欲しがり男はこの世のすべてを所望する!

相沢蒼依

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act:翻弄する毒

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***

 疲れ果てた俺は稜を抱きしめて、深い眠りについていた。普段、夢なんて見ても覚えていないのに、このときに限ってはやけにハッキリとしたものを見た。寝室に充満している、花の香りのせいだろうか――。

 何故か俺はいろんな花が咲き乱れている中に躰を横たえながら、抜ける様に綺麗な青空をぼんやりと眺めた。風に身を任せて流れていく雲、その風に運ばれる芳しい花の香りが心地よくて、目を細めながらその景色を楽しんでいると。

『こんなところにいた、捜したんだよ克巳さんっ』

 咲き乱れる花を蹴散らしながら、どこか弾んだ足取りで俺の傍にやって来た稜。しゃがみ込んで俺を見つめる彼の髪型は、かわいそうなくらいにグチャグチャだった。それだけ必死に捜したのだろうか。

 俺は上半身を起こして傍に座った稜の髪を、手櫛で撫でるように梳いてやる。

「捜してくれてありがとう。でも君は芸能人なんだから、身なりはいつも整えておかないと駄目なものじゃないのか?」
『そういう克巳さんも、頭に花びらつけてるよ。何気に可愛いんだから♪』

 形のいい口角を上げて、笑いながら頭についた花びらを右手で優しく払ってくれた。目の前に落ちていく、黄色い花びらが目に留まる。

「そういえば俺のことを捜してたって、なにかあったのだろうか?」

『だって、いなくなったら困るんだよ。克巳さんは俺にとって、大事な駒なんだし』

 満面の笑みで微笑んでいるのに眼差しがやけに怜悧で、なにかを企んでいるように感じてしまった。それについて口を開きかけた瞬間、ずるっとどこかへ落ちていく躰。足元を見たら、そこに大きな穴ができていた。

 慌てて両腕を伸ばしたがどこにも掴まれるところがなく、真っ直ぐに落ちていく俺を、稜は笑いながらただ見下ろすだけで、助ける気配すら感じられない。

(――これから俺は、どうなってしまうのだろうか!?)

 底の見えない落とし穴に、ただ身を任せるしかなかったのである。
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