11 / 14
運命の判定は如何に!?
3(小野寺目線)
しおりを挟む
***
「んもぅ、最悪すぎる……」
寒くて鼻水が出てるのか、それともこの状況が悲しくて鼻水が出てるのか分からなくなっていた。
折角綺麗にラッピングしてもらった花束を、人にぶつかって大破させてしまったのだ。
大勢の人が行き交う通りだったので(ほとんどカップルばかり)急いで花を拾い上げるのがやっとで、ラッピング紙もリボンも踏まれてぐちゃぐちゃになっていた。
「とりあえず急ぐべし、とりあえず笑顔を忘れない。最初に言う言葉は、遅れてすみません!」
呪文のように呟いて、自分に言い聞かせる。
彼女を抱き締める様に、優しく花たちを抱き締めて必死に猛ダッシュ。待ち合わせ場所の駅前ロータリーに向かった。
駅前ロータリーには、たくさんの待ち人がいる。たくさんの中でも、一発で亜理砂さんを見つけられる俺って超絶天才だろう。
距離50mの位置から走るのを止めて、呼吸を整えながら急ぎ足にした。花を抱えているため、髪形が整えられないのがイタい――
「亜理砂さん、お待たせしてすみません!」
「小野寺さん……何か大変そうな格好で……」
俺の姿を見て目を瞬かせながら驚く亜理砂さん。
予定ならこの後に格好良く花束を渡すはずだったが、この状態では不可能だった。
「仕事に振り回された挙げ句に、プレゼントしようと用意したコレにも振り回されてしまいました」
苦笑いすると、亜理砂さんは俺の頬に触れる。
「頬っぺた、冷たいです。少し赤みがかってる」
「亜理砂さんも赤いですよ。かなり待たせてしまったから……。本当にすみません」
俺が赤いのはきっとこれから告げる言葉を言うのに、照れているからだと思われる。今日は、約束の期日なのだから――
花を抱き締めている腕に力が入り、カサリと音が鳴った。
「亜理砂さん、あの――」
「昨日、同僚が小野寺さんの話をしてくれたんです」
俺の話を遮って唐突に話し出すその思い切った様子に、イヤな予感がした。
「その同僚の友人が、小野寺さんと同じ会社にいるらしくて。……いろんな女のコをとっかえひっかえしてるとか、仕事は下半身でしてるとか、男性の上司とデキてる、とか」
「男性の上司とデキてるのは、否定させて下さい。俺、そっちの気ありませんから。残る噂は否定しません、半分以上当たってます。だけど亜理砂さんと付き合っている間は、女性関係ナッシングでしたから!」
身から出た錆とはこのことだ、日頃の行いが悪いと肝心なときに限って上手くいかない。ナッシングと豪語しても、空回りしている気がする。まるで今日やり直し食らった、仕事と同じじゃないかよ。
告白する前に玉砕か……。マジ格好悪すぎる。
居たたまれなくなり、彼女に背を向けた。
(ああ、もぅ、消えてしまいたい――)
肩を落としながらはーっと深いため息をついた瞬間、背中に軽い衝撃が走った。小さくて柔らかく暖かいモノは、俺の躰をぎゅっと抱き締める。
耳元で葉っぱが音を立てた。まるでそれは俺の代わりに、喜んでいるみたいな感じかもしれない。
「花が……潰れてしまいますよ。亜理砂さん」
「私、その同僚に言ったんです。今は私にぞっこんだからいいんだって」
「はい、その通りです」
「前カノから貰った指輪を、仕事の小道具だと平気で嘘をつく人だけど」
「多少心を傷めて、嘘ついてます……」
「見栄っ張りだし、嘘つきは泥棒のはじまりなんだから」
「亜理砂さんの心を盗めるなら、泥棒になりたいです」
本心だけがスラスラと言葉になって出てくる。きっと亜理紗さんの躰から伝わってくる、あたたかさのせいだろう。
「そうやって上手いことを言って、私をモノにしようとするし」
どこか嬉しそうに笑ってる様子がなんとなく背中に伝わってきて、自然と唇に笑みが浮かんでしまった。
「私ね、同僚を叱りました」
「叱った?」
「好きな男を馬鹿にされて、怒らない彼女がいるなら見てみたいです」
「う……そ……?」
今、好きな男って言ったよな?
