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本編
第5話:気が休まらないお茶会
しおりを挟むそして今日も地獄のお茶会が始まった。当然2人きりである。
場所はレギオンの寝室だ。
豪華絢爛の内装は美しく手入れされており、埃一つ付いていない美しい家具がいくつも置かれている。見事な装飾が施された家具類はすごい値段がしそうだ。キングサイズの天蓋ベッドが置いてあっても狭く感じないほど広い。部屋の隅には小さなシャワールームだってある。
部屋の窓からは綺麗に整備された美しい中庭が見える。その窓辺にあるテーブルに着く頃には、ちょうど茶葉が蒸しあがっていた。
紅茶を用意した執事と目が合うと、さっと気まずそうに視線をそらされた。少しずついろんな人から信頼を得られ始めているが、全員と仲良くなるのは先は長そうだ。
執事もビスケットを温め直したメイドも、当然のように部屋から出て行った。以前は部屋の中に待機していたのに、今ではレギオンと2人きりになるのが当たり前になっていた。
「さあユリス、こちらへ」
大きめの横長の椅子を引き、俺に座るように促す。
俺は出来るだけ端にちょこんと座った。そして当然のようにレギオンが同じ椅子の隣に座ってきた。以前は2脚の椅子を用意して向かい合って座っていたのに、今この部屋には俺たちが座っている1脚の椅子しかない。なるべくくっつかないように端に寄っても、
「そんなに端では座りづらいだろう、こちらに来なさい」
そう言ってレギオンは俺の腰に手を回してグイッと引き寄せる。ちなみに最近のレギオンの手の定位置は俺の腰である。
ヤンキーに絡まれた陰キャの気分だ……いや、元々陰キャだったが、転生後もこんな気分を味わうなんて思わなかった。
手から離れたくて紅茶をティーカップに注ごうと身を乗り出すも、それも制止される。そしてレギオンが俺の分も紅茶を注ぎ、俺の好みに合う量の砂糖を入れる。この砂糖の量すら完璧に把握されている。
口にティーカップを近づけるとほのかにオレンジの爽やかで甘い香りが漂う。一口飲むと口に上品な甘みが広がる。でも気分は晴れない。
そしてティーカップから口を離すと同時に、レギオンが手に持ったビスケットをスッと俺の口元に運ぶ。チラリとレギオンを見ると、レギオンはニッコリと笑った。言葉には出していないがそのまま食べろと言っているようだ。
手で受け取ろうとすると「ユリス」と穏やかだが強めの口調で名前を呼ばれる。逃げ場もないので手渡しのビスケットにそのまま齧り付く。ビスケットは半分にパキッと割れ、首を少し上にあげて口の中に一気に割れたビスケットを入れる。
サクッと香ばしく、ホロホロと口の中でとろけるように崩れるビスケットは絶品だった。さすが人気商品だ。
残りの半分はそのままレギオンの口に入れられた。最初は引いたが、今更こんな事では動揺しなくなった自分が怖い。
「ところでユリス、先ほどの講習のノート少し見させてもらったけど文字が綺麗になっていたね。ちゃんと練習したんだね、偉いよ」
「兄様……そんなに子供扱いしないで下さい。恥ずかしいです……」
「ああ、すまない。些細な事でも可愛い弟の成長が嬉しくてたまらないんだ。私にはユリスを見守る義務がある、どうか分かっておくれ」
そう言ってまた俺の頭を撫でる。もう、ここまでくれば弟だからとか関係ないだろうが。いくら何でも過保護で……俺を下に見すぎた。どれだけ頑張って真面目に勉強してもこの態度なのだ。
レギオンは元々ノベルゲームの主人公に執着し、バッドエンドだと深すぎた病みが主人公や他者を傷つけ始める。そうならないよう何とかしなければと思っていた。だからこそ拒絶せずに受け入れていたのに、ただ受け入れるだけでは一向に改善されそうにない。
何かしら新しい行動を起こす必要がありそうだ。
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