純愛カタルシス💞純愛クライシス

相沢蒼依

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番外編

文藝冬秋編集長 伊達誠一12

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 超絶イラッとしたので、そのまま編集部に乗り込んでやろうと思い、足を一歩踏み出したら。

「これはこれは文藝冬秋の編集長さん、もうお帰りなんですか~! 中途半端に仕事を終わらせて、あとは優秀な臥龍岡ながおか副編集長に丸投げするって、いいご身分ですねぇ」

 伊達編集長の煽りをそのまま返したさっちゃんに、どうにも驚きを隠せない。

(この人たち、いったいなにをしているの? ふたり付き合ってるんでしょ?
 なんで会社で罵り合っているのよ?)

 伊達編集長が閉じた扉を、音を立てないように少しだけ開き、隙間から中の様子を覗いてみる。

 ウチの編集長は胸の前に腕を組み、さっちゃんのデスクの前に立ち竦んでいた。そんな彼を社会部の編集長として迎え撃つように、ふんぞり返って椅子に座り、面白くなさそうな表情で見上げる姿が目に留まる。

「伊達編集長、明日の編集長会議は、もちろんバッチリなんでしょうね」

 さっちゃんからの挑むまなざしを受けたウチの編集長は顎をあげて、相手を小馬鹿にするみたいに見下ろした。

「もちろん成果をあげてる。上條良平のインタビュー記事のほかにも、彼のその後の様子を掲載したおかげで、巻き返しを図ることができた。それに極秘のネタについても随時張り込み中で、他社の追随を許さない」

「まるでご自分の手柄のように言ってますけど、それを手掛けているのは臥龍岡ながおか副編集長なんでしょう?」

「アキラを副編集長に抜擢したのは、この俺だ。俺の仕事の早さについていける手腕を、アイツは持ち合わせているからな」

「(o゚ェ゚)・;'.、ブッ 」

 声にならない声が出てしまい、慌てて口元を押さえる。ハッキリ言いきった伊達編集長のセリフに、頬が赤くなったのがわかった。

 他所の編集部で、こんなふうに褒められたことを知ってしまったら、ライバルとして敵対することができなくなりそうな気がした。

「それで雲母編集長は、あとどれくらいで仕事が終わりそうなんですか?」

「私をねぎらうために食事に誘いたいのなら、もう少しマシな誘い方があるでしょうに」

「そういうかわいくないことを言ってると、どこかの誰かさんみたいに行き遅れますよ」

「ふふっ、ご自分のことを仰ってるのかしら?」

(あ~あ、こんなくだらないやり取りを展開される中で、絶対に仕事したくないわね)

 開けた扉をゆっくり締めかけたら、隙間から長い指が唐突に差し込まれ、グイッと大きく開かれる。

「臥龍岡は本当に尾行が下手だよな、昔っから。殺気がこっちにダダ漏れしてたぞ」

 至近距離で顔を寄せられた衝撃は、マジで心臓に悪かった。ヤバいと察して、逃げかける俺の首を鷲掴みする手の大きいこと! 背がでかいから、ムダにてのひらも同じようにでかいのかもしれない。

「臥龍岡逃げんな、どうして俺のあとをつけたりしたんだ?」

「きょきょ興味本位よ! それ以上も以下もないわ!」

「俺の命令に背き、興味本位であとをつけた代償は、どうしたらいいだろうな」

 伊達編集長のてのひらに力が込められたせいで、俺の首をじわりじわりと締めあげる。
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