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番外編
神在祭〜花畑の約束〜11
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とうとう七日目を迎え、会議も終盤にさしかかった。
初日から緊張が続いていた警備兵達も、この日ばかりはどこか仕事に身が入っていない。 ここまで日が過ぎれば、神々を襲撃する者はいないと考えたからだ。
だが、その隙が仇となった。
一人が過ごしやすい秋風に欠伸を噛み締めていると、後ろから手刀を叩き込まれ、気絶してしまったのだ。
「おい、どうした!」
異変に気付いた仲間が、側に駆け寄る。 だがその者も、また次の者も、警備をしている者は次々に何者かの手によって床に倒されていく。
「早く神々にお伝えしろ! 侵入者だ!」
命じられた兵は急いで会議が行われている間へと向かう。
扉の前まで辿り着くと、兵は膝を折った。
「申し上げます! 侵入者です! 早くお逃げを……!」
そこまで告げた時、「ぐあっ」という叫び声が上がった。
今まで厳粛に会議を行っていた神々は、一時 騒然とする。
兵の叫び声が上がって間もなく、扉が開かれた。
「会議中、失礼する。玉依姫様は、いらっしゃるだろうか」
そこに姿を現したのは紛れもなく、長門の長、カエデだった。
------------------ ---------------------
「……カエデ殿。そなた、一体 何の真似だ」
カエデの出現に、玉依姫は立ち上がった。
神々の会議中、一地方の長でしかない者が介入するなど、不敬にも甚だしい行為だ。 咎められるのも当然だ。
だが、そんなことカエデは百も承知だった。
「玉依姫様。急で申し訳ないのですが、今から私とデートを致しましょう」
「……何だと?」
硬い口調の中から飛び出た『デート』という浮ついた単語。
玉依姫は見るからに拍子抜けする。
「会議中に許しもなく入室するとは、なんたる無礼!」
「牢に繋げ!」
口を挟む絶好の間隙に、老神達は一斉にカエデの行為を糾弾する。
「控えよ! 咎めるのは後だ」
「……し、しかし姫様」
玉依姫の強い制止に、老神達はたじろぐ。
そして再び玉依姫はカエデに目を向ける。
「カエデ殿。デートならば、会議が終わってからにしてもらおう」
「いえ、今ではなくては駄目なのです」
「何故だ」
「私は、もうすぐ夫になるからです」
思もよらぬ理由を持ち出され、玉依姫は目を瞬く。
「私は明日、正式にあなたの夫となってしまいます。あなたの意に沿う方を探しましたが、結局見つからず、 残された時間はほとんどありません。ならばもう、ほぼオレはあなたの夫でしょう。 夫であれば、あなたをここから連れ出すのも、可能なはずです」
カエデはそう言いつつ、ゆっくりと玉依姫の前まで歩み寄り、膝をつく。
すると、手を差し出した。
「どうか、私とデートをして下さい」
誰もが見惚れる微笑を、カエデは閃かせる。
だが、目だけは挑発的な光を宿していた。
その様子に、周りの神は目を白黒させている。
しばらく見つめていると、不意に玉依姫は声を出して笑った。
「ふふふ。いいだろう。デートとやらに付き合ってやろう。我が夫よ」
「姫様!」
カエデの手をとる玉依姫に声がかかる。
「よいではないか。折角の夫からの誘いだ。もう我がおらずとも、会議は進められるだろう?」
「そういう問題では……」
さらに老神が言い募ろうとするが、無意味だった。
カエデは了解を得ると、玉依姫を横抱きにして抱えたのだ。
「では、私はこれで失礼します」
「お、おい!」
止める術もなく、二人は間を出て行く。
会議の場には、その後しばらく沈黙が続くことになった。
「さて、カエデ殿。夫と名乗ってまで我を連れ出した、本当の理由を訊こうか」
廊下を出てすぐ、玉依姫は口を開く。
「どうしてです?」
「あれほど我の夫になるのに躊躇していたそなたが、いきなり観念して夫を名乗るとは、到底思えん。 何を考えている」
やはり、玉依姫には全てお見通しらしい。 誤魔化すことはできないと思い、正直に告白することにした。
「建御雷神に会いに行きます」
「……何、だと」
玉依姫の目がこれ以上ないくらい、大きく見開かれる。
「何故、そなたが場所を知っている」
「天照大神に、直接 伺いました。本当に、一か八かの賭けでしたが」
一昨日の夜に、カエデは猿田彦にあることを頼んでいた。
『建御雷神のことで、天照大神にお目通り願いたい』
そういった内容の文書をしたため、天照大神に送ってもらったのだ。本来ならば、文書を送ることさえも恐れ多い。 もし天照大神が短気であれば、不敬罪で囚われる可能性もあった。だからこそ、賭けだったのだ。
今カエデが無事でいられるのも、ひとえに天照大神の寛容さがあってこそだった。
「……そなたのデートとは、そういことか。だが今更、建御雷神に会わせてどうするつもりだ」
「さぁ? どうもしませんよ。私達はただ、デートをしに行くだけですから」
あくまでデートにこだわるカエデに、玉依姫は くすっと笑う。
警備兵が倒れている廊下をゆっくり歩いていると、カエデは向こう側にさらなる増援部隊を目に捉えた。
「さて、カエデ殿。我を連れ出せたのはいいとして、この社から警備網をかいくぐって、脱出できるか? 並の警備兵ではないぞ」
懸念する玉依姫に、カエデは口角を上げた。
「私を、誰だとお思いに?」
初日から緊張が続いていた警備兵達も、この日ばかりはどこか仕事に身が入っていない。 ここまで日が過ぎれば、神々を襲撃する者はいないと考えたからだ。
だが、その隙が仇となった。
一人が過ごしやすい秋風に欠伸を噛み締めていると、後ろから手刀を叩き込まれ、気絶してしまったのだ。
「おい、どうした!」
異変に気付いた仲間が、側に駆け寄る。 だがその者も、また次の者も、警備をしている者は次々に何者かの手によって床に倒されていく。
「早く神々にお伝えしろ! 侵入者だ!」
命じられた兵は急いで会議が行われている間へと向かう。
扉の前まで辿り着くと、兵は膝を折った。
「申し上げます! 侵入者です! 早くお逃げを……!」
そこまで告げた時、「ぐあっ」という叫び声が上がった。
今まで厳粛に会議を行っていた神々は、一時 騒然とする。
兵の叫び声が上がって間もなく、扉が開かれた。
「会議中、失礼する。玉依姫様は、いらっしゃるだろうか」
そこに姿を現したのは紛れもなく、長門の長、カエデだった。
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「……カエデ殿。そなた、一体 何の真似だ」
カエデの出現に、玉依姫は立ち上がった。
神々の会議中、一地方の長でしかない者が介入するなど、不敬にも甚だしい行為だ。 咎められるのも当然だ。
だが、そんなことカエデは百も承知だった。
「玉依姫様。急で申し訳ないのですが、今から私とデートを致しましょう」
「……何だと?」
硬い口調の中から飛び出た『デート』という浮ついた単語。
玉依姫は見るからに拍子抜けする。
「会議中に許しもなく入室するとは、なんたる無礼!」
「牢に繋げ!」
口を挟む絶好の間隙に、老神達は一斉にカエデの行為を糾弾する。
「控えよ! 咎めるのは後だ」
「……し、しかし姫様」
玉依姫の強い制止に、老神達はたじろぐ。
そして再び玉依姫はカエデに目を向ける。
「カエデ殿。デートならば、会議が終わってからにしてもらおう」
「いえ、今ではなくては駄目なのです」
「何故だ」
「私は、もうすぐ夫になるからです」
思もよらぬ理由を持ち出され、玉依姫は目を瞬く。
「私は明日、正式にあなたの夫となってしまいます。あなたの意に沿う方を探しましたが、結局見つからず、 残された時間はほとんどありません。ならばもう、ほぼオレはあなたの夫でしょう。 夫であれば、あなたをここから連れ出すのも、可能なはずです」
カエデはそう言いつつ、ゆっくりと玉依姫の前まで歩み寄り、膝をつく。
すると、手を差し出した。
「どうか、私とデートをして下さい」
誰もが見惚れる微笑を、カエデは閃かせる。
だが、目だけは挑発的な光を宿していた。
その様子に、周りの神は目を白黒させている。
しばらく見つめていると、不意に玉依姫は声を出して笑った。
「ふふふ。いいだろう。デートとやらに付き合ってやろう。我が夫よ」
「姫様!」
カエデの手をとる玉依姫に声がかかる。
「よいではないか。折角の夫からの誘いだ。もう我がおらずとも、会議は進められるだろう?」
「そういう問題では……」
さらに老神が言い募ろうとするが、無意味だった。
カエデは了解を得ると、玉依姫を横抱きにして抱えたのだ。
「では、私はこれで失礼します」
「お、おい!」
止める術もなく、二人は間を出て行く。
会議の場には、その後しばらく沈黙が続くことになった。
「さて、カエデ殿。夫と名乗ってまで我を連れ出した、本当の理由を訊こうか」
廊下を出てすぐ、玉依姫は口を開く。
「どうしてです?」
「あれほど我の夫になるのに躊躇していたそなたが、いきなり観念して夫を名乗るとは、到底思えん。 何を考えている」
やはり、玉依姫には全てお見通しらしい。 誤魔化すことはできないと思い、正直に告白することにした。
「建御雷神に会いに行きます」
「……何、だと」
玉依姫の目がこれ以上ないくらい、大きく見開かれる。
「何故、そなたが場所を知っている」
「天照大神に、直接 伺いました。本当に、一か八かの賭けでしたが」
一昨日の夜に、カエデは猿田彦にあることを頼んでいた。
『建御雷神のことで、天照大神にお目通り願いたい』
そういった内容の文書をしたため、天照大神に送ってもらったのだ。本来ならば、文書を送ることさえも恐れ多い。 もし天照大神が短気であれば、不敬罪で囚われる可能性もあった。だからこそ、賭けだったのだ。
今カエデが無事でいられるのも、ひとえに天照大神の寛容さがあってこそだった。
「……そなたのデートとは、そういことか。だが今更、建御雷神に会わせてどうするつもりだ」
「さぁ? どうもしませんよ。私達はただ、デートをしに行くだけですから」
あくまでデートにこだわるカエデに、玉依姫は くすっと笑う。
警備兵が倒れている廊下をゆっくり歩いていると、カエデは向こう側にさらなる増援部隊を目に捉えた。
「さて、カエデ殿。我を連れ出せたのはいいとして、この社から警備網をかいくぐって、脱出できるか? 並の警備兵ではないぞ」
懸念する玉依姫に、カエデは口角を上げた。
「私を、誰だとお思いに?」
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