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act:痺れ薬・略奪
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「切花って、お水をあげないとすぐにシワシワになって、花びらが散っていくでしょ。その感じが、哀愁漂っていて好きなんですよね。俺も枯れないように、頑張らなきゃなぁって」
「なんか……変わってますね」
俺もどうかしている。この場に立ち尽くしたまま、彼とこんなふうに和やかに話をしているなんて。不思議と彼のペースに乗せられてしまう。
しばらくするとコーヒーを淹れる芳醇な香りが、部屋の中に充満し始めた。
「ふふふ、よく言われます。でもやっぱりきちんとお水をあげて、長生きさせなきゃ可哀想だし。枯れさせるようなことはしてませんよ。あ、克巳さんコーヒーは、ミルクひとつにお砂糖2つでしたよね?」
(――どうしてそんな細かいことまで知り尽くしているんだ、コイツ……)
「気持ち悪いですね。いろいろお調べになったようですが、そんなことまで知っているのは正直怖いです」
「言ったでしょ? 相手を知らなきゃ、戦略が立てられないって。しかもあのリコちゃんが好きになった人が、どんな人なのかすっごく知りたいって思ったら、止まらなくなっちゃいました」
悪びれた様子を見せずにコーヒーカップを両手に持ち、俺の傍に佇みながら、じっと顔を見つめる視線に不快感を示すべく、眉根を寄せてみせた。
「克巳さん、遠慮しないで、ソファに座って待っていたらいいのに」
「いや、その……」
突き刺さるような視線をやり過ごすべく俯くと、手に持っていたコーヒーカップをローテーブルに置いてから、俺の背中を押して無理やりソファに座らされた。
「はい、どーぞ♪」
すかさず隣に座り込んでコーヒーを勧めてくる彼に、顔を引きつらせるしかない。俺の躰に寄り添うように、ピッタリとくっついてきたからなんだが――。
「……戴きます」
ソファの端ギリギリまで躰をさりげなく移動し、彼との距離を取ってローテーブルに置かれたコーヒーを一口だけ飲んだ。
(む、結構苦い――)
「あ、いつもより濃く落としちゃったかも。ごめんなさい、苦いですよね?」
同じタイミングでコーヒーを口にした彼が心底済まなそうな顔をして、カップを下げようと手を差し出す。
「いえ、おかまいなく。これくらいの濃さがあったほうが頭は冴えて、話し合いがスムーズに終わりそうです」
そう言いながら、彼の手を制した。
あまりにも済まなそうな顔をするので、もう一口だけ飲むと「気を遣わせてすみません」と一言謝罪して、しっかりと頭を下げる。なぜだか上目遣いの探るような視線でこっちを見つめる彼に、違和感を覚えた。
「……克巳さん、ちょっと聞いていい?」
「なんですか?」
「リコちゃんのどこを好きなのかなぁって、気になっちゃって。こればっかりはどんな手を使っても、調べることができないものでしょ?」
笑いながら訊ねられたセリフに、頭の中でニッコリと微笑んだ理子さんの姿を思い浮かべる。
「そうですね。自分の考えをしっかり持っているところや、かわいくて優しいところです」
どこかワクワクした表情で訊ねてくる彼の姿に内心ドン引きしながら、重い口を開いた。
「ああ、すっごいわかる! 昔から変わらないんだなぁ、リコちゃんって」
「小さい頃、結婚しようと約束したんですか? 理子さんはまったく覚えていないようでしたけど」
彼女が告げた事実を言ってやると、隣で寂しそうな笑みを口元に湛えた。
「俺ね、ずっと母親とふたり暮らしをしていたんだ。俺が小学校に上がる前に引っ越すことになって、そのときにリコちゃんと指切りしたんだよ。大きくなったら有名人になって迎えに行くから、そのときは結婚してねっていう約束をしっかり交わしたんだけどな」
誓約書でも書いておけば良かったかなぁと呟いて、寂しげな笑みを浮かべてからコーヒーを口にする。
彼女のことを心底好きだっていう想いが、彼が告げた言葉からひしひしと伝わってきたのだが――。
「なんか……変わってますね」
俺もどうかしている。この場に立ち尽くしたまま、彼とこんなふうに和やかに話をしているなんて。不思議と彼のペースに乗せられてしまう。
しばらくするとコーヒーを淹れる芳醇な香りが、部屋の中に充満し始めた。
「ふふふ、よく言われます。でもやっぱりきちんとお水をあげて、長生きさせなきゃ可哀想だし。枯れさせるようなことはしてませんよ。あ、克巳さんコーヒーは、ミルクひとつにお砂糖2つでしたよね?」
(――どうしてそんな細かいことまで知り尽くしているんだ、コイツ……)
「気持ち悪いですね。いろいろお調べになったようですが、そんなことまで知っているのは正直怖いです」
「言ったでしょ? 相手を知らなきゃ、戦略が立てられないって。しかもあのリコちゃんが好きになった人が、どんな人なのかすっごく知りたいって思ったら、止まらなくなっちゃいました」
悪びれた様子を見せずにコーヒーカップを両手に持ち、俺の傍に佇みながら、じっと顔を見つめる視線に不快感を示すべく、眉根を寄せてみせた。
「克巳さん、遠慮しないで、ソファに座って待っていたらいいのに」
「いや、その……」
突き刺さるような視線をやり過ごすべく俯くと、手に持っていたコーヒーカップをローテーブルに置いてから、俺の背中を押して無理やりソファに座らされた。
「はい、どーぞ♪」
すかさず隣に座り込んでコーヒーを勧めてくる彼に、顔を引きつらせるしかない。俺の躰に寄り添うように、ピッタリとくっついてきたからなんだが――。
「……戴きます」
ソファの端ギリギリまで躰をさりげなく移動し、彼との距離を取ってローテーブルに置かれたコーヒーを一口だけ飲んだ。
(む、結構苦い――)
「あ、いつもより濃く落としちゃったかも。ごめんなさい、苦いですよね?」
同じタイミングでコーヒーを口にした彼が心底済まなそうな顔をして、カップを下げようと手を差し出す。
「いえ、おかまいなく。これくらいの濃さがあったほうが頭は冴えて、話し合いがスムーズに終わりそうです」
そう言いながら、彼の手を制した。
あまりにも済まなそうな顔をするので、もう一口だけ飲むと「気を遣わせてすみません」と一言謝罪して、しっかりと頭を下げる。なぜだか上目遣いの探るような視線でこっちを見つめる彼に、違和感を覚えた。
「……克巳さん、ちょっと聞いていい?」
「なんですか?」
「リコちゃんのどこを好きなのかなぁって、気になっちゃって。こればっかりはどんな手を使っても、調べることができないものでしょ?」
笑いながら訊ねられたセリフに、頭の中でニッコリと微笑んだ理子さんの姿を思い浮かべる。
「そうですね。自分の考えをしっかり持っているところや、かわいくて優しいところです」
どこかワクワクした表情で訊ねてくる彼の姿に内心ドン引きしながら、重い口を開いた。
「ああ、すっごいわかる! 昔から変わらないんだなぁ、リコちゃんって」
「小さい頃、結婚しようと約束したんですか? 理子さんはまったく覚えていないようでしたけど」
彼女が告げた事実を言ってやると、隣で寂しそうな笑みを口元に湛えた。
「俺ね、ずっと母親とふたり暮らしをしていたんだ。俺が小学校に上がる前に引っ越すことになって、そのときにリコちゃんと指切りしたんだよ。大きくなったら有名人になって迎えに行くから、そのときは結婚してねっていう約束をしっかり交わしたんだけどな」
誓約書でも書いておけば良かったかなぁと呟いて、寂しげな笑みを浮かべてからコーヒーを口にする。
彼女のことを心底好きだっていう想いが、彼が告げた言葉からひしひしと伝わってきたのだが――。
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