5 / 83
act:意外な優しさ
2
しおりを挟む
***
(カマキリに何としてでも、一泡吹かせてやる!)
ぼんやりした頭をしっかり刺激すべく熱いコーヒー片手に、サクサク書類を作り上げた。朝から全力で頑張った。勿論それは時間が余るくらいの余裕ぶりで、目の前のデスクにいるカマキリに胸を張って書類を提出してやった!
(――よし、この勢いで次の仕事もやっつけちゃおっと)
「朝から、よく頑張ってたみたいだね」
いそいそと不要な書類を片付けていたら、隣で仕事をしている小野寺先輩に声をかけられた。
「実は昨日仕上げなきゃいけない書類を、今日になって急いで片付けていただけなんです」
肩を竦めながら言ったら、プッと苦笑いされてしまった。
「俺も君が来る前に、こってりと鎌田先輩にやられたもんなぁ。交代出来て、良かった良かった」
同じように肩を竦めて、小さな声で言う。
「それよりも君の仕事ぶりの良さとは正反対になってる本日の鎌田先輩に、何かアドバイスでもしてあげたら?」
「えっ?」
「パッと見はいつも通りに見えるんだけどさ、時々フリーズしたままになっているだよな」
「固まったまま、動かなくなっているんですか?」
「そうそう。何ていうか映像に出てる人を、一時停止ボタンで動きを止めた感じでさ。ま、固まっても長くて20秒くらいだけど、いつもより効率が悪いだろうね。あの人、大事な案件かかえているし、色々考えることがあるのかも」
腕組みをしながら、斜め前の鎌田先輩を見やる。
「そういう小野寺先輩は、仕事をしなくていいんですか?」
「後輩に仕事のことを心配される、俺って一体。大丈夫、午後から会議に使う書類の確認をしっかりしながら、本日の記念日に向けていろいろ考えてるんだ」
仕事の合間に? 小野寺先輩ってば器用だな。
「今日は彼女と付き合って、一ヶ月記念日なんだよ。俺ってばギター弾けるからさ、作詞作曲して彼女に捧げる歌を作っててさぁ。男は恋をすると詩人になるのかも」
白い眼で見ているのにも関わらず聞いてもいないことを、得意げに次々と話し出していく。正直なところ私としては、次の仕事がしたい。
ゴホゴホゴホッ!!
「鎌田先輩っ!?」
突然、鎌田先輩が激しく咳き込んだ。
心配になってデスクに回りこんでみると、目の前が白い何かでいきなり覆われた。よく見たらそれはさっきの書類で、鎌田先輩が突きつけたみたい。
恐るおそるそれを手にして窺うように鎌田先輩の顔を見たら、ちょっとだけ涙目で何気に苦しそうな表情を浮かべていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「飲み物が、少しだけ気道に入っただけです。心配いりません」
「……はぁ」
何だ、心配して損しちゃったかも。
そんなことを思っていたら持っている書類の上の部分に指を差し、ギロリと睨んでくる。涙目のままなのであまり怖くはなかったけれど、何かを指摘されるのは今までの経験上分かっていたので、体を小さくして小言に備えた。
「それよりもここ、間違っています。見ている資料が違うのかもしれませんので、きちんと確認してきて下さい」
「分かりました、資料室に行ってきます」
あーあ、またしても完璧に仕事をこなせなかった。ドジっちゃった――
しょんぼりしながら肩を落として、資料室に向かったのだった。
(カマキリに何としてでも、一泡吹かせてやる!)
ぼんやりした頭をしっかり刺激すべく熱いコーヒー片手に、サクサク書類を作り上げた。朝から全力で頑張った。勿論それは時間が余るくらいの余裕ぶりで、目の前のデスクにいるカマキリに胸を張って書類を提出してやった!
(――よし、この勢いで次の仕事もやっつけちゃおっと)
「朝から、よく頑張ってたみたいだね」
いそいそと不要な書類を片付けていたら、隣で仕事をしている小野寺先輩に声をかけられた。
「実は昨日仕上げなきゃいけない書類を、今日になって急いで片付けていただけなんです」
肩を竦めながら言ったら、プッと苦笑いされてしまった。
「俺も君が来る前に、こってりと鎌田先輩にやられたもんなぁ。交代出来て、良かった良かった」
同じように肩を竦めて、小さな声で言う。
「それよりも君の仕事ぶりの良さとは正反対になってる本日の鎌田先輩に、何かアドバイスでもしてあげたら?」
「えっ?」
「パッと見はいつも通りに見えるんだけどさ、時々フリーズしたままになっているだよな」
「固まったまま、動かなくなっているんですか?」
「そうそう。何ていうか映像に出てる人を、一時停止ボタンで動きを止めた感じでさ。ま、固まっても長くて20秒くらいだけど、いつもより効率が悪いだろうね。あの人、大事な案件かかえているし、色々考えることがあるのかも」
腕組みをしながら、斜め前の鎌田先輩を見やる。
「そういう小野寺先輩は、仕事をしなくていいんですか?」
「後輩に仕事のことを心配される、俺って一体。大丈夫、午後から会議に使う書類の確認をしっかりしながら、本日の記念日に向けていろいろ考えてるんだ」
仕事の合間に? 小野寺先輩ってば器用だな。
「今日は彼女と付き合って、一ヶ月記念日なんだよ。俺ってばギター弾けるからさ、作詞作曲して彼女に捧げる歌を作っててさぁ。男は恋をすると詩人になるのかも」
白い眼で見ているのにも関わらず聞いてもいないことを、得意げに次々と話し出していく。正直なところ私としては、次の仕事がしたい。
ゴホゴホゴホッ!!