信じられなくて呆然としている俺の目の前に亜理砂さんが来て、細長い腕を俺の首に回すと、触れるだけの優しいキスをしてくれた。
手にしていた花をバサバサ落とす赤面した俺を、顔色一つ変えずに見つめる亜理砂さん。訝しくなり、彼女の腕を掴んで脈がとれそうな箇所に、指をあてて計測してしまった。
「何?」
「良かった、すっごくドキドキしてる」
はたから見たら可笑しいだろう。地面に花を散らばせているところに、男が女の脈をとって喜んでいる姿――
「この状況で、ドキドキしない方が難しいんじゃない?」
「だって亜理砂さん、顔色が変わらないんだもん。俺一人だけ、浮かれてるみたいだし」
「昔ね、その顔色でいろいろあったから」
憮然とした表情になるということは、かなり手痛い恋愛をしたんだろうな。
「それより、これからどうするの?」
「俺の家にクリスマスケーキあるんですけど……食べます?」
「ついでに私も、食べられちゃうんでしょうね」
呆れた顔で俺を見る。にゃははと笑いながら、頭を掻いた。
「それじゃあコレ持って欲しいな。私はこの花を持つから」
手渡されたのはボストンバック、これって――
「亜理砂さん、お泊まりする気が満々だったんじゃないですかっ」
しゃがみこんで、花を拾う亜理砂さん。
どんな顔をしているんだろう?
じっと見つめていると素早く立ち上がり、早足で歩いて行ってしまう。
「亜理砂さん、そっちは方向逆ですよ」
笑いを堪えながら声をかけると、うっすら頬を染めた彼女が戻って来た。その様子が非常に愛らしくて、つい目尻が下がってしまう。
「もう早く、案内して下さいっ!」
――怒られても幸せ――
そんな彼女の肩を抱き寄せて、一緒に帰路に着いたのだった。
「んもぅ、最悪すぎる……」
寒くて鼻水が出てるのか、それともこの状況が悲しくて鼻水が出てるのか分からなくなっていた。
折角綺麗にラッピングしてもらった花束を、人にぶつかって大破させてしまったのだ。
大勢の人が行き交う通りだったので(ほとんどカップルばかり)急いで花を拾い上げるのがやっとで、ラッピング紙もリボンも踏まれてぐちゃぐちゃになっていた。
「とりあえず急ぐべし、とりあえず笑顔を忘れない。最初に言う言葉は、遅れてすみません!」
呪文のように呟いて、自分に言い聞かせる。
彼女を抱き締める様に、優しく花たちを抱き締めて必死に猛ダッシュ。待ち合わせ場所の駅前ロータリーに向かった。
駅前ロータリーには、たくさんの待ち人がいる。たくさんの中でも、一発で亜理砂さんを見つけられる俺って超絶天才だろう。
距離50mの位置から走るのを止めて、呼吸を整えながら急ぎ足にした。花を抱えているため、髪形が整えられないのがイタい――
「亜理砂さん、お待たせしてすみません!」
「小野寺さん……何か大変そうな格好で……」
俺の姿を見て目を瞬かせながら驚く亜理砂さん。
予定ならこの後に格好良く花束を渡すはずだったが、この状態では不可能だった。
「仕事に振り回された挙げ句に、プレゼントしようと用意したコレにも振り回されてしまいました」
苦笑いすると、亜理砂さんは俺の頬に触れる。
「頬っぺた、冷たいです。少し赤みがかってる」
「亜理砂さんも赤いですよ。かなり待たせてしまったから……。本当にすみません」
俺が赤いのはきっとこれから告げる言葉を言うのに、照れているからだと思われる。今日は、約束の期日なのだから――
花を抱き締めている腕に力が入り、カサリと音が鳴った。
「亜理砂さん、あの――」
「昨日、同僚が小野寺さんの話をしてくれたんです」
俺の話を遮って唐突に話し出すその思い切った様子に、イヤな予感がした。
「その同僚の友人が、小野寺さんと同じ会社にいるらしくて。……いろんな女のコをとっかえひっかえしてるとか、仕事は下半身でしてるとか、男性の上司とデキてる、とか」
「男性の上司とデキてるのは、否定させて下さい。俺、そっちの気ありませんから。残る噂は否定しません、半分以上当たってます。だけど亜理砂さんと付き合っている間は、女性関係ナッシングでしたから!」
身から出た錆とはこのことだ、日頃の行いが悪いと肝心なときに限って上手くいかない。ナッシングと豪語しても、空回りしている気がする。まるで今日やり直し食らった、仕事と同じじゃないかよ。
告白する前に玉砕か……。マジ格好悪すぎる。
居たたまれなくなり、彼女に背を向けた。
(ああ、もぅ、消えてしまいたい――)
肩を落としながらはーっと深いため息をついた瞬間、背中に軽い衝撃が走った。小さくて柔らかく暖かいモノは、俺の躰をぎゅっと抱き締める。
耳元で葉っぱが音を立てた。まるでそれは俺の代わりに、喜んでいるみたいな感じかもしれない。
「花が……潰れてしまいますよ。亜理砂さん」
「私、その同僚に言ったんです。今は私にぞっこんだからいいんだって」
「はい、その通りです」
「前カノから貰った指輪を、仕事の小道具だと平気で嘘をつく人だけど」
「多少心を傷めて、嘘ついてます……」
「見栄っ張りだし、嘘つきは泥棒のはじまりなんだから」
「亜理砂さんの心を盗めるなら、泥棒になりたいです」
本心だけがスラスラと言葉になって出てくる。きっと亜理紗さんの躰から伝わってくる、あたたかさのせいだろう。
「そうやって上手いことを言って、私をモノにしようとするし」
どこか嬉しそうに笑ってる様子がなんとなく背中に伝わってきて、自然と唇に笑みが浮かんでしまった。
「私ね、同僚を叱りました」
「叱った?」
「好きな男を馬鹿にされて、怒らない彼女がいるなら見てみたいです」
「う……そ……?」
今、好きな男って言ったよな?
信じられなくて呆然としている俺の目の前に亜理砂さんが来て、細長い腕を俺の首に回すと、触れるだけの優しいキスをしてくれた。
手にしていた花をバサバサ落とす赤面した俺を、顔色一つ変えずに見つめる亜理砂さん。訝しくなり、彼女の腕を掴んで脈がとれそうな箇所に、指をあてて計測してしまった。
「何?」
「良かった、すっごくドキドキしてる」
はたから見たら可笑しいだろう。地面に花を散らばせているところに、男が女の脈をとって喜んでいる姿――
「この状況で、ドキドキしない方が難しいんじゃない?」
「だって亜理砂さん、顔色が変わらないんだもん。俺一人だけ、浮かれてるみたいだし」
「昔ね、その顔色でいろいろあったから」
憮然とした表情になるということは、かなり手痛い恋愛をしたんだろうな。
「それより、これからどうするの?」
「俺の家にクリスマスケーキあるんですけど……食べます?」
「ついでに私も、食べられちゃうんでしょうね」
呆れた顔で俺を見る。にゃははと笑いながら、頭を掻いた。
「それじゃあコレ持って欲しいな。私はこの花を持つから」
手渡されたのはボストンバック、これって――
「亜理砂さん、お泊まりする気が満々だったんじゃないですかっ」
しゃがみこんで、花を拾う亜理砂さん。
どんな顔をしているんだろう?
じっと見つめていると素早く立ち上がり、早足で歩いて行ってしまう。
「亜理砂さん、そっちは方向逆ですよ」
笑いを堪えながら声をかけると、うっすら頬を染めた彼女が戻って来た。その様子が非常に愛らしくて、つい目尻が下がってしまう。
「もう早く、案内して下さいっ!」
――怒られても幸せ――
そんな彼女の肩を抱き寄せて、一緒に帰路に着いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
恋い焦がれて
さとう涼
恋愛
小学校時代の担任教諭・佐野に七年ぶりに再会し、話の流れで佐野の恋人へのエンゲージリングを選ぶために一緒にジュエリーショップに行くことになってしまった二十歳の女子大学生・輝。
最初はそんなつもりはなかったのに、次第に佐野を意識してしまうようになり、自分でも困惑してしまう。
必死に自分の想いを打ち消そうとする輝。
だけど佐野も恋人との関係に悩んでいるようで、複雑な想いを抱え続けることになる。
そんな輝を見守る(ちょっかいをかける?)バイト先の店長。
さらに佐野の恋人は意外な人物で、輝は大混乱。
※ドロドロではなく純愛系を目指していますが、ビターテイストなお話です
※理想的で格好いいヒーローではありません(…すみません)
※調べながら執筆をしているのですが、無知なところも多々あるので、間違っているところがありましたら教えてください。ツイッターでも受け付けています。
https://twitter.com/SATORYO_HOME
【完結】“熟年恋愛”物語
山田森湖
恋愛
妻を亡くし、独りで過ごす日々に慣れつつあった 圭介(56)。
子育てを終え、長く封じ込めていた“自分の時間”をようやく取り戻した 佳奈美(54)。
どちらも、恋を求めていたわけではない。
ただ——「誰かと話したい」「同じ時間を共有したい」、
そんな小さな願いが胸に生まれた夜。
ふたりは、50代以上限定の交流イベント“シングルナイト”で出会う。
最初の一言は、たった「こんばんは」。
それだけなのに、どこか懐かしいような安心感が、お互いの心に灯った。
週末の夜に交わした小さな会話は、
やがて食事の誘いへ、
そして“誰にも言えない本音”を語り合える関係へと変わっていく。
過去の傷、家族の距離、仕事を終えた後の空虚——
人生の後半戦だからこそ抱える孤独や不安を共有しながら、
ふたりはゆっくりと心の距離を縮めていく。
恋に臆病になった大人たちが、
無理をせず、飾らず、素のままの自分で惹かれ合う——
そんな“優しい恋”の物語。
もう恋なんてしないと思っていた。
でも、あの夜、確かに何かが始まった。
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
幼馴染みのアイツとようやく○○○をした、僕と私の夏の話
こうしき
恋愛
クールなツンツン女子のあかねと真面目な眼鏡男子の亮汰は幼馴染み。
両思いにも関わらず、お互い片想いだと思い込んでいた二人が初めて互いの気持ちを知った、ある夏の日。
戸惑いながらも初めてその身を重ねた二人は夢中で何度も愛し合う。何度も、何度も、何度も──
※ムーンライトにも掲載しています
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる