欲しがり男はこの世のすべてを所望する!

相沢蒼依

文字の大きさ
75 / 83
白熱する選挙戦に、この想いを込めて――

26

しおりを挟む
「大丈夫。一瞬だけど夢を見た。克巳さんに絶対に見せてあげたい、壮大な景色の夢」

「壮大な景色って、まさか……」

俺のセリフだけでそれを悟れちゃうあたり、有能な恋人と言える。

「はっきりと見た。だからこそ克巳さんをそこに連れて行って、直接見せてあげたいと改めて思い知ったよ。だから克巳さん、俺についてきてほしい」

「うわっ!?」

克巳さんの左手を握りしめながら強引に引っ張り、スタッフが用意してくれたお祝いの壇上まで歩いて行く。

「俺ひとりであそこに行かせようとした克巳さんには、お仕置きだよ」

俺が進むと、人混みが自動的に道を作ってくれた。難なく歩けることに感謝しながら小さく頭を下げつつ、急ぎ足で壇上に向かう。

「俺はただの秘書なのに、壇上にあがるわけにはいかないだろ」

「秘書の前に恋人でしょ。つねに俺の隣にいなきゃ困るんだってば。愛してるんだから」

「あまり、目立ちたくないんだが」

そんな文句を言った克巳さんを遠心力を使い、壇上に向かって放り投げた。

「うげっ!」

議員に当選した俺よりも先に壇上に登場した克巳さんを見るなり、報道陣がそろってシャッターを切った。これはこれで、お仕置きになっただろう。

「ぉおお俺はただの秘書です……。葩御はあちらに――」

顔を必死に隠しながら、俺に指を差す克巳さんに向かって、大声で叫んだ。

「克巳さんは目立ちたくないだろうけど、俺の夢は内閣総理大臣だからね。どうしても目立ってしょうがないんだから、そこんとこ諦めてよ!」

腰に手を当てながら堂々と言い放つと、周りからどよめきが起こって、眩しいくらいにカメラのシャッターがたくさん煌めいた。

「陵、議員に当選した途端にその発言。俺の仕事が増えることが、これで確定じゃないか」

げんなりした顔の克巳さんが俺の腕を引っ張り、壇上に登場させる。

改めて目の前を見渡すと、報道陣と一緒に応援してくれた有権者もたくさん混じっていた。しかも事務所に入り切れない人影が、扉の外でうごめくのが見て取れた。

(投票してくれた12万人以上の人たちにも、しっかり感謝しなければだな――)

「陵、挨拶できるか?」

克巳さんの慈愛の眼差しが、俺を射竦める。感動で打ち震えていた心が、一気にしゃんとした。

「できるよ。隣に克巳さんがいれば、どんなことでもやってのける」

本当は、ひとりきりでマイクの前に立って挨拶しなきゃ駄目だろうけど、今このときだけは、この人と一緒にいたい。

克巳さんの左手を握りしめてから、用意されていたマイクの前に立つ。意外な行動に出た俺に、事務所が一瞬だけ水を打ったように静まり返った。だけどすぐに拍手となって、俺たちを祝福してくれた。

鳴り止まない拍手を聞きながら、これからのことを考える。

愛しいこの人と一緒に歩んでいく、棘の道は大変だろう。だけど未来の俺が告げた言葉を実践すれば、きっと願いは叶うハズなんだ。

克巳さんに、あの景色を見せるために――。

おしまい

このあとスペシャルな番外編をお送りいたします!お楽しみくださいね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

処理中です...