「鎌田先輩っ!?」
突然、鎌田先輩が激しく咳き込んだ。
心配になってデスクに回りこんでみると、目の前が白い何かでいきなり覆われた。よく見たらそれはさっきの書類で、鎌田先輩が突きつけたみたい。
恐るおそるそれを手にして窺うように鎌田先輩の顔を見たら、ちょっとだけ涙目で何気に苦しそうな表情を浮かべていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「飲み物が、少しだけ気道に入っただけです。心配いりません」
「……はぁ」
何だ、心配して損しちゃったかも。
そんなことを思っていたら持っている書類の上の部分に指を差し、ギロリと睨んでくる。涙目のままなのであまり怖くはなかったけれど、何かを指摘されるのは今までの経験上分かっていたので、体を小さくして小言に備えた。
「それよりもここ、間違っています。見ている資料が違うのかもしれませんので、きちんと確認してきて下さい」
「分かりました、資料室に行ってきます」
あーあ、またしても完璧に仕事をこなせなかった。ドジっちゃった――
しょんぼりしながら肩を落として、資料室に向かったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
その卵焼き俺にも食わせろ!―ワンナイトラブから逃げたはずなのに、契約で縛られてました!?―
鷹槻れん
恋愛
新沼 晴永(にいぬま はるなが/36)は俺様上司として恐れられる鬼課長。
そんな彼に毎日のように振り回されるのが、犬猿の仲(だと彼女が勝手に思っている)部下の小笹 瑠璃香(こざさ るりか/28)だ。
飲み会の夜、酔ってふにゃふにゃになった瑠璃香を晴永がまんまと持ち帰り――翌朝待っていたのはワンナイトの証拠と契約結婚の書類!?
晴永には逃げようとする瑠璃香を逃がすつもりはないらしい!?
笑いと誤解と契約の、ドタバタラブコメディ!
○表紙絵は市瀬雪さんに依頼しました♥(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
冷徹社長の「契約」シンデレラ~一夜の過ちから始まる溺愛ルート!? 嘘つきな私と不器用な御曹司のオフィスラブ~
藤森瑠璃香
恋愛
派遣社員の桜井美月は、ある夜、会社の懇親会で泥酔し、翌朝目覚めると隣には「氷の彫刻」と恐れられる若き社長・一条蓮がいた。まさかの一夜の過ち(実際には何もなかったが、美月は勘違い)に青ざめる美月に、蓮は「責任は取る。だがこれは恋愛ではない、契約だ」と、彼の抱えるある事情のため、期間限定で恋人のフリをするよう持ちかける。破格の報酬と蓮の真剣な様子に、美月は契約を受け入れる。
イケメン副社長のターゲットは私!?~彼と秘密のルームシェア~
美和優希
恋愛
木下紗和は、務めていた会社を解雇されてから、再就職先が見つからずにいる。
貯蓄も底をつく中、兄の社宅に転がり込んでいたものの、頼りにしていた兄が突然転勤になり住む場所も失ってしまう。
そんな時、大手お菓子メーカーの副社長に救いの手を差しのべられた。
紗和は、副社長の秘書として働けることになったのだ。
そして不安一杯の中、提供された新しい住まいはなんと、副社長の自宅で……!?
突然始まった秘密のルームシェア。
日頃は優しくて紳士的なのに、時々意地悪にからかってくる副社長に気づいたときには惹かれていて──。
初回公開・完結*2017.12.21(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.02.16
*表紙画像は写真AC(かずなり777様)のフリー素材を使わせていただいてます。
美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
花里 美佐
恋愛
★神崎 蓮 32歳 神崎造船副社長
『玲瓏皇子』の異名を持つ美しき御曹司。
ノースサイド出身のセレブリティ
×
☆清水 さくら 23歳 名取フラワーズ社員
名取フラワーズの社員だが、理由があって
伯父の花屋『ブラッサムフラワー』で今は働いている。
恋愛に不器用な仕事人間のセレブ男性が
花屋の女性の夢を応援し始めた。
最初は喧嘩をしながら、ふたりはお互いを認め合って惹かれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる