純愛カタルシス💞純愛クライシス

相沢蒼依

文字の大きさ
58 / 126
恋愛クライシス 一ノ瀬成臣の場合

5

しおりを挟む
☆☆☆

 編集部の空気がえらく悪かった。原因を作ってるのは、俺自身なんだが。

「あーもう! 初夜を失敗してまったく使い物にならない白鳥は別として、一ノ瀬はいい大人なんだから、さっさと気持ちを切り替えなさいよ!」

(あーあ、白鳥のヤツ、初夜を失敗したことが、編集部のみんなにバレちゃったじゃないか……)

「切り替えてる、ちゃんと仕事をしただろ」

「この女のコの写真を見ても勃起はおろか、ヌくことのできないものだって言ってるの!」

「ほほぅ。アキラのモノが、ついに役にたたなくなったってわけか」

 へらっと笑ってバカにしても、なんのその。副編集長はデスクに写真を叩きつけるなり、両手で頭を掻き毟る。

「あー、イライラする!わかってないわね。この写真から、まーったく色気を感じないし、エロさが皆無だって言ってるのよ! ただのお人形さんの写真にしか見えないわ」

「お人形さんでもヌけないとなると、相当大変そうだ」

 カラカラ笑った俺の肩を、誰かが力強く叩いた。振り返るとそこにいたのは編集長で、額に青筋が薄ら見えている状態だった。

「えっと、編集長……。そんなに怒らせることを、俺はしましたかね?」

「現に今、アキラが指摘しただろ。雑誌にグラビアは欠かせないページなんだ。それを疎かにするヤツは、ここにはいらない。一ノ瀬、わかってんだろうな?」

 編集長に肩を叩かれた時点で、相当ヤバいことがわかったのだが。

「すみません、気の抜けたグラビアしか撮れなくて」

「下手ないいわけしない分だけ、まだマシだと言える。それでこれから、どうするんだ?」

 俺よりも身長の高い編集長の視線。若いのに妙な迫力があり、見下ろされるそれを直に受けて、まぶたを伏せながら両拳を握りしめた。編集長という立場で不甲斐ない俺に檄を飛ばしていることに感謝しなければならないし、挽回するにはいつもどおりの仕事をすればいいだけなのだが。

「ちょっとタンマ!」

 言いながら副編集長が俺の前に立ちはだかって、編集長の視線を遮ってくれた。

「アキラ、邪魔だぞ。友情物語は他所でやってくれ」

「そんなことわかってるわよ。とりあえず一ノ瀬のメンタルをなんとかして持ちあげるから、それまで待ってもらえる?」

「コイツの替えはいるんだ。今さらおまえが無理しなくてもいい」

「そんなのわかってるわよ! だけど一ノ瀬にしか撮れないエロがあって、それを楽しみにしてる読者がいるの!」

「読者だと? おまえ自身のことについて、声を大にして言われてもな」

「だけど立派な理由になるわよね?」

 目の前にある、薄毛がちょっとだけ進んだ後頭部を眺めた。

(アキラのバカ。ただでさえ苦労しているというのに、わざわざ俺の世話までしなくてもいいだろうよ)

「友人じゃなく副編集長として、一ノ瀬をなんとかしろ。これは命令だ」

 舌打ちまじりに告げた編集長が去って行き、面倒ごとから解放されたことにホッとした瞬間。

「成臣、わかってんだろうな、てめぇ……」

 キャラ変した副編集長が、目をギラつかせながら、振り返ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...