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消えゆく命6
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それから三人がようやく動いたのは、カエデが地面に倒れたときだった。
「カエデ様!」
バランスが崩れ、ドサッという音がたつ。
シキは膝をつき、カエデの顔を覗き込もうとする。
カエデは重く閉ざされた瞼を上げ、シキの顔を見上げた。 紫色の瞳が涙で濡れている。 生まれた時も、カエデが見たのは涙だ。
「……シキ」
「すみませんっ! すみませんっ! 僕のせいで……こんな……」
どうやらシキはこんな状態になってしまったことを自分のせいだと思っているらしい。
カエデは腕に力を入れて、あの時と同じように涙を拭ってやる。 あまり泣かせたくなかった。
「……お前のせいじゃない。数年前からこうなることは分かっていた」
「なら何故、僕に寿命のことを教えてくださらなかったのですか!?」
責めるようにカエデに問い詰める。
その質問に苦笑していると。
「当たりめぇだ。言うわけないだろ」
横から淡々としたタイカの声が入って来た。 タイカの顔を見てみると、緋色の瞳が悲しげに揺れている。
「お前はカエデにとっての大切な存在だ。お前を悲しませるようなことを、言いたくなかっただけだろ」
「……」
「それに、お前が気付かなかったのも無理はねぇ。自分の町の長がもう長くないなんて、霊達はたとえ噂で聞いても、 口には出さない。何しろカエデは先代の長と同じくらい、数百年もここを平和に統治してきたんだ。絶対的な信頼のあるなら、 なおさらな」
タイカは闘いのことばかりが頭の大半を占めている馬鹿な猛将ではないようだ。 この時初めてカエデはタイカを隣町の長として認める気になった。
どうやら自分の知らない内に、若い芽は大きく伸びているらしい。
「何だ……。知っていたのか」
「当たり前だ。これでも隣町の長だ。長だからこそ、分かるのさ」
常にカエデの側にいて、同じ考えを持つシキは近すぎるからこそ、分からなかった。 だがタイカはカエデから遠く離れていて、そして同じ立場だったからこそ、カエデの寿命に早く気付いたのだ。
――皮肉なものだ
そう思っていると、立って腕組をしていたタイカが膝を折った。
「だから隣町の長として、お前の最期を見届けてやる」
「――感謝する」
タイカに敬意をこめて微笑んだ。
この長の幸福を心から願った。
「カエデ様! 手が――っ」
ずっとカエデの手を握り締めていたシキが、カエデの異変に気付いた。
指からキラキラとした光りの粒が上がっていく。 体が透け始めた。
「カエデ様っ……」
シキがカエデが消えてしまわないように、さらに強く握り締める。 だが容赦なく、体からは輪郭が失われていく。感覚も失われつつあった。
――その時
頬にフワリとした何かが当たった。
目を凝らす。
「――雪」
青い空から、白い雪が降っていた。
はらはらと降る雪は、彼女を連想させた。
――ユキ、以前のオレも、こんな顔をしていたのだろうか
目の前で涙をためてこちらを見るシキは、ユキが消える時の自分を見ているようだった。 だとしたら、今自分が感じているこの気持ちをユキも少しは感じてくれたのだろうか。
思い出す。彼女の白い髪や緑色の瞳。 彼女を初めて見た瞬間から、感じていた想い。
――もう手を伸ばしても届くことはないけれど、オレはずっと、君のことが――
「……カエデ様。今まで本当にありがとうございました。大好きです」
「……あぁ」
オレもだ。
全てが真っ白になった。
「カエデ様!」
バランスが崩れ、ドサッという音がたつ。
シキは膝をつき、カエデの顔を覗き込もうとする。
カエデは重く閉ざされた瞼を上げ、シキの顔を見上げた。 紫色の瞳が涙で濡れている。 生まれた時も、カエデが見たのは涙だ。
「……シキ」
「すみませんっ! すみませんっ! 僕のせいで……こんな……」
どうやらシキはこんな状態になってしまったことを自分のせいだと思っているらしい。
カエデは腕に力を入れて、あの時と同じように涙を拭ってやる。 あまり泣かせたくなかった。
「……お前のせいじゃない。数年前からこうなることは分かっていた」
「なら何故、僕に寿命のことを教えてくださらなかったのですか!?」
責めるようにカエデに問い詰める。
その質問に苦笑していると。
「当たりめぇだ。言うわけないだろ」
横から淡々としたタイカの声が入って来た。 タイカの顔を見てみると、緋色の瞳が悲しげに揺れている。
「お前はカエデにとっての大切な存在だ。お前を悲しませるようなことを、言いたくなかっただけだろ」
「……」
「それに、お前が気付かなかったのも無理はねぇ。自分の町の長がもう長くないなんて、霊達はたとえ噂で聞いても、 口には出さない。何しろカエデは先代の長と同じくらい、数百年もここを平和に統治してきたんだ。絶対的な信頼のあるなら、 なおさらな」
タイカは闘いのことばかりが頭の大半を占めている馬鹿な猛将ではないようだ。 この時初めてカエデはタイカを隣町の長として認める気になった。
どうやら自分の知らない内に、若い芽は大きく伸びているらしい。
「何だ……。知っていたのか」
「当たり前だ。これでも隣町の長だ。長だからこそ、分かるのさ」
常にカエデの側にいて、同じ考えを持つシキは近すぎるからこそ、分からなかった。 だがタイカはカエデから遠く離れていて、そして同じ立場だったからこそ、カエデの寿命に早く気付いたのだ。
――皮肉なものだ
そう思っていると、立って腕組をしていたタイカが膝を折った。
「だから隣町の長として、お前の最期を見届けてやる」
「――感謝する」
タイカに敬意をこめて微笑んだ。
この長の幸福を心から願った。
「カエデ様! 手が――っ」
ずっとカエデの手を握り締めていたシキが、カエデの異変に気付いた。
指からキラキラとした光りの粒が上がっていく。 体が透け始めた。
「カエデ様っ……」
シキがカエデが消えてしまわないように、さらに強く握り締める。 だが容赦なく、体からは輪郭が失われていく。感覚も失われつつあった。
――その時
頬にフワリとした何かが当たった。
目を凝らす。
「――雪」
青い空から、白い雪が降っていた。
はらはらと降る雪は、彼女を連想させた。
――ユキ、以前のオレも、こんな顔をしていたのだろうか
目の前で涙をためてこちらを見るシキは、ユキが消える時の自分を見ているようだった。 だとしたら、今自分が感じているこの気持ちをユキも少しは感じてくれたのだろうか。
思い出す。彼女の白い髪や緑色の瞳。 彼女を初めて見た瞬間から、感じていた想い。
――もう手を伸ばしても届くことはないけれど、オレはずっと、君のことが――
「……カエデ様。今まで本当にありがとうございました。大好きです」
「……あぁ」
オレもだ。
全てが真っ白になった。
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