです。だって! だって愛する人をそんなふうには」
「愛と憎しみは表裏一体。絶対なんてありえません。先輩、いい加減に諦めてください。人の話を中断させたのですからね」
「う~っ……」
俺が仕方なく大人しくなると、いつものようにベニーの肩に移動させてくれる。あたたかみを肉球に感じただけで、自然と安心感が増すから不思議だった。
「凛花さん、私のような悲しい結末にならないように、勇気を出して彼に告白してください。うまくいくことをお祈りいたします」
「ありがとうございます。もう少しだけ考えてから、キースに告白しようと思います。それでは失礼します!」
艶やかに笑った女性は俺たちに一礼してから、足早にどこかへ向かった。
「あのふたりが幸せになるといいですね」
ベニーが俺に告げたのかと思って、返事をしようとしたら。
「こんな回りくどいことをして、やっと踏ん切りがつくとか、困った者たちだ」
まったく人の気配を感じなかった背後から、聞いたことのない男の声がした。俺は振り返りながら身構えると、なにもない暗闇から音もなく男が現れる。得体の知れない者が現れたというのに、ベニーは俺に背後をまかせたまま、その場に立ちつくした。
「先輩、貴方って人はまったく。マイペースを貫くその神経を見習いたいです」
ベニーは呆れて俺の鼻を突っついた。離れていくその指を狙って、パンチを繰り出してやったのに、俺の動きを悟ったのか、あっけなくかわされてしまった。
「ロレザス先生は、このままでいるおつもりなんですか? 彼になにも明かさずに過ごしていくつもりなのでしょうか」
「私の見守り人が自分の想いを隠したあのときのように、私も前のことを胸に秘めながら、彼の余生を見届けます。来世がどうか幸せになりますようにと」
「そんな……」
「彼がどんな姿になっても、今の彼の人生を後悔なく過ごしてほしい。つらい想いなんて知ってほしくはないのです」
「にゃぁあっ!」
話をぶった切る勢いで大きな声で鳴くと、ベニーの手によっていきなり首の付け根を摘ままれて、肩から強引に降ろされた。女性に見せつけるように首吊り状態で晒されたのを脱却すべく、手足をじたばた動かしたが、腕の長いベニーの手をなんとかすることはできなかった。
「ロレザス先生の立場になったら、私はきっと前世のことを告げてしまうと思います」
「告げたところで、彼にはどうすることもできないのです。それどころか、知ったことで苦しむかもしれない。私を恨む可能性だってあるのです……」
俺は今のこの現状を恨んでるけどな!
「恨むなんてことはしないはずです。だって! だって愛する人をそんなふうには」
「愛と憎しみは表裏一体。絶対なんてありえません。先輩、いい加減に諦めてください。人の話を中断させたのですからね」
「う~っ……」
俺が仕方なく大人しくなると、いつものようにベニーの肩に移動させてくれる。あたたかみを肉球に感じただけで、自然と安心感が増すから不思議だった。
「凛花さん、私のような悲しい結末にならないように、勇気を出して彼に告白してください。うまくいくことをお祈りいたします」
「ありがとうございます。もう少しだけ考えてから、キースに告白しようと思います。それでは失礼します!」
艶やかに笑った女性は俺たちに一礼してから、足早にどこかへ向かった。
「あのふたりが幸せになるといいですね」
ベニーが俺に告げたのかと思って、返事をしようとしたら。
「こんな回りくどいことをして、やっと踏ん切りがつくとか、困った者たちだ」
まったく人の気配を感じなかった背後から、聞いたことのない男の声がした。俺は振り返りながら身構えると、なにもない暗闇から音もなく男が現れる。得体の知れない者が現れたというのに、ベニーは俺に背後をまかせたまま、その場に立ちつくした。
0
あなたにおすすめの小説
壁乳
リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。
最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。
じれじれラブコメディー。
4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。
(挿絵byリリーブルー)
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる