欲しがり男はこの世のすべてを所望する!

相沢蒼依

文字の大きさ
11 / 83
act:痺れ薬・略奪

4

しおりを挟む
「君がどんなに理子さんを想っても、俺たちは別れる気はないし渡すつもりもない!」

 小さい頃の約束を果たすために、芸能人になって目の前に現れた彼。理子さんを想ってる自分の好きという気持ちより、彼の想いが上回っているかもしれない。だけどどうしても負けたくなかったから、気持ちをしっかりと込めて強く告げてやった。

 そのせいか、鼓動がいつもよりドキドキする。

「克巳さん、俺はずっと理子ちゃんだけ想って、今まで頑張ってきたんだ……ってあれ、なんだか顔が赤いけど大丈夫?」

(顔が赤い――?)

 ポケットからハンカチを取り出して、額から投げれ出る汗を慌てて拭った。

 変化は顔だけじゃなく、なんだか躰全体までもが熱くなってきている。こんな急激な変化は、なにかのウイルスにでも感染したのだろうか? ライバルの家で、無様に倒れるワケにはいかない……。

 必死に平静を装っていたが、次第に躰の奥から熱が上がってきた。そのせいで呼吸がどんどん荒くなる。これはヤバいかも――。

 そんな俺を、彼は心配そうな表情を浮かべながらじっと見つめて、目の前から消えた。すぐさま戻ってきて、手にしていたペットボトルを目の前に揺らしながら掲げる。

「これ、新製品で貰った水なんだけど、飲みますか克巳さん?」
「あ? ああ、済まない……」

 躰の熱をどうにかしたくてペットボトルに手を伸ばしたのに、さっと取り上げながら意味深な笑みを浮かべて、じっと見下ろされる。

「この水が欲しければ、くれてやるよ?」

 彼は瞳を細めて艶っぽく微笑みながら、キャップを開けて口に含むと、俺の頬を両手で包み込んで唇を合わせる。拒否しようにも、躰が痺れたように動かない。それこそ、指一本も動かせない状態だった。

 一瞬の出来事に反応できないまま、口の中に甘くて冷たい水が勢いよく流れ込んできた。急病のせいでぼんやりとしていたとはいえ、なにをやってるんだ。

「……んんっ、うっ」

 目を白黒しながら与えられる水を全部飲み干すと、ゆっくりと唇が解放される。

「ああ、もぅ零してるね」

 その言葉に、口を拭おうと右手を上げた瞬間にすぐさまそれが押さえつけられ、彼の舌が濡れた口元から顎のラインを下から上へペロリと舐めとった。その舌使いが、妙にイヤラしい。

「ちょっ、君はいったい、なにをしてるんだっ!?」

 同性に口移しや顔を舐めるなんて、信じられない行為だった。

「んもぅ、そんなに怒らないでよ。具合が悪そうだから、積極的に介抱してあげてるのにさ」
「だからって君は――」
「君じゃなく稜って呼んでよ。克巳さん♪」

 長い黒髪をふわりと揺らして小首を傾げると、今度は俺のネクタイをいそいそと外しはじめた。

「なな、なにしているんだ?」
「顔がそんだけ赤いから、躰が相当熱いんだろうなぁと思って。ささ、次は背広を脱いじゃいましょうか」

 しれっとした態度で外したネクタイを腕にかけつつ、背広もさっさと脱がし、手際よくハンガーにかける。まるで世話焼き女房みたいな手際の良さに、呆気にとられてしまった。

 しかも躰が重だるくて抵抗する気にもなれず、されるがままの俺。話し合いをするつもりが、彼に介抱をされる羽目になんてな……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

ひとりも、ふたりも

鈴川真白
BL
ひとりで落ち着く時間も、ふたりでいる楽しい時間も両方ほしい 1人を謳歌するマイペース × 1人になりたいエセ陽キャ

処理中です...