51 / 126
冴木学の場合
46
しおりを挟む
「学くんは彼女が私に謝ってることを、いまさらなにをしてるんだろうって思ってるんだ?」
「そうは思ってない、そのことじゃなくて――」
「私が彼女を責めているこの現状を見て、今さら感が拭えないのかな?」
「あ~、それに近い感じかも……」
うまい言葉が出てこない戸惑いまくりの俺に、美羽姉がいい感じのセリフを言ってくれた。ぴったりではなかったが、それに乗っかることにする。
「…………彼女を庇うんだね?」
なぜだか俺が思った返答がもらえなくて、違うところから矢が飛んできた気分だった。なにかを言えば言うほど、空回りしているのがわかり、両手を動かしながら説得を試みる。
「美羽姉、勘違いしないで。俺は庇ってるつもりはまったくない。悪いことをしたんだから、若槻さんが謝るのは当然のことだろ」
「学くん、言ってることが支離滅裂になってる」
「美羽姉が謝ってる若槻さんを、ねちねち責めてる姿を見たくないだけ。その気持ちになるのはわかるつもりだけど、終わったことをとやかく言っても、もとには戻らないだろ。肝心なのは、これからじゃないのかな」
「今度は私を責めてる。私が悪いんだね、私はどうすればいいわけ?」
怒った顔がどんどん悲しげなものに変化していくことに、ひどく困惑する。俺としては、若槻さんを庇っているつもりはないし、美羽姉を責めていないのに、俺の言ったことがなぜか違う意味にとられてしまう。ふたりにこれ以上争ってほしくない気持ちで、間に入っているだけなのに。
「だから違うって。むしろ美羽姉は被害者なんだし、全然悪くないだろ」
「白鳥、もうやめなよ。アンタが言えば言うほど、彼女さんがどんどん悪くなっていくだけなんだよ。悪いのは全部私でしょ。彼女さんとやり合うのは間違ってる」
若槻さんの指摘に、言いかけていた言葉を飲み込んだ。
「白鳥の優しさは、彼女さんだけに向けられなきゃダメなんだって。私にまでいい顔して、どっちつかずでいたら、彼女さんを不安にさせるだけなの。この状況、私が彼女さんの立場なら、白鳥と別れてるからね」
「えっ? なん……別れる?」
告げられた言葉が信じられなくて美羽姉を見たら、黙ったまま首を縦に振った。
「み、美羽……俺と別れる、の?」
「そうね。学くんと別れて、副編集長さんとお付き合いしたほうが、精神衛生上いいかもしれない」
(なんでここで、副編集長の名前が出てくるんだ? 俺はどうすれば別れを回避することができる?)
ぐっとこみ上げてくるものがあり、鼻を啜ってそれをやり過ごした。
「彼女さん、提案があります。今回のこと、副編集長に報告しようと思います」
凛とした若槻さんの声が、妙に耳に残った。最初に美羽姉と対峙したときとは違い、今の若槻さんは仕事をしているときのエネルギッシュな様子だった。しょぼくれた俺とは対照的なそれを見、余計に落ち込んでしまう。
「そうは思ってない、そのことじゃなくて――」
「私が彼女を責めているこの現状を見て、今さら感が拭えないのかな?」
「あ~、それに近い感じかも……」
うまい言葉が出てこない戸惑いまくりの俺に、美羽姉がいい感じのセリフを言ってくれた。ぴったりではなかったが、それに乗っかることにする。
「…………彼女を庇うんだね?」
なぜだか俺が思った返答がもらえなくて、違うところから矢が飛んできた気分だった。なにかを言えば言うほど、空回りしているのがわかり、両手を動かしながら説得を試みる。
「美羽姉、勘違いしないで。俺は庇ってるつもりはまったくない。悪いことをしたんだから、若槻さんが謝るのは当然のことだろ」
「学くん、言ってることが支離滅裂になってる」
「美羽姉が謝ってる若槻さんを、ねちねち責めてる姿を見たくないだけ。その気持ちになるのはわかるつもりだけど、終わったことをとやかく言っても、もとには戻らないだろ。肝心なのは、これからじゃないのかな」
「今度は私を責めてる。私が悪いんだね、私はどうすればいいわけ?」
怒った顔がどんどん悲しげなものに変化していくことに、ひどく困惑する。俺としては、若槻さんを庇っているつもりはないし、美羽姉を責めていないのに、俺の言ったことがなぜか違う意味にとられてしまう。ふたりにこれ以上争ってほしくない気持ちで、間に入っているだけなのに。
「だから違うって。むしろ美羽姉は被害者なんだし、全然悪くないだろ」
「白鳥、もうやめなよ。アンタが言えば言うほど、彼女さんがどんどん悪くなっていくだけなんだよ。悪いのは全部私でしょ。彼女さんとやり合うのは間違ってる」
若槻さんの指摘に、言いかけていた言葉を飲み込んだ。
「白鳥の優しさは、彼女さんだけに向けられなきゃダメなんだって。私にまでいい顔して、どっちつかずでいたら、彼女さんを不安にさせるだけなの。この状況、私が彼女さんの立場なら、白鳥と別れてるからね」
「えっ? なん……別れる?」
告げられた言葉が信じられなくて美羽姉を見たら、黙ったまま首を縦に振った。
「み、美羽……俺と別れる、の?」
「そうね。学くんと別れて、副編集長さんとお付き合いしたほうが、精神衛生上いいかもしれない」
(なんでここで、副編集長の名前が出てくるんだ? 俺はどうすれば別れを回避することができる?)
ぐっとこみ上げてくるものがあり、鼻を啜ってそれをやり過ごした。
「彼女さん、提案があります。今回のこと、副編集長に報告しようと思います」
凛とした若槻さんの声が、妙に耳に残った。最初に美羽姉と対峙したときとは違い、今の若槻さんは仕事をしているときのエネルギッシュな様子だった。しょぼくれた俺とは対照的なそれを見、余計に落ち込んでしまう。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる