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課外授業:気になる教師
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翌週の国語の時間、予告通り漢字のテストが行われた。
どんな問題が出題されるか、分からない状態だからこそテスト勉強なんか面倒くさくて、するハズもなく。それは、クラスにいる生徒も同じだった。
――この状態で本当に手紙の主を、判別することが出来るんだろうか――
そんな一抹の不安を抱えつつ、前の席から送られてきたテスト用紙を見てみる。
「うわっ、これは一体……」
クラスのみんながテスト前とは思えない、変などよめき方をした。
「おーい、無駄に騒ぐな。とっとと始めろよ」
「三木先生、この漢字のテストって、どこの恋愛小説から写してきたんですか? ときめいちゃって、漢字が書けませーん」
一番前にいる目立ちたがりのクラスメートが、わざわざ席を立ち質問する。他にも、いやぁ何か照れちゃうよねというヒソヒソ話を、隣の席の友人と喋っていたり。クラスにいる全員が、ツッコミ入れたくなるだろう。こんな漢字の問題は見たことがない。
『いつも向かい側から貴方を(モクシ)してるの。
友達とふざけ合ってる時に(グウゼン)知った貴方の名前。
その名前を口ずさんでみたら
好きという気持ちが(イッソウ)(カソク)していった。
この想いが(バクハツ)する前に
貴方の前に(ドウドウ)と(ナノリ)出て 自分の気持ちを告げる事ができるように
告白の(セリフ)を考えておくね
(ゼッコウ)の(シュンカン)を夢に見てる』
私宛に来た手紙の中身を三通、三木先生にそのまま渡したから中身がどんなものかは不明だけど。もしかして日に日に、内容が過激になっていったのかな?
「この問題は先生が考えた。どうだ、ときめいただろ? ときめきながらどんどん、漢字を書いていってくれ」
ザワザワッ!
さっきよりも、どよめく教室。
(――当然だよ、みんなドン引きするって……)
あの顔でこの文章を考えてる姿を想像しただけでも、ぞわっと鳥肌ものだし。三木先生の家で話した方言じゃないけど、自分でNHKであることを更に強調しちゃってる。
「はいはい、意外な才能に感心しないでさっさと始めろ。時間は十分しかとらないからな」
その言葉にみんなは慌てて、机にかじりついた。ときめく問題を必死に解くべく、シャーペンの音が耳に聞こえてくる。
三木先生はテストの間、教室内をくまなく歩き、みんなの出来具合を確認しているようだった。
私の横を通り過ぎながら、小さな紙片をポイッと机にさりげなく置いていった。顔を上げたときには、黒板に向かって前進していて、どんな顔をしてるか分からなかった。
置かれた小さな紙片を見て、思わず口元を緩めてしまう。
いつか私の頭を撫でたあの大きな手で、この紙をちまちま折ったのかと思ったら、似合わなすぎて苦笑しか出てこない。
周りを警戒して紙を開き、中を確認してみた。
『今日中に手紙の差出人が分かると思うから放課後、進路指導室に呼び出しておく。急いで来るように。急ぎすぎて、転ぶなよ。 NHKより←泣けるほど本格的に格好いいの略』
「ぷぷっ!」
反射的に吹き出してしまい慌てて口元を押さえたけど、声が思いっきり漏れてしまった。
「おー、どーした?」
「すす、すみません。ちょっと風邪気味で……。ごほごほ――」
涙目になりながら眉根を寄せる姿に、三木先生はしたり顔をする。
「風邪気味にしちゃ元気そうだな。無理してなくて何よりだ」
言いながら腕時計で、時間を確認した。
「あと三分だぞ、頑張れよー」
よく通る声で言うと、さっきと同じように歩き出す。
――無理してなくて、何よりって。密かに心配してくれたのかな? 先週のこと……
ぼんやり思いながら、テストの答案を見る。
『告白の(セリフ)を考えておくね』
三木先生は写真の彼女に、どんな告白の台詞を伝えたんだろう?
