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act:意外な展開
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ヘロヘロになった体を引きずったまま、次の日を迎えてしまった。
正直、よく眠れなかった。考えれば考える程、昨日のふたりのやり取りが意味不明だったから。
資料室から部署に戻ったら鎌田先輩の姿は部署にはいなくて、予定表には出張→直帰と書かれてあった。小野寺先輩もどこかにでかけたのか、定時まで部署に戻ってこなかった。
「おはようございます……」
恐るおそる部署に入る。そこには鎌田先輩の姿はなく、小野寺先輩がいつもの爽やかな笑顔でほほ笑んできた。
「おはよう!」
その様子にウッと思いながら、自分の席に着く。
「昨日俺が去った後、どうなった?」
何故だかワクワクした顔で、問いかけてくる。しかも机に頬杖付いたまま、こっちを楽しそうに見つめるまなざしに、嫌悪感しか沸かない。
そのあまりな態度に目を合わせず、
「別に……。何もなかったですよ」
素っ気なく答えたら、ずっこける格好をした小野寺先輩。
「はぁ? どうして何もないんだよ……おかしいだろ」
なぁんて、のん気に言われても。
「この間の話、もしかして信じちゃった?」
どこか楽し気に聞いてきた言葉の意味が分からず、小首を傾げる。
「引き出しのプレゼントが、元カノから貰ったモノだったって話」
その台詞にあの時の事を思い出し、胸の奥がキリキリと痛んだ。
「ああ、別に。そんなの信じてませんけど」
「真実、知りたいと思わない?」
「……別に」
聞きたくない話だったから顔を背けて仕事を始めようと書類を手にした私を見て、小野寺先輩はため息をついた。
「鎌田先輩といい山本さんといい、どうして素直になれないのかねぇ」
呆れたような物言いをし、デスクをばしばし叩きはじめた。
「俺は君の恋愛、応援しているつもりなんだけどさ」
「じゃあ昨日のは、何だったんですか?」
まったくもって、さっぱりワケが分からない。
「昨日の敵は、今日は味方って感じ!」
「はぁ!?」
「あのプレゼントは元カノから貰ったモノじゃなく、誰かにあげようとして隠されていたモノだと、俺は思うね」
そう言うと小野寺先輩は席を立ち、部署の扉に向かう。
「もっと素直になって、よぉく考えてみなよ。鎌田先輩に疑問点を聞いてみれば、あっさり解決するって」
疑問点……たくさんありすぎて、どこから聞いたらいいか正直分かりません。
「昨日は、いろいろとごめんね」
手を合わせて謝るポーズをして、逃げるように出て行った。
謝るくらいなら最初からするな!
そんなセリフを大声で叫びたくなるのを堪えるのに、必死になってしまったのだった。
ヘロヘロになった体を引きずったまま、次の日を迎えてしまった。
正直、よく眠れなかった。考えれば考える程、昨日のふたりのやり取りが意味不明だったから。
資料室から部署に戻ったら鎌田先輩の姿は部署にはいなくて、予定表には出張→直帰と書かれてあった。小野寺先輩もどこかにでかけたのか、定時まで部署に戻ってこなかった。
「おはようございます……」
恐るおそる部署に入る。そこには鎌田先輩の姿はなく、小野寺先輩がいつもの爽やかな笑顔でほほ笑んできた。
「おはよう!」
その様子にウッと思いながら、自分の席に着く。
「昨日俺が去った後、どうなった?」
何故だかワクワクした顔で、問いかけてくる。しかも机に頬杖付いたまま、こっちを楽しそうに見つめるまなざしに、嫌悪感しか沸かない。
そのあまりな態度に目を合わせず、
「別に……。何もなかったですよ」
素っ気なく答えたら、ずっこける格好をした小野寺先輩。
「はぁ? どうして何もないんだよ……おかしいだろ」
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「この間の話、もしかして信じちゃった?」
どこか楽し気に聞いてきた言葉の意味が分からず、小首を傾げる。
「引き出しのプレゼントが、元カノから貰ったモノだったって話」
その台詞にあの時の事を思い出し、胸の奥がキリキリと痛んだ。
「ああ、別に。そんなの信じてませんけど」
「真実、知りたいと思わない?」
「……別に」
聞きたくない話だったから顔を背けて仕事を始めようと書類を手にした私を見て、小野寺先輩はため息をついた。
「鎌田先輩といい山本さんといい、どうして素直になれないのかねぇ」
呆れたような物言いをし、デスクをばしばし叩きはじめた。
「俺は君の恋愛、応援しているつもりなんだけどさ」
「じゃあ昨日のは、何だったんですか?」
まったくもって、さっぱりワケが分からない。
「昨日の敵は、今日は味方って感じ!」
「はぁ!?」
「あのプレゼントは元カノから貰ったモノじゃなく、誰かにあげようとして隠されていたモノだと、俺は思うね」
そう言うと小野寺先輩は席を立ち、部署の扉に向かう。
「もっと素直になって、よぉく考えてみなよ。鎌田先輩に疑問点を聞いてみれば、あっさり解決するって」
疑問点……たくさんありすぎて、どこから聞いたらいいか正直分かりません。
「昨日は、いろいろとごめんね」
手を合わせて謝るポーズをして、逃げるように出て行った。
謝るくらいなら最初からするな!
そんなセリフを大声で叫びたくなるのを堪えるのに、必死になってしまったのだった。
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