純愛カタルシス💞純愛クライシス

相沢蒼依

文字の大きさ
43 / 126
冴木学の場合

38

しおりを挟む
♡♡♡


「美羽姉、行ってらっしゃい❤」

 天使の翼を嬉しそうに羽ばたかせた、めちゃくちゃ元気な学くんに見送られた私は、気だるい体を引きずりながら、腰を擦りつつ会社に出勤した。

(仲直り諸々含んだエッチとはいえ、休憩なしにぶっ通しというのは、学くんにちょっと考えてもらわないと、私の体がもたない……)

 回数を重ねる毎に余裕が出てきたのか、学くんはまごつくことなく行為をし、絶頂したと思ったら、どこからともなくゴムを取り出して手際よく着脱し、またはじまるを繰り返すため、まったく休憩がなかった。

『美羽大好き』『美羽かわいい』などなど、待ったを入れようとしたタイミングであれこれ告げられるため、なおさら始末に負えない。

「おはようございます……」

 学くんのことに困惑しながら部署に顔を出すと、そこにいた全員が私の顔を一斉に見る。

(――ちょっとなに? 突き刺すような視線ばかりのような気がする)

 あまりの雰囲気の悪さに足を止めて、その場に立ち止まると、深刻そうに眉根を寄せた高木さんがやって来た。

「小野寺ちゃん、おはよ。朝からトラブル発生でさ。堀田課長の奥さんが来てる。小野寺ちゃんが名指しされてるよ」

「堀田課長の奥さん?」

 昨日のことを、私が騒ぐならわかる。なぜ堀田課長の奥さんが会社に乗り込んできて、騒ぎを起こすことをしているのか。そしてこんなに大騒ぎになっているのに、堀田課長はどこにいるのやら――。

「貴女が小野寺さん?」

 高木さんの背後から、小柄な女性が顔を覗かせた。160センチの私より背の低い女性が、睨みをきかせて低い声で呼びかける。かわいいというよりも、清楚で綺麗な感じの女性だった。

「はい、そうです」

 言いながら周囲を見渡したら、ひそひそ話と一緒に、好奇な視線を注がれる。朝っぱらから、なにをどうしたら、こういうことになるのやら。

(これって、アレか。正妻VS愛人ということで、堀田課長の取り合いをしてるような状況ってこと?)

 思いっきりめんどうなことに自動的に巻き込まれ、心の底からうんざりする。後悔してもあとの祭り。堀田課長の愚痴に、最初から付き合わなきゃよかった話なんだから。

「済まないね、小野寺さん。ちょっと話を聞かせてもらえるかな?」

 田所部長が堀田課長の奥さんと私の間に入り込み、蛍光灯で光る頭を撫でながら愛想笑いを浮かべた。

「田所部長とお話する前に、奥様に聞きたいことがあります」

「なにかしら?」

 胸の前に腕を組み、気だるそうに答えた奥さんに向かって、真摯に問いかけた。

「堀田課長とうまくいっていない話を、私は相談されていました。実際のところは、どうだったのでしょうか?」

「うまくいってないですって!? 貴女、なに作り話してんのよ! 私たちは誰がどう見ても円満よ」

 金切り声で喚かれても、それが本当かどうかもわからない。当の本人がいないわけだし、証明しようがない。

「円満ですか、なるほど。では、これを聞いてください」

 カバンからボイスレコーダーを取り出し、一番最初の部分を再生した。

『恥ずかしい話なんだけど昨日の夜、妻に迫ったら断られちゃってね。『アンタと結婚したのは、お金が目当てだったの。下手くそなくせに、手を出してこないでよ』なんて言われてしまってさ。僕を好きで結婚してくれたんじゃなかったことが、思った以上にショックだったんだ』

「なっ、なによこれ! あの人がこんなことを言うなんて。まったくのでたらめだわ!」

 堀田課長の奥さんが顔色を変えて、瞳に涙を滲ませる。かわいそうだと思いつつも、確かめなければならないことがあるので、続きを聞かせた。

『妻が僕に気がないのに、このまま結婚生活を続けていくのが、どうにもつらくなって。それで小野寺さんに、相談してみようと思ったんだけど……』

 ここで停止ボタンを押して、田所部長を見ながら訊ねる。

「これがそのとき相談されたことになります。田所部長、証拠になりませんか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

雨はまだ降り続いている…〜秘密の契約結婚〜

和泉 花奈
恋愛
主人公の観月 奈緒(25)は、ある日突然仕事に行けなくなり、ずっとお家の中に引きこもっている。 そんな自分を変えたくて足掻き苦しんでいるが、なかなかあと一歩が踏み出せずにいる。 勇気を出して家から出た奈緒は、たまたまぶつかった須藤 悠翔という男に出会い、運命が大きく揺れ動く。 ※突然で申し訳ないのですが、投稿方式を変えました。 これまで1〜3話をまとめて1話にしておりますが、各話1話ずつそれぞれで公開することにしました。 急な変更に伴い、読者の皆様にご迷惑をお掛けして申し訳ございません。 これからも引き続き作品の応援をよろしくお願い致します。                   2025/10/21 和泉 花奈

処理中です...