欲しがり男はこの世のすべてを所望する!

相沢蒼依

文字の大きさ
17 / 83
act:翻弄する毒

4

しおりを挟む
***

 隣で寝ている克巳さんを気にしながら、ゆっくりと躰を起こしてみる。

「……っ、痛っ! ちょっと頑張りすぎちゃったかな」

 時計を見ると午前三時過ぎ――彼を起こさないように寝返りをうったら、腰に激痛が走った。あまりの痛さに顔をしかめてしまうレベルって、どんだけ。

「回数より質というか。いいモノをお持ちだったせいで、自ら腰を使っちゃったし、しょうがないね♪」

 ベッドからゆっくりと腰を上げながら振り返って、克巳さんの寝顔を見てみる。イビキもかかずに、うつぶせのまま死んだように眠っていた。

「こういうあどけない顔してるトコに、惹かれちゃったのかも。リコちゃんってば、趣味がいいからなぁ」

 そっと頭を撫でてあげると気持ち良さそうに身じろぎし、口元に笑みを湛えた克巳さん。もしかしたらリコちゃんも、俺と同じことをしているかもね。こんな表情を見たら、手を出さずにはいられないから。

 物音を立たないように気をつけて、真っ直ぐ浴室に向かいシャワーを浴びる。

 そして数分後、バスローブに身を包み、タオルで髪の毛の水分をしっかりと拭ってから、ハンガーにかけてある克巳さんの上着に手を伸ばした。迷うことなく、ポケットの中身をチェックする。

 スマホの手ごたえを感じて画面を見てみると、ロックはかかっておらず、さくさくと中身を拝見させてもらった。

(わーお、着信履歴が26回もあるじゃん。さっすがリコちゃん! 恋人と俺の話し合いががどうなったのか、すっごく心配しちゃったんだ)

 最終着信履歴が午前一時すぎ――この時間なら確か、激しくヤっちゃってる真っ最中のところだよ。

 先ほどまでの行為をちょっとだけ思い出し、スマホの中身をあちこちチェックしていてふと気がついた。リコちゃんの電話番号とメアドは知ってるけど、克巳さんのは知らなかった。

「俺のスマホに転送しちゃお♪ ついでに克巳さんのに俺の情報を入れてあげちゃうとか、すっげー優しい」

 自画自賛しつつ操作した後に元に戻してから、寝室に足を運ぶ。眠っている克巳さんの鼻を、ぎゅっと摘んだ。ちょっとSな起こし方かな。

「……っ、んんっ?」
「おはよ、克巳さん」

 顔を寄せて、ちゅっとモーニングキスしてみる。ぼんやりしたまま俺を見上げる姿は、本当に無防備に見えた。

「ごめんね、朝早く。これから早朝ロケが入ってて、仕事に行かなきゃならないんだ。悪いけど、今すぐに起きてくれるかな?」
「ああ、そうなんだ。ゴメン、すぐに着替える」
「あとね。これなんだけど――」

 慌てながら起き上がった克巳さんに、ハンガーにかかった上着からスマホを手渡した。自分のスマホの着信履歴を見て、すっと顔色を変える。

(――その愕然とした表情、笑いを堪えるのに必死!)

「リコちゃんってば克巳さんを心配して、何度もコールしたんだね」

 俺の言葉に口元を押さえ、難しい顔して考え込む。

 ふふっ、困ってる、超困ってる。まぁ苛めるのは趣味だけど、昨夜は随分と楽しませてもらったから、助け舟を出してあげようか。

「克巳さんは俺の家で話し合いをしながら、お酒を呑んでいました」
「え――?」
「途中でどっちが強いか呑み比べをしている最中に、ふたりして酔い潰れてしまった。――っていう筋書きを考えたんだけど、どうかな?」

 俺はバスローブを脱ぎ捨てて、さっさと着替えをはじめる。

「……稜?」
「俺とヤっちゃったこと、絶対に知られたくないでしょ。この筋書きを、リコちゃんが納得してくれるかどうかは、実際のところわらないけどね」

 とっとと着替えろと言わんばかりに、床に落ちていた克巳さんの下着をぽいっと投げつけた。浮かべている表情は暗いままなれど、こっちとしてもなんとか頑張ってもらわないといけないんだよ。

「信じてもらえるような演技、ヨロシク頼むよ克巳さん♪」

 俺の立てた筋書き通りに動いてよね。これでまた一歩、彼女に近づくことができるんだからさ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

ひとりも、ふたりも

鈴川真白
BL
ひとりで落ち着く時間も、ふたりでいる楽しい時間も両方ほしい 1人を謳歌するマイペース × 1人になりたいエセ陽キャ

処理中です...