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本編
第2話:事故と目覚め
しおりを挟む俺はどこにでも居るただのゲームが好きな陰キャの男だった。
いつものように学校の授業が終わり、特に部活をすることもなく真っすぐ家に帰っていく。家に帰れば、さまざまなゲームソフトが俺を待っているはずだ。俺はいろんなジャンルのゲームを遊んでいる。その時の気分でマイブームのジャンルは変わり、今よくプレイしているのはノベルゲームだった。
基本は男性向けのみ遊んでいるが、たまに姉が持っている女性向けのノベルゲームも遊ぶ。萌えるかどうかはさておき、シナリオが作りこまれているゲームは女性向けでも楽しい。
先日も姉から女性向けのノベルゲームを借りたばかりだ。とんでもないヤンデレキャラが居ると聞いて、少し興味が沸いたのだ。男性向けのヤンデレキャラは結構好きだ。性別が違うと毛色も違うだろうが、食わず嫌いは損だ。
まだ完全クリアはしていないが、あの『レギオン』というキャラクターはなかなか強烈だったなぁとぼんやり考えていた。
次の話の展開はどうなっていくのだろう。まだ明かされていない設定はどうなのかなといろいろ予想して、答え合わせするかのようにゲームを遊ぶ。これがなかなか楽しい。
そんな事を考えていたのがいけなかったのだろうか。
誰かの悲鳴とクラクションの音が響いて、驚いた俺は横を向いた。猛スピードで突進してくる車が、目の前にあった。
そのあとの事はよく覚えていない。
もう避けられるような距離ではなかった。おそらく俺は車に跳ねられ、頭を強く打ち付け、気を失った。おそらく、死んでしまったのだと思う。痛みも感じなかったのは不幸中の幸いかもしれない。
ああでも、くやしいな。
あのゲームの続き遊びたかったな、答え合わせしたかったな。家族の事とそんな事を考えながら、俺は深い眠りについた。
―――――――――
そして、次に俺が目を覚ましたところはベッドの上だった。見上げた先には立派な天蓋ベッドの天井が見える。俺の身体を支えるベッドや掛布団もふわふわで、病院ではないことは分かった。
なんだこの貴族が使うようなでかいベッドは……と思いながら身体を起こす。後頭部がズキリと痛んだが、車に跳ねられてこの程度の痛みですむはずがない。何が一体どうなっているんだと混乱していると、俺に気付いた1人の女の人が慌てて俺に近づいてきた。
「ユリス様、大丈夫ですか?」
「は?」
その女の人はロングスカートのメイド服を着ていた。
状況がますます訳が分からなくて低い声を出すと、メイドは怯えたような顔をして「すみません……」と言って後ろにさがる。
「あ、いや、驚いただけです。こちらこそすみません」
不本意に怖がらせてしまったと焦り、慌てて謝罪をすると、メイドは安心するどころかより一層困惑した顔で俺を見ている。いや、そんなに困惑する必要はなくないか? とりあえずここはどこだろうと辺りを見渡す。
なんだか豪華な洋館の内装だった。部屋は広く、窓からは昼下がりの美しい光が差し込んでいる。美しいアンティーク調の家具が置かれ、ベッドの布団にも見事な模様が織り込まれている。そしてベッドのサイドテーブルに置かれたスタンドミラーを見た瞬間、俺は言葉を失った。
慌てて自分の頬や頭を触る。
鏡に映った人物も、俺と全く同じ動きをした。だが、学校帰りの俺とは全く違う人物が鏡には映っていた。
ユリス・アデレーゼだ!
先日姉から借りたノベルゲームの悪役令息……攻略対象のレギオン・アデレーゼの弟の姿がそこには映っていた。正確にはゲームで見た時より少し若いように見えるが、間違いない。
俺の姿はユリス・アデレーゼになってしまっていた。
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