この想いは蜜よりも甘く――

相沢蒼依

文字の大きさ
44 / 51
番外編

聖夜当日2

しおりを挟む
 榊はふわりと笑ってから、和臣の髪にキスを落とした。

「だからね、そんな恭ちゃんを独り占めできることが嬉しくて、いつものようにゴックンさせないで、顔射しちゃったんだ。僕のものってね」

 榊を見つめる和臣の視線から執着心を感じて、思わず微笑んでしまう。

「そうだったのか。てっきり俺のタイミングが悪くて、口から外れたんだと思った」

「自己満でやっちゃったけど、いきなりは嫌だったでしょ?」

「そんなことない。ほかのヤツが見られない、もっとエロいことをする和臣を、俺にたくさん見せてほしい」

 そう強請ったものの、重だるい躰を動かすことができず、嬉しげに瞳を細めて、和臣を見つめ返すのが精一杯だった。

「僕も恭ちゃんにお願いがあるんだ。今日一緒に買い物することで」

「今日の買い物?」

 和臣からのクリスマスプレゼントは、今日一緒に買い物しながら決めようという、口約束をしていた。てっきり、もう一回を強請られると思いついていただけに、榊としては内心安堵のため息をつく。

「僕ね、恭ちゃんのピアノが聞きたい」

 片腕に躰をそっと寄せながら告げられた言葉に、榊の両目が大きく見開かれた。

「恭ちゃんのピアノ、あれだけ上手に弾けるのに、このまま封印しておくなんて、やっぱりもったいないって思ったんだ。大きなピアノは値段の関係で購入できないけれど、電子ピアノなら買うことは可能だよ」

「和臣が俺のピアノを聞きたい、なんて……」

 寄り添う和臣の手が、榊の片手を掴む。指先をリズミカルに握りしめて、マッサージするように動かした。

「この指で華麗にピアノを奏でる格好いい恭ちゃんの姿を、いつでも見ていたいっていう、僕のワガママなんだけど」

 和臣の手によってにぎにぎされる榊の指先から、躰へと血が一気に押し出される感覚を覚える。心地いいそれは、躰の重だるさを吹き飛ばすものになった。

「それとも恭ちゃんに宿題を渡したほうが、やりがいがあるかなぁ?」

「うわぁ、なんかその言い方、なんとなく脅しに近くないか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

【完結】後悔は再会の果てへ

関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。 その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。 数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。 小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。 そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。 末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

処理中です...