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白熱する選挙戦に、この想いを込めて――
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しおりを挟む「有名人が恋人って、どんな感じですか?」
ぽんと投げかけてきた言葉に、マーカーしている手が止ってしまった。
「あっ、ゴメンなさい。相田さんお仕事していたのに、変な質問してしまって」
「いや……」
「ちょっと興味が湧いてしまって。大変なのかなぁって」
横目で彼女を見ると、頬杖をして前を向いたまま、上座にいる稜を見ているようだった。
「実際のところ、それなりに大変だけど……有名人だから、なんていうのを気にしなければ、そこら辺にいる恋人と変わらないと思うよ」
面倒くさくなる前に返答し、すぐさま作業を続行すべく書類に目を落としたら。
「そこら辺にいる恋人と変わらないって、言いたいことはわかりますけど、同性だからこその大変さがあるんじゃないですか?」
「変わりないです」
「だってほら、ああやって他の人と仲睦まじくしていたら、男女共々気になってしまうでしょ?」
(ああやって――?)
告げられた言葉に、書類から目の前に視線を移したら、稜がほほ笑みながら二階堂と顔を寄せ合い、なにかを話し込んでいる姿に、心がざわめいてしまった。
「普通の恋人は、ライバルは同性のみですけど、稜さんの場合は両方でしょ? モデルで芸能人、人目を惹く彼に言い寄りたい人は、たくさんいると思うんです」
そういう輩は付き合う前から、うんざりするほど見てきた。魅力的な稜を手に入れたいと誰もが思うから、それはしょうがないことなんだ。
「私はどっちかっていうと、相田さんの方が好みですよ」
「ありがとうございます。そんなふうに言われても、なにもあげられませんけどね」
仲のいいふたりを見ないように、あえて視線を書類に落とした。
「なにかを強請ったつもりはないんですけどね。あしらうのがうますぎます」
「恐縮です」
「私は、相田さんと稜さんを応援したいなって思っているんですよ。はじめちゃん、容赦のない男だから」
(はじめちゃん――!?)
彼女の言葉に引っかかったので、顔を上げて反応すると、耳元に顔を寄せてくる。
「実は私、はじめちゃんの幼なじみで元恋人なんです。ナイショにしてくださいね」
「……元恋人が他の人に言い寄る姿は、あまり見たくはないものですか」
「そりゃまあ。しかもその相手が稜さんなんて、正直いい気がしないです」
自分の心の内を隠さず、ありのままを話してくれる姿に、俺は好感を抱いた。
「……噂なんですが彼は見境なく、誰にでも手を出すとか?」
党の幹部からの情報を、さりげなく口にしてみる。
「あー。そういう噂話まで、相田さんの耳に入っちゃってるんですか。それって、逆なんですけどね」
「逆?」
「はじめちゃん、クールでイケメンでしょ。あちこち行くたびに、事務所にいる若い女のコが迫るんだけど、忙しさを理由に断っているらしくて。恨んだ誰かが、変な噂話を撒き散らしているみたいです」
モテる男というのも、実際は大変なんだな――。
「ちなみに私は、幼なじみを武器に迫って、渋々交際に持ち込んだんですけど、恋人のような感情を抱けないって言われて、あえなく振られちゃいました」
ずっと好きだったのにと寂しげに呟いてから、いきなり俺の背中をばしんと叩いてきた。
「はじめちゃんが男に走るなんて、全然思ってもいなかったんですけど、とにかく負けないでくださいね!」
その言葉に少しだけほほ笑んでから静かに頷くと、彼女は切なげに瞳を揺らして、じっと前を見据える。
(きっとまだ、二階堂のことが好きなんだな――)
彼女のことを応援してやりたいのは山々なれど、自分の不器用さを考えたら、彼の手から稜を守るのが精一杯かもしれない。
心の中でそっと詫びながら、これからはじまる打ち合わせに集中することにした。
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