FF~フォルテシモ~

相沢蒼依

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変わった人との出逢い

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***

「だからぁ、付き合う気はまったくないから」

 合コンで軽くイチャイチャしたくらいで、勘違いしないで欲しい。

 同期の山田くんが取引先との交流をはかるべく、合コンをセッティングした。独身限定だったから、ほとんどお見合いパーティー状態だった。

 女のコの人数が足りないからと頼まれて仕方なく参加したものの、イケメンGETしようとしたのに、なぜか狙ったイケメンと仲良さそうに喋る山田……。

 諦めて自分の会社のイケてない男としょうがなく交流したけど、その後こうやって、しつこく付きまとわれる結果になったのである。

「だってあんなに、盛り上がって話したじゃないか」

(――アンタひとりで、勝手に盛り上がってたんだよ……)

 こっそり心で毒づきながら、この場をどう治めるかを考える。明らかに感じられるイヤらしい視線に、内心うんざりしながら溜め息をついた。

「悪いけどアナタとは付き合えないって、さっきも言ったじゃない!」

 コイツは身体目当ての人間。容姿だけを見る男……。ホントの私なんて、見てくれるはずがない。

 キッと睨みながら見上げると、

「会社の往来で、何をしてるんですか?」

 どこぞの部署から、ひょっこり助け船の声がかけられた。

 これはラッキー、助けられちゃお!! と思いながら出てきた男性の傍に、ウソ泣きしながら駆け寄った。

「付き合えないって言ってるのに、しつこく付きまとわれて困っていたんですぅ」

 出てきた男性の顔をよく見る。年齢は30代後半から40代風で、正直イケメンとはいえない。何だかヌボゥとしていて、頼りなさそうな感じに見える。それでも助けてくれようとしてるんだからと瞳をここぞとばかりに潤ませて、その人を見上げた。

 そんな私の視線を見事にスルーし、男の元に行く。

 一瞬、視線が絡んだハズなのに一瞥された。何だか、ショックなんですけど。

 そういえば、これと同じようなことをした人物がいる……。合コンで狙ってたイケメン。

 山田くんと話をしてるトコに、割って入るかのようにお邪魔したせいもあるだろうけど、私を見て眉根を寄せてから、スッとあからさまに視線を外されてしまった。オマエのような女に用はない的な態度で――

 そんなあからさまな態度をイケメンにされ、軽くショックを受けてると、

「まさやん好みウルサいんだ、冷たい態度をとってゴメンね」

 なぁんて山田くんからフォローがあった。フォローしてる傍から、

「自分にコビ売ってくる、乳牛女はキライだ」

「まさやん、何て失礼な……」

 そういうやり取りがあった後だけに、イケてない男性に同じような態度をとられて気にならないわけがない。

(――私ってイケてないの!?)

 ついじっとその人を見つめてしまった。

「彼女は完璧に君を拒絶しているようですが? しかもここは会社の往来なんです。声が響いて煩かったですよ。少しは考えたらどうでしょう」

 物腰は柔らかだけど、バシッと言ってるトコに激しく共感。

 そうそう、拒絶してんの私!

「営業企画部の部長さんが何でわざわざ、痴話喧嘩に乱入するんですか? 会長へのご機嫌とりですかぁ?」

 ヘラヘラしながら言う男の態度に、激しくイライラしちゃった。何なのコイツ。

「これが何で、会長のご機嫌とりになるんです?」

「だって朝比奈は会長の孫娘なんですよ。得点あげるには、持ってこいの状況ですよねぇ」

 肩を竦めてやれやれポーズする男に、呆れた表情を浮かべたイメメンとは程遠い地味な男性。

「彼女が会長の孫娘だろうが一般人だろうが、関係なく注意しますよ。会社の往来は公共の場なんです。非常に耳障りで低俗な内容の話し合いは、部署で仕事していた私に支障きたしました」

 そう言ってから、私に視線を送る。

「君もよく人を見て、相手を選んだ方がいい。誰カレ構わずに良い顔していたら、そのうち後ろから刺されますよ」

 冷たい言葉で、ザックリと注意をしてきた。

 後ろから刺されるって、何で刺されなきゃならないのよ? 私、悪いコトしてるつもりはないのに。

 ちょっと憤慨しながら睨むようにその男性を見たら、視線を絡ませるように私の顔を見る。少しだけ困ったような、それでいて、やれやれといった優しい眼差しに思わずドキッとした。

 ――なっ、何だろ今の……?

「彼女も反省してるようだし、諦めて帰りなさい。営業二課の外川 猛彦くん」

「なっ、何で俺の名前……」

「社内の男性の名前は、ほぼ把握していますよ。特に優秀な社員はね」

 ほぼ覚えてるって、どんだけ――!?

 フルネームで呼ばれた男はそれだけで満足したのか、私の顔をチラッと見てからその場を後にした。

「あの、有り難うございます……」

 とりあえず助けてもらったんだから、お礼を言って一礼する。

「これからは気を付けなさい」

 そう言って自分の部署に戻ろうとしたその人の腕に、ばっと手を伸ばした。ここであったが何とやら! 名前を聞くまではこの手を離さないもんね。

「あの……っ」

 上着の袖口をぎゅっと掴んだらすっごく驚いたらしく、振り向きながら振り払うように激しく腕を振る。その反動なのか分からないんだけど、その人の足が机の足に運悪く引っかかり、見事に転びそうになるのを発見!

 慌てて反対の手を伸ばしたけど男性ひとりを支えきれるワケがなく、思い切り一緒に倒れこんでしまった。

(――あれ? 倒れたけど痛くない……)

 恐るおそる見ると、その人の体の上にしっかり乗っかってる自分。目の前にいるその人は両手をバンザイして、これでもかと顔を赤くしていた。さっきとは別人みたい――

「倒れた弾みで、どこかに触ったりとかはないからっ! 全然、大丈夫だから////」

 そんなワケの分からない、言いワケまでする。

 これは神様が与えてくれたラッキーなのかもしれない!

 この状況を楽しみながら、思い切って訊ねてみた。

「あの、名前教えて下さい」

「訴えるために名前を聞いてるんでしょうか? ホントに、どこも触ってないですよ!」

「触ってないのは分かってます。私が個人的に知りたいだけなんです」

 クスッと笑いながら、その人の胸元に頬を寄せてあげた。

 さっきの大人な態度から一変したこの態度、すっごく可愛すぎるよ。

「何か策略があるんでしょう? オジサンをからかうのは、もうやめなさい」

 真っ赤になりながら、注意されても効果ないし。

「からかってないです。興味が沸いたんです」

 さっきは私を拒否するような視線だったのに、今はこんなに狼狽してるアナタに興味津々。

「断り続けて下さいよ今川部長。小悪魔がほくそ笑んでますから」

 後方にある別の入り口付近から声がした。私達を冷たく見下ろしている人物を知っている。

「こんな部署の入り口で何、押し倒されているんですか。誰かに見つかったら会長の耳に入って、どこかに飛ばされますよ」

 呆れた声で言うとソイツは私の脇を掴み、ベリベリ剥がしていく。

「何すんのよ、ホモ山田!」

「その呼び方、誤解を招くからやめて……」

 山田と言い争いになりかけた時、その人がやっと立ち上がった。呼吸を整えつつ、私達のやり取りを見ながら、

「君達は、知り合いなのかい?」

 のほほんとした様子で訊ねてくる。もしかして、興味をもってくれたとか!?

 目を輝かせてその人を見つめたら迷惑そうに眉根を寄せた挙句、ふいっと逸らされてしまって。この態度に、どうしていいか分からなくなってしまったのである。
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