残火―ZANKA―愛しさのかたち

相沢蒼依

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蒼い炎

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 気づいたら彼を好きになっていた。同性を好きになることがはじめてで、最初は自分がおかしくなったんじゃないかと悩んだりもした。

 けれどそんな悩みを忘れるくらいに、彼に夢中になった。それなのに――。

『愛してる、穂高さん』

 彼には恋人がいて、俺のことは仲のいい友人という間柄を、きっちり態度で示された。それをなんとか打破したくて、彼に何度も告白したのに、俺の目の前で迷惑そうな表情を浮かべながら、強い口調で断られてしまった。

 諦めようとすればするほどに、彼に対する気持ちがどんどん募っていく。それは不思議な感覚だった。

 行き場のない想いが胸の中を支配し、あまりの苦しさに壁に寄りかかりながら、きゅっと下唇を噛み締めたとき、胸の奥底で何かが光り輝いた。それを確認すべく目をつぶり、じっと見てみる。

 最初は白っぽかったのに、徐々に蒼みを増していき、心の中でメラメラと燃えはじめた。

(これは……アキさんを想う俺の気持ちなのかな? どこか寂しげな色だけど、それでも――)

 音を立てて煌くように燃え盛っているこの炎を使って、君を奪うことができるのなら本望だ。

 蒼い炎のおかげで、グラつく心に決心がつく。彼に向かって真っ直ぐ、突き進む決心ができた。その結果――。

『君のしたことで、千秋の心に傷が付いたんだろう。それだけじゃない、君の想いが彼の全部を焼き尽くしてしまったんだ』

「俺の想いが、アキさんの全部を壊し、た……?」

『ああ。千秋からいろいろ聞いてる。君が言ってた蒼い炎のことだ。普通の炎よりも温度が高いから、そういう表現を使ったと思うのだが、俺からすると狂うほうの狂気にしか見えないね。その高い温度で、なんでも溶かせてしまうんだ。自分の中にある冷静な判断力を溶かして失わせ、終いには愛する千秋まで壊してしまったのだから。君の想いは、狂気であり凶器だと思う』

「きょうき……俺の想いが……大事なアキさんを、壊して、こわし、そんな、の……違ぅっ!」

 最初はしでかしてしまった事の重大さと、目の前の現実を受け入れられなかった。でも彼の恋人に告げられたセリフで、自分が間違っていたことに気づき、彼の恋人に平身低頭で謝罪をした。そして逃げるように大学を中退。大好きだった彼と距離をとるべく、遠くに就職したのだった。
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