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act:忍び寄る影
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***
気落ちしたまま理子さんと一緒に、彼女の自宅に帰り着いた。
「克巳さん、とりあえずお茶を淹れるんで、そこに座って待っていて」
無理やり笑顔を作った理子さんが、俺の背中を押してソファーに座らせてからキッチンでお茶を淹れはじめる。
会話のない静まり返った状態に居心地の悪さを感じ、目の前にあるテーブルの上に置いてあったリモコンを手に取って、キッチンにいる理子さんに声をかける。
「理子さん、テレビつけてもいい?」
「あ、どうぞ。好きに使ってください」
思いきって声をかけた俺に、理子さんはさっきとは違う自然な笑みを浮かべて答えてくれた。
気遣いのできるあたたかい彼女に感謝しつつ、テレビの電源をつけて、ぼんやりと画面を眺める。テレビは今日のニュースが流れていて、社会情勢など仕事の関係で頭に入れておきたいことが話題になっていた。
キャスターたちが熱心に口にする情報を覚えておかなければと思うのに、さっき出逢った彼のことが脳裏を過り、流れていく大切な内容が頭の中に入ってこない。
「本当に情けない彼氏だと、俺でも思う……」
彼氏の俺がいる前で理子さんに手を出された状況だというのに、守るどころか声すら出せずに見てるだけなんて、誰もいないも同然だろう。
手にしたリモコンをテーブルに戻し、額に手を当てて大きなため息をついたその瞬間、聞き覚えのある声が耳に届いた。
『君を知ってから、もう他のモノはいらなくなりました……』
その声に導かれるように画面を見たら、脳裏に焼きついた彼の顔がテレビに映し出されていることにハッとする。
「理子さんっ、彼が出てる!!」
俺の呼び声に理子さんはキッチンから走ってやって来て、同じようにテレビの画面に釘付けになった。
そこには肩まで伸ばしたクセのない髪を艶やかに揺らしながら、印象的な瞳を細めて、どこか切なそうな面持ちをしている、さっき逢ったばかりの彼が、テレビのCMに堂々と出ていた。
『さぁ、僕の渇きを君の力で癒しておくれ!』
掠れた声で言い放つとコインを三枚自動販売機に投入し、細長い指でボタンを押す。すぐに落ちてきたペットボトルを優雅に手にとり、素早くキャップを空けて喉を鳴らしながら飲む姿に、ふたりそろって声を出せずに見入ってしまった。
生で逢ったときも思ったが、動きの一つ一つに妙な色気があって、なぜだか彼から目が離せなくなる。
やがて彼はペットボトルを頬に当てながら、流し目でこちら側を見つめた。
『僕のハートをぎゅっと鷲掴み! 四ツ矢サイダー!!』
爽やかに決めセリフを言って、ふわりと柔らかく微笑む。
「彼……芸能人だったんだね。すごくビックリした」
「芸能人――?」
驚きのあまり、呆然としている理子さんを見つめる。困惑した表情の中にかわいらしさが混じっていて、笑わずにはいられない。
「理子さんの笑顔も好きだけど、隙だらけのその顔も何気に好きかも」
「えっ!? なな何で」
「ふふ、結構かわいい。あの、ちょっと待ってて。今、四ツ矢サイダーのホームページを確認してみるよ」
俺が指摘したことに照れたのか、頬を赤らめて俯く理子さんの傍らで、スマホで企業のホームページを検索する。
気落ちしたまま理子さんと一緒に、彼女の自宅に帰り着いた。
「克巳さん、とりあえずお茶を淹れるんで、そこに座って待っていて」
無理やり笑顔を作った理子さんが、俺の背中を押してソファーに座らせてからキッチンでお茶を淹れはじめる。
会話のない静まり返った状態に居心地の悪さを感じ、目の前にあるテーブルの上に置いてあったリモコンを手に取って、キッチンにいる理子さんに声をかける。
「理子さん、テレビつけてもいい?」
「あ、どうぞ。好きに使ってください」
思いきって声をかけた俺に、理子さんはさっきとは違う自然な笑みを浮かべて答えてくれた。
気遣いのできるあたたかい彼女に感謝しつつ、テレビの電源をつけて、ぼんやりと画面を眺める。テレビは今日のニュースが流れていて、社会情勢など仕事の関係で頭に入れておきたいことが話題になっていた。
キャスターたちが熱心に口にする情報を覚えておかなければと思うのに、さっき出逢った彼のことが脳裏を過り、流れていく大切な内容が頭の中に入ってこない。
「本当に情けない彼氏だと、俺でも思う……」
彼氏の俺がいる前で理子さんに手を出された状況だというのに、守るどころか声すら出せずに見てるだけなんて、誰もいないも同然だろう。
手にしたリモコンをテーブルに戻し、額に手を当てて大きなため息をついたその瞬間、聞き覚えのある声が耳に届いた。
『君を知ってから、もう他のモノはいらなくなりました……』
その声に導かれるように画面を見たら、脳裏に焼きついた彼の顔がテレビに映し出されていることにハッとする。
「理子さんっ、彼が出てる!!」
俺の呼び声に理子さんはキッチンから走ってやって来て、同じようにテレビの画面に釘付けになった。
そこには肩まで伸ばしたクセのない髪を艶やかに揺らしながら、印象的な瞳を細めて、どこか切なそうな面持ちをしている、さっき逢ったばかりの彼が、テレビのCMに堂々と出ていた。
『さぁ、僕の渇きを君の力で癒しておくれ!』
掠れた声で言い放つとコインを三枚自動販売機に投入し、細長い指でボタンを押す。すぐに落ちてきたペットボトルを優雅に手にとり、素早くキャップを空けて喉を鳴らしながら飲む姿に、ふたりそろって声を出せずに見入ってしまった。
生で逢ったときも思ったが、動きの一つ一つに妙な色気があって、なぜだか彼から目が離せなくなる。
やがて彼はペットボトルを頬に当てながら、流し目でこちら側を見つめた。
『僕のハートをぎゅっと鷲掴み! 四ツ矢サイダー!!』
爽やかに決めセリフを言って、ふわりと柔らかく微笑む。
「彼……芸能人だったんだね。すごくビックリした」
「芸能人――?」
驚きのあまり、呆然としている理子さんを見つめる。困惑した表情の中にかわいらしさが混じっていて、笑わずにはいられない。
「理子さんの笑顔も好きだけど、隙だらけのその顔も何気に好きかも」
「えっ!? なな何で」
「ふふ、結構かわいい。あの、ちょっと待ってて。今、四ツ矢サイダーのホームページを確認してみるよ」
俺が指摘したことに照れたのか、頬を赤らめて俯く理子さんの傍らで、スマホで企業のホームページを検索する。
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