なぜだかこの問題が、妙に気になって仕方がなかった。
翌週の国語の時間、予告通り漢字のテストが行われた。
どんな問題が出題されるか、分からない状態だからこそテスト勉強なんか面倒くさくて、するハズもなく。それは、クラスにいる生徒も同じだった。
――この状態で本当に手紙の主を、判別することが出来るんだろうか――
そんな一抹の不安を抱えつつ、前の席から送られてきたテスト用紙を見てみる。
「うわっ、これは一体……」
クラスのみんながテスト前とは思えない、変などよめき方をした。
「おーい、無駄に騒ぐな。とっとと始めろよ」
「三木先生、この漢字のテストって、どこの恋愛小説から写してきたんですか? ときめいちゃって、漢字が書けませーん」
一番前にいる目立ちたがりのクラスメートが、わざわざ席を立ち質問する。他にも、いやぁ何か照れちゃうよねというヒソヒソ話を、隣の席の友人と喋っていたり。クラスにいる全員が、ツッコミ入れたくなるだろう。こんな漢字の問題は見たことがない。
『いつも向かい側から貴方を(モクシ)してるの。
友達とふざけ合ってる時に(グウゼン)知った貴方の名前。
その名前を口ずさんでみたら
好きという気持ちが(イッソウ)(カソク)していった。
この想いが(バクハツ)する前に
貴方の前に(ドウドウ)と(ナノリ)出て 自分の気持ちを告げる事ができるように
告白の(セリフ)を考えておくね
(ゼッコウ)の(シュンカン)を夢に見てる』
私宛に来た手紙の中身を三通、三木先生にそのまま渡したから中身がどんなものかは不明だけど。もしかして日に日に、内容が過激になっていったのかな?
「この問題は先生が考えた。どうだ、ときめいただろ? ときめきながらどんどん、漢字を書いていってくれ」
ザワザワッ!
さっきよりも、どよめく教室。
(――当然だよ、みんなドン引きするって……)
あの顔でこの文章を考えてる姿を想像しただけでも、ぞわっと鳥肌ものだし。三木先生の家で話した方言じゃないけど、自分でNHKであることを更に強調しちゃってる。
「はいはい、意外な才能に感心しないでさっさと始めろ。時間は十分しかとらないからな」
その言葉にみんなは慌てて、机にかじりついた。ときめく問題を必死に解くべく、シャーペンの音が耳に聞こえてくる。
三木先生はテストの間、教室内をくまなく歩き、みんなの出来具合を確認しているようだった。
私の横を通り過ぎながら、小さな紙片をポイッと机にさりげなく置いていった。顔を上げたときには、黒板に向かって前進していて、どんな顔をしてるか分からなかった。
置かれた小さな紙片を見て、思わず口元を緩めてしまう。
いつか私の頭を撫でたあの大きな手で、この紙をちまちま折ったのかと思ったら、似合わなすぎて苦笑しか出てこない。
周りを警戒して紙を開き、中を確認してみた。
『今日中に手紙の差出人が分かると思うから放課後、進路指導室に呼び出しておく。急いで来るように。急ぎすぎて、転ぶなよ。 NHKより←泣けるほど本格的に格好いいの略』
「ぷぷっ!」
反射的に吹き出してしまい慌てて口元を押さえたけど、声が思いっきり漏れてしまった。
「おー、どーした?」
「すす、すみません。ちょっと風邪気味で……。ごほごほ――」
涙目になりながら眉根を寄せる姿に、三木先生はしたり顔をする。
「風邪気味にしちゃ元気そうだな。無理してなくて何よりだ」
言いながら腕時計で、時間を確認した。
「あと三分だぞ、頑張れよー」
よく通る声で言うと、さっきと同じように歩き出す。
――無理してなくて、何よりって。密かに心配してくれたのかな? 先週のこと……
ぼんやり思いながら、テストの答案を見る。
『告白の(セリフ)を考えておくね』
三木先生は写真の彼女に、どんな告白の台詞を伝えたんだろう?
なぜだかこの問題が、妙に気になって仕方がなかった。
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