純愛カタルシス💞純愛クライシス

相沢蒼依

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番外編

文藝冬秋編集長 伊達誠一14

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 俺は握られた手を引っ張り、細身の体をぎゅっと抱きしめた。

「あんなの気にする必要ない。無理にぶっ刺して、痛みがトラウマになることだってあるんだし、それよりも気持ちよさに身をまかせてほしいと思ったんだ。俺に触れられて、愛されてるっていう実感を覚えてほしくて」

 彼女のセリフを使って説明したほうが伝わりやすいと考えたので、あえて使ってみた。

「でも実際、めんどくさいでしょ? それ系の雑誌に載ってるのを読んだの。処女相手はいろいろ気を遣うから、めんどくさいって」

「俺はめんどくさいとは思わない。むしろ俺色に染める楽しさを感じる」

(20代前半の恋愛に余裕のない俺だったら、サヨを自分のものにすべく、無理やりぶっ刺していただろうな)

 あえてそのことを言わずに、今の俺自身が思っていることを口にした。

「誠一さんってヤり慣れてるから、そんなことが言えるんじゃ……」

「そう思われても仕方ないが、実は姉ふたりがいてさ。女のコの接し方について煩く指導を受けてる身として、それを実戦してるだけなんだ」

 俺の胸の中から顔をあげたサヨは、驚いた様子で目を何度も瞬かせる。

「お姉さんがふたりも?」

「そう。だから女性の生態っていうか、装ってるところや、あざとさもすべてわかってしまって、付き合ってるとそういう部分を目にしてたら、恋愛してても冷めてしまう」

「……私とは、大丈夫ですか?」

 俺のセリフを聞いたあと、少しの間をおいて訊ねられた言葉に笑ってみせた。

「サヨは今まで付き合った女性とは、なんか違うんだよな。予測不可能っていうか」

「え?」

 きょとんとしたサヨがやけにかわいく見えてしまい、思わず顔を寄せてキスしてしまった。まだ会社の駐車場にいる現状で、こういう行動を俺にとらせることも、すごいと思わされる。

 週刊誌の編集長として、他人の粗探ししてる身だからこそ、自身の隙を見せないように日々過ごしているというのに。

「誠一さん?」

「そこがめちゃくちゃツボで、魅力になってる。俺を永遠に笑わせることができるのは、サヨだけだ」

「笑わせる、だけ?」

「普段笑わない俺を笑わせるだけでも、相当すごいことなんだけど」

 サヨの額に自分の額を当ててほほ笑む。きっとこの場面を盗撮されたら、間違いなくお忍びデートをしていると記事に書かれること間違いなし!

「そんな誠一さんの笑顔を、こうして間近で見ることのできる私は幸せ者です」

「嬉しいことを言ってくれる。こんな笑顔くらい、いくらでも見せてやるのに」

「じゃあ、一生見せてください!」

 真剣なまなざしを注がれながらぶつけられた直球に、思いっきり息を飲む。

「誠一さんの笑顔も泣き顔も困った顔も全部、ずっと傍で見たいです!」

「困ったな……」

 まんまプロポーズみたいなセリフを、サヨに先に言われてしまったことに、どうにも戸惑いを隠せない。

「ダメですか?」

「だったらサヨもこれからは、俺以外と恋愛しないことを誓ってくれ」

 事前にときめくようなセリフを考えておけばよかったと、後悔してもすでに遅い。ありきたりすぎることを言ってしまって、内心ゲンナリする。

「もちろんです! 私は誠一さんだけ、ずっとずっと愛し続けることを誓います!!」

「ぉ、おう。じゃあ近いうちにサヨの実家に挨拶がてら、顔を出そうかな」

「今夜でもいいですよ!」

「はい?」

「いつも送ってくれるじゃないですか。うちの両親、扉の外でちゃっかり見てるんですよ。私たちのこと」

 実家住まいのサヨをいつも送ってはいたが、さりげなくその様子を覗かれていたとは。自宅前なので卑猥系な行為をしてはいないが、別れがたくてつい車の中で喋り込んでしまうこともしばしばあった。

「わかった。ものすごく気にされている期待に応えて、挨拶するよ……」

 こうして俺はサヨと結婚を前提にお付き合いすることが自然と決まり、ひとりきりで過ごしていた日々と、そのうちお別れすることになった。

 この一連の流れの立役者であるウチの副編集長には、しばらくの間だけ頭があがらなそうな気がする。アイツの分まで幸せになって、自慢してやるところまで計画中だ。

愛でたし♡愛でたし